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第19話 芽吹く夢


颯斗side


「莉乃ちゃん!莉乃ちゃんが学校に行ってる間、私がお店をやるわ!!」

「え?」

「「えええええええええええっ!?」」


突拍子もないことを言い出した母さんに俺は思わず言う。


「何言ってんの母さん!?」

「だって、おじさんとおばさんが行方不明になったって聞いて……」


と、母は少し気まずそうに言う。


「それは……」


莉乃もそれには言葉を返せず、少し濁った反応になってしまう。


「父さんめ……」


余計なことを言ってくれる。


「っていうか、そもそも母さんはコーヒーとか淹れられるのか?この店の味が好きで来てる人だっているんだぞ?」

「わかってるわ!」


何故か自信がありそうな母さんを見て、俺は頭を抱えた。

俺は莉乃に声を掛け、母さんから少し離れた場所で母さんに背を向けて会話をする。


「どうする?」

「どうする、と言われましても……こちらとしてはあのお店が生命線ですから断る理由がないんですよね」

「だよなぁ〜……」


俺は軽く肩を落とす。

わかっている。

莉乃のことだし、貯金はあるだろう。

だが、それが無くなれば生活が困難になる。

となると、お店を開けるしかないが、時間的にも放課後になってしまう。

それに俺だって生徒会の仕事があるし、手伝えると限らない。

人手は多いに越したことはないが……


「大丈夫か?」


俺は母さんをチラッと見てそう言う。


「……多分」


莉乃は不安そうにそう言った。


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「ん〜……」


結局、莉乃は母さんを受け入れた。

そして、現在、目の前には店員のエプロンに身を包んだ母さんがいる。

母さんはとにかく若く見える。

だから、美人店員と言って差し支えない。

だが……


「ん〜……」

「先ほどから唸っているようですがどうかしたんですか?」

「いや、なんかちょっと似合うなって思ったのが癪なだけだ」

「颯斗!?どういう意味かしら!?」


母さんが血眼になって俺に問いただしてくる。

めんどくさいこの親。


「落ち着いてください。京子さん」


莉乃によってなんとか引き剥がされた。


「では、うちのコーヒーの淹れ方を教えますね」

「新人研修ね!」


なんでこの人はこんなに楽しそうなんだろうか。


「では、まず───」


それから莉乃による研修は2時間ほど続いた。


「どうかしら?」


研修終わりの母さんが淹れたコーヒーと作った甘味を俺と莉乃が試飲する。


「ま、甘味はパーフェクトだとして、コーヒーは及第点ってとこじゃないか?」

「そうですね。甘味は遜色ないですし、コーヒーも初日にしては素晴らしい出来だと思います」


莉乃も表情こそあまり変わっていないとはいえ、少し満足そうしていると俺は感じた。


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莉乃side


颯斗君と京子さんが帰った後、家は静まり返っていた。


「静かですね……」


ほんの数日前までは3人で仲良く食事をしたり、話をしたりしていたというのに。


「日常はこんなにも儚く散るんですね……」


私はいつも3人で囲んでいた食卓に触れて呟く。

夢のような時間はそう長くは続かないものである。


「……寂しいよ」


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第三者side


「父さん、なんで母さんに満さんとゲイルのことを言ったんだよ」

「ゲイルのことは伏せたぞ」

「そういう話をしてるんじゃないんだよ」

「……わかっている。俺だって話したわけじゃない」


誠は見ていたスマホを置いてそう言った。


「え?」

「聞かれたんだよ。鏑木達との電話をな」

「なるほど……」

「あまり良くはないが、どっちにしろ莉乃ちゃんの生活のために店を開ける必要があると思ってな。京子に相談したんだよ」

「そういうことが……」


と、誠のスマホが震える。


「ん?西宮?」


誠は電話に出る。


「俺だ」

『氷室。とんでもないことがわかったぞ』

「とんでもないこと?」

『実はここ最近にもたくさんの捜索願が出された人がいる』

「それがどうした?」

『その中のある共通点を持つ者が綺麗にその捜索願を抹消されている』

「なんだと!?共通点ってなんだ!?」

『全員の現住所が庵原市の人間だ』

「それは事実なんだな?」

『ああ。ボクが調べたんだ。間違いはない』

「ありがとう」


そう言って誠は電話を切った。


「誰からだったんだ?」

「鏑木の同期の西宮だよ。ま、後輩の同期って言っても、年齢は俺と一緒なんだがな」

「そうなのか!?」

「ああ。アイツ、見た目は幼く見えるが、結構いい歳だ」

「へぇ〜……じゃなくて!内容は?」

「別にお前に教える必要はないだろ?第一、俺は刑事に復帰してるんだ。別のヤマかもしれないぞ?」

「だったら、俺から離れて電話するだろ」

「それはそうだが……」


颯斗に看破され、誠は言い淀む。


「どういう内容だったんだ?」

「……ここ最近の捜索願のうち、庵原市を現住所にしている人だけ捜索願が揉み消されてるんだ」

「はぁ!?なんだよそれ!」

「俺も耳を疑った。だが、事実らしい」


颯斗は一瞬考えるような素振りをして。


「まさか、ゲイル達が何かしてるのか……?」

「そうだとしたら、警察内部に協力者が居る可能性が高い」

「マジかよ……目星は付いてるの?」

「……ああ」


誠は少し間を空けてそう言った。


「誰なんだよ」

「……捜索願を揉み消しても誰も文句を言わない。むしろ、言えない立場の人間」

「まさか……!!」

「警視総監だ」

「嘘だろ……!?警視総監って警視庁のトップじゃないか!」

「ああ。……となると、喫茶キトゥン人質立てこもり事件の犯人が要求したあの事件……」

「森田貞夫殺人事件?」

「どの資料も一部が消されていた」

「じゃあ……」

「ゲイル達が関わっている可能性が高い」


颯斗は開いた口が塞がらなかった。


「一応警戒していきたいから聞いておくけど、警視総監の名前は?」

「名前は───」


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数日後、莉乃は出勤してきた京子に店を任せて、初詣へと向かった。


