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第29話 救いを求める声、君に伸ばす手


第三者side


莉乃はリットとオミナスを瞳の中に捉えたまま動かない。


「怯むな!!」


リットの一声にオミナスは莉乃に襲いかかる。


「グオオオオオオッ!!」

「……………………」


莉乃はオクトソードオミナスの足を掴み、そのまま握りつぶす。


「なに!?」


リットが驚いていると、莉乃はオミナスとの距離を一気に詰める。


「……………………………」


そして、無言でオミナスにパンチを喰らわせていく。

オミナスからは鈍い音が鳴り響く。


「グオオオオオオッ!!」


オミナスは必死に抵抗し、莉乃を巻き上げる。


「よ、よし!そのまま握りつぶせ!!」


リットの命令を受け、握りつぶそうとする。

しかし、莉乃が少し力を入れた瞬間、オミナスの足は吹き飛んだ。


「グオオオオオオッ……!!」


オミナスは数歩後ろに下がる。

莉乃は無言でチェンジャーの外側を回転させる。


『繧ソ繝悶?繝輔か繝シ繝医Ξ繧ケ?√ヵ繧」繝九ャ繧キ繝・?』


よくわからない音声と共に大量の砲台が出現し、一斉に攻撃を放った。


「グオオオオオオッ!!」


オクトソードオミナスは断末魔を上げ、爆散した。


「な、なんなんだ!?」


リットは莉乃の脅威的な力に驚いていた。

莉乃はそんなリットを見つめて。


「………………………………」


無言で一気に距離を詰める。


「……っ!!」


リットは防御態勢に入るが、そんなことはお構いなしに莉乃はリットの腹部に拳を入れる。


「がはぁっ!!!」


リットはそのまま吹き飛ばされる。


「クソ……!!」


リットは腹部を抑えながら立ち上がる。


「何なんだよ……!!」


リットは莉乃をキッと睨みつける。


「………………………………」


莉乃は再びリットの眼前に移動し、回し蹴りを側頭部に叩き込む。


「かはぁっ!!」

「………………………」


さらにはリットを蹴り上げる。


「ぐえっ!!」


そして、チェンジャーを回す。


『繧ソ繝悶?繝輔か繝シ繝医Ξ繧ケ?√ヵ繧」繝九ャ繧キ繝・?』


砲台による一斉発射を喰らい、リットは地面に落下する。


「ぐっ…ぁ……っ!!」

「今日はここまでとしよう」


そう言って現れたゲイルによってリットは姿を消した。

そして、次に莉乃の目に入ったのは、みのりだった。


「莉乃、ちゃん……?」

「…………………………」


莉乃は無言のまま、みのりの方へと歩いていく。

その足は段々と加速していく。

そして、莉乃はみのりに向かってパンチを放った。


「危ねぇ!!」


そこに駆けつけた颯斗がみのりを抱き抱えて、地面を転がる。

拳は地面にめり込み、軽いクレーターを作っていた。


「おい、莉乃!お前一体どういうつもり……」


颯斗が言い切る前に、莉乃は蹴りを放つ。


「うおっ!」


颯斗はみのりを突き飛ばし、自分も回避する。


「どうなってんだよ石川!」

「私にも訳が分からないよ……!!」


2人は依然として警戒をする。


「莉乃!どうしちまったんだよ!」


莉乃は颯斗の言葉にターゲットをみのりから颯斗に切り替える。


「危ねっ!」


颯斗はこれまでの戦闘で培った技術で莉乃の攻撃を避けていく。

だが、変身しているのしていないのでは大きな差があった。


「うあああああっ!!」


颯斗は莉乃に蹴り飛ばされる。

そして、莉乃がトドメのパンチを放とうとした瞬間。


「……っ!!」


莉乃の動きが止まった。


「莉乃……?」

「助けて……」


力無くそう呟いた後、再び莉乃はパンチを放つ。

颯斗はそれを寸前で躱し、背中にキックを入れる。


「石川!ここは一旦引くぞ!!」

「え?う、うん!」


颯斗はみのりを連れて逃げた。


─────────────────────────────────────


「クソッ!一体どうなってんだよ……」


物陰に隠れた颯斗はそう呟く。


「多分、あのカードだと思う」

「カード?カードは全部取られたはず……」


そこまで言って、颯斗は1つの可能性に当たった。


「まさか……」

「何かあったの?」

「昨日、莉乃の病室にゲイルが現れたんだよ」

「ゲイルが!?」

「その時にカードを渡した可能性が高いな……でも、何のために……」

「何か企んでるんだと思う」

「何かって何だよ……」

「分からない。でも、変身するところを見てたけど、フォートレスカードはともかく、もう1枚のカードはエラーみたいな感じだった。だから、強制的に変身させてるんだと思う。それに変なオーラも出てたし、莉乃ちゃんは自分の意思で体を操れてないんじゃないかな」