「(大丈夫でしょうか……)」


一抹の不安を抱えながら。

そんな時だった。


「「「きゃあああああっ!!」」」


悲鳴が聞こえてきたのは。


「まさか!」


莉乃が現場に向かえば。


「ゲタゲタゲタゲタ!!」

「下駄ですか……」


下駄オミナスが暴れていた。


「止めないと!」


『リアクター!』

『ハンマーヘッドシャーク!』


「オムニバスチェンジ!」


『リアクターシャーク!』


「はああああっ!!」


莉乃は炎を纏ったハンマーで下駄オミナスを殴り飛ばす。


「ゲタアアアッ!!」


下駄オミナスは木に激突する。


「やはり、木には火ですね」


そんなことを言っていれば、下駄オミナスは態勢を立て直す。


「ゲタゲタゲタゲタ!!」


下駄オミナスは眩い光線を放った。

莉乃は視界を奪われ、回避ができなかった。

光が収まったころ、下駄オミナスの姿はなかった。


「逃げられましたか……」


そこで莉乃は違和感を感じた。


「ん?」


違和感を確かめるべく、自身の足元を見れば。


「……えっ?」


先ほどまで変身した衣装だったはずの足元が、裸足に下駄という格好になってしまっていた。


「な、なんですかこれ……!?」


1人驚き、下駄を脱ごうとするが脱げない。


「脱げません……下駄オミナスのせいですね……」


莉乃はガクッと肩を落とし、変身解除した。

変身を解除しても、足元は変わらず裸足に下駄。


「寒いですね……」


季節は冬。

寒いのは当然である。


「とりあえず、初詣に行きましょうか」


莉乃は慣れない下駄に少し苦戦しつつも、初詣へと向かった。


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「す、すいません……遅れました」


集合場所には既に颯斗達がいた。


「どうした…って、下駄ぁ!?」

「しかも裸足!?」

「寒くないの!?」

「え?寒いに決まってるじゃないですか」


莉乃はさも当然のように言った。


「じゃあ、履き変えろよ!?」

「それがこれ、下駄オミナスの特殊な光線のせいでなってしまってですね……」

「あちゃ〜……脱げないわけだ?」

「はい」

「今日は辞めるか?」

「いえ、問題ありません。もう慣れました。このままでも戦えます」

「そ、そうか……」


莉乃がそういうので颯斗達は初詣をすることになった。


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その頃、喫茶キトゥンでは。


「いらっしゃいませ〜!」


京子がしっかりと店長していた。


「あれ?満さんと薫さんは?」

「それが……」


来る常連さんは似顔絵と共に莉乃が教えているため、事情を話す。

行方不明ということを話しても良いと莉乃からも許可を得ている。


「なるほど……そりゃ莉乃ちゃんも辛いだろね……」


富澤は少し暗い顔でそう言った。

すると、再びドアが開く。


「いらっしゃいま…ってあなた!?」

「よぉ、ちゃんとやってるか?」


言いながら誠は席に腰掛ける。


「じゃあ、ブレンドコーヒーを」

「ちょっとあなた!」

「いいだろ?休憩時間だ」

「全く……」


京子は仕方ないと言わんばかりにコーヒーを淹れる。


「どうぞ?」


誠はコーヒーを一口飲む。


「……うん。美味い」

「そうかしら!」

「ああ。だが、まだまだだな。莉乃ちゃんのコーヒーはもっと美味かったぞ?」

「努力しますぅ〜!」


京子は頰を膨らませてそう言った。


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「甘酒、美味しいですね」


莉乃は紙コップを大事そうに抱えながら言った。


「キトゥンでも出していいかもしれません」


そう言って柔らかく微笑む。


「莉乃っち笑った!」

「え?」

「初笑いね」


瑞稀の言葉に美香も便乗する。


「よかったよ。七瀬さんが元気になって」

「ご心配をおかけしました」

「いいのよ!友達を心配するのは普通なんだから!」


美香の言葉に全員が頷く。


「……私、夢が出来ました」

「夢?」

「はい。みんなが笑って暮らせるような世界にするという夢です」

「いい夢だな」

「ありがとうございます」

「じゃあ、脅かされてる世界を“救済”しないとね!」


莉乃は頷いた。


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颯斗side


俺達はおみくじを引いていた。


「俺は中吉だな」

「やったね!僕は大吉〜!」

「吉か〜!」

「瑞稀はまだいいじゃない。私なんて末吉よ?」


口々に言い合っていると、莉乃が固まっていた。


「莉乃?」

「───私、大凶です………」

「「「え゛っ゛」」」


俺たちは莉乃のおみくじを覗き込む。


「た、確かに……」

「マジかよ……」

「初めて見た……」

「でも、ここはいいんじゃない?」


瑞稀が指したのは“待ち人”だった。


「“待ち人”は……『いずれ現る』だって!」

「いずれ現る…待ち人……」


莉乃は少し悲しそうな目をして。


「待ち人は居ませんよ。お父さんもお母さんもおばさんも、みんな死んだんですから」

「こ、恋人っていう可能性があるじゃん!」

「私は今はそういう気持ちにはなれません」


そう、だよな……

俺はおみくじを軽く握った。

そこの“待ち人”のところには『近くにいる』と書かれていた。


「あれ?莉乃ちゃんじゃん!」


その声に俺は体をビクッとさせた。


「みのりちゃんじゃないですか。どうしたんですか?こんなところで」

「初詣に決まってるじゃ〜ん!」


莉乃と石川が会話しているのをじっと見ながら、いつぞやの父さんとの会話を思い出す。


『一応警戒していきたいから聞いておくけど、警視総監の名前は?』

『名前は───石川 律人だ』

『石川……?』

『ああ。警視総監には娘さんがいらっしゃる。ちょうどお前と同級生の……』

『石川 みのり』

『そうだ。だから、警戒しておいた方がいいだろう』


父さんの話によれば、石川家は離婚していない。

そのため、警視庁が近所に関係上、家がこの近くにないとは考えにくい。

それにわざわざ転入してくる意味がわからない。

やはり、狙いはおそらく莉乃だろう。

もしかして、コイツがアナザーヴァルキリーの正体なんじゃないのか……!?