「……確かにそうかもしれねぇ」


颯斗は真剣な顔でそう言う。


「莉乃は俺に『助けて……』って言ったんだ。だから、自分じゃない何かが暴走してるんだろうな……」

「(私が何とかしないと……)」


みのりは現状と夢を重ねてそう思っていた。


「(変身できるのは私だけ…正面からあの子を止められるのもアナザーシステムを使ってる私だけ……!!)」

「どうする?」

「作戦会議だね」


2人は一旦病院へと戻ることにした。


─────────────────────────────────────


「莉乃ちゃんが……!?」


病院に戻った2人は春香に先程の出来事について話していた。


「何とかして助けたいんです!」

「でも、颯斗君は今変身できないし……」

「方法ならあります」


みのりが言う。


「私の力を使います」

「お前の力って……」

「私のアナザーシステムにはオムニバスシステムの力を抑制する能力があります」

「前に1度やってたな!」

「だから、この力を使って莉乃ちゃんを強制変身解除させます。そうすれば莉乃ちゃんを助けられる!」

「でも、莉乃ちゃんの意志を乗っ取っている奴もそれは知ってるんじゃ……」

「だから不意を突く形で何とかしたいんです」


その言葉に少しの沈黙が流れる。


「……なら、俺が囮をやる」

「本気なの!?危険すぎる!!」


春香は颯斗の立候補を否定する。


「そんなのわかってます。でも、莉乃が助けてって言ったんです!俺に出来ることがあるなら…何でもやる!!」

「颯斗君……」

「……わかった。本当に危ないと思ったら逃げて」

「はい!!」

「行くぞ、石川!」

「うん!」


2人は莉乃を探しに行こうとする。

すると、ドゴーンという爆発音が聞こえた。


「まさか!!」


3人が窓の外を見ると莉乃が病院に迫っていた。


「早く止めないと!!」


2人は駆け出した。


─────────────────────────────────────

「こっちだ莉乃!!」


莉乃の正面から現れた颯斗がそう言って彼女の気を引く。

莉乃の視線が自分に向いたことを確認した颯斗は病院から離れていく。

莉乃もだんだんと加速して追いついていく。


「はぁはぁ……!!」


颯斗は息を切らしながらも全力疾走した。


「(止まるわけにはいかない!!止まったら莉乃を助けられない!!)」


その一心で走り続け、みのりとの合流ポイントに到着した。


「はああああっ!!」


背後から飛びかかったみのりに莉乃は寸前で気付き、回避する。


「気付かれちゃったか……!!」


みのりはすぐさま莉乃の方を見て警戒する。


「どうする気だよ!」

「どうにかしてみせる!!」


そう言ってみのりは剣を片手に突っ込んでいく。


「…………………………」


莉乃も無言でオムニバスブレードを取り出し、応戦する。


「何でだよ!あれはナイトカードを使ってないと使えないだろ!?」

「そんななのを気にしてる場合じゃない!」


2人は凄まじい剣戟を繰り広げる。


「莉乃ちゃん!!目を覚まして!!」


みのりは必死に呼びかける。


「…………………………」


だが、それに莉乃は答えない。


「はああっ!!」


みのりは突き付きを放つ。

莉乃はそれを避けつつ、放たれた突きをチェンジャーの側面に当てて、回転させる。


『繧ソ繝悶?繝輔か繝シ繝医Ξ繧ケ?√ヵ繧」繝九ャ繧キ繝・?』


砲台がみのりを囲み、一斉に発射した。


「うあああああっ!!」

「石川っ!!」


みのりは強制変身解除してその場に倒れる。


「莉乃!!しっかりしろよ!!」


颯斗は莉乃に殴りかかる。

が、莉乃はそれを受け止めて反転させて地面に倒す。


「がはぁ!!」

「莉乃ちゃん……!!」


みのりは莉乃に呼びかける。


「………………………………」


莉乃はみのりの首を片手で掴みあげ、オムニバスブレードを構える。


「よせ!!」


颯斗が叫ぶ。


「ようやく…捕まえた……!!」


みのりはがっしりと莉乃の腕を掴んでいた。


「絶対助ける!!!!」


みのりは持てる全ての力をオムニバスチェンジャーに注ぎ込む。


「うおおおおおおおおおっ!!!!!」


そして、2人は弾け飛んだ。


「莉乃!!石川!!」


煙が晴れた時、莉