俺の石川への疑念は大きくなっていくのだった。


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第三者side


初詣を終え、キトゥンに行こうということになった莉乃達はキトゥンへの道を歩いていた。


「莉乃ちゃん!」

「京子さん?」


と、ちょうど買い物帰りの京子に声を掛けられた。


「あ、そう言えば時間的にはちょうどお昼休憩でしたね」


莉乃は思い出したようにいう。


「だから、色々買い足してきたの!」

「領収書取りました?それは経費で落としますので」

「もちろん!」


京子は領収書を見せてくる。


「颯斗の母さんが七瀬さんの店で働いてるってホントだったんだ……」

「なんか、莉乃ちゃんがすっごく上司してる……」


公人達はそんな感想を言い合っていた。


「あれ?莉乃ちゃんなんで下駄なの?しかも裸足だし!寒くないの!?」

「これは少し事情がありまして……」


莉乃がどう説明しようか悩んでいると。


「ゲタゲタゲタゲタ!!」


莉乃にとって聞き馴染みのある声が聞こえてきた。


「原因の方から来てくれたみたいだぜ?」

「そうですね」


颯斗と莉乃は前に出る。


「ゲタゲタゲタゲタ!!」

「か、怪物!?」


京子は持っていた買い物袋を落とす。


「大丈夫です。京子さんは私が守ります!」

「そこは“私たち”だろ?」

「そうでしたね」

「遠慮はなしだぜ!」

「ええ!」


2人はカードをスキャンした。


『リアクター!』

『ナイト!』


『UFO!』

『マジシャン!』


「「オムニバスチェンジ!」」


チェンジャーの外枠を回転させる。


『灼熱の騎士!リアクターナイト!』

『未確認の手品師!UFOマジシャン!』


「変身した……!?」

「公人、母さんを頼む」

「ああ!」


公人達はその場から離れた。


「さぁ、私を元に戻してもらいますよ」


言って莉乃が斬りかかる。


「ふっ!!」


それを受け止めた隙に颯斗が蹴りを叩き込む。


「木製には火ですね」


そう言ってブレードにカードをスキャンし、柄頭を引く。


『フェニックス!』

『フェニックス!ブースター!』


「はあああっ!」


炎を纏った鳥が下駄オミナスに突進する。


「ゲタァ!!」


炎が下駄に着火し、オミナスは火だるまになる。


「決めるぞ!」

「はい!」


2人は再びチェンジャーの外枠を回転させた。


『リアクターナイト!』

『UFOマジシャン!』

『『フィニッシュ!』』


「「はああああっ!!」」

「ゲタアアアアアアアアアッ!!」


ダブルキックにより、下駄オミナスは爆散した。

オミナスが撃破され、莉乃の足元も普段の衣装に戻った。


「やりましたね」

「ああ!」


莉乃と颯斗はクロスタッチした。


「アナザーヴァルキリー、参上!」


遅れてアナザーヴァルキリーが現れた。


「もう終わりましたよ?」

「え?」

「遅い」

「え?」


アナザーヴァルキリーは落胆した。


「それはそうと……お前、石川か?」


颯斗はアナザーヴァルキリーに向けてそう言った。


「え?」

「父さんから聞いた。警察内部にゲイルの協力者がいるかもしれないってな」

「そうなんですか?」

「ああ。たくさんの事実が揉み消されている」

「そんな……」

「それで、最も怪しいのは警視庁のトップ、警視総監。その名前は、石川 律人」

「みのりちゃんと同じ苗字……ですがそれだけでは」

「ああ。だが、父さんに知っていた。警視総監には娘がいて、その名前は石川 みのり」

「じゃあ……」

「少なくとも石川とゲイルは繋がっている。だとすれば、石川が転入したと同時くらいに現れたお前も怪しいってわけだ」

「なんだ〜……もうちょっとカッコつけたかったのに」


その発言に2人は戦闘できるように構える。


「いやいや!そんなことをする気ないから!」


そう言ってアナザーヴァルキリーは変身を解除する。

それに莉乃達も警戒を解く。


「それで?お前は敵なのか?味方なのか?」

「味方だよ。少なくとも私は」

「なら、お前の親父は敵ってことでいいんだよな?」

「多分そうだと思う」


すると拍手の音がする。


「素晴らしい。流石は優秀な一課の刑事だ。それに息子まで優秀だ。まさか、こんなに早く私に辿り着くとは」

「誰だ!!」


颯斗が声を上げると、空間が揺らぎ、リットが現れる。


「リット……!」

「まさかお前が!」

「ご名答」


そう言ってリットは人間体になる。


「私が石川 律人だ」


スーツ姿でそう言った。


「パパ……!」

「みのり、お前は私を裏切るのか?」

「私がアナザーヴァルキリーになったのはゲイルに協力するためじゃない!」

「そうか……残念だ。なら、その力は没収だ」


律人はリットに姿を変え、みのりに迫る。


「ふっ!!」


莉乃はオムニバスブレードでリットの攻撃を防いだ。


「どういうつもりだ?」

「申し訳ありませんが、私のお友達に手を出させるわけにはいきません」

「お友達?面白いことを言うなぁ、君は。ソイツは私の愛する娘だ。友達など必要ない」


言ってリットは莉乃を吹き飛ばす。


「ぐっ……!!」


莉乃は吹き飛ばされるも、ブレードを地面に突き立てて、勢いを殺す。


「これならどうですか!」


『ハンマーヘッドシャーク!』

『ハンマーヘッドシャーク!ブースター!』


「はああああっ!!」


ハンマー状のエネルギーをブレードに纏わせ、リットに殴りかかる。


「無駄だ」


リットはそれを易々と受け止める。

莉乃はその一瞬にリットの懐に潜り込んでいた。


「なに!?」


『リアクターフェニックス!フィニッシュ!』


「はああああああっ!!」


両手首をくっつけ、そのまま手のひらを押し当てる。


「がはあっ!!」


リットは吹き飛ばされる。


「はぁはぁ……」


莉乃はその場に膝を着き、強制変身解除する。


「莉乃!」


颯斗がすぐさま莉乃の元に駆け寄る。


「はぁはぁ……この2枚は相性が良すぎますね……!」

「なるほど……流石はエイドヴァルキリーだ」


リットは平然とした様子で自身についた砂埃を払いながら立ち上がる。


「おいおいマジかよ……」


颯斗は驚きつつも、莉乃を庇うように前に出る。


「まぁ、今回はこの辺にしておこう。またな」


そう言ってリットは風景と同化して姿を消した。


「パパ……」


颯斗はみのりに対峙して。


「もう一度問う。お前は敵か?」

「私は味方だよ。何があっても」

「……わかった。お前を信頼しよう」


颯斗は変身を解除した。


「颯斗!莉乃ちゃん!」


そこに京子が走ってきた。


「母さん……」

「大丈夫!?どこも怪我してない?」


颯斗の体をペタペタ触りながら言う。


「大丈夫だって!」


颯斗はそう言って京子の手を退かす。


「それで?さっきのは何?」


京子は一転して真面目な様子で聞いてくる。


「大事なものを守るための力だ」

「そう」

「えっ、それだけ?」

「なに?もっと深掘りして欲しいの?」

「そういうわけじゃないけど……」

「でも、1つだけ約束して」

「約束?」

「絶対に死なないこと」


京子は颯斗の頬を両手で挟みながらそう言った。

颯斗が京子の手に触れれば、彼女は力を弱める。


「ああ。絶対に守るよ」


京子はその言葉に満足したように微笑んだ。


           To be continue……


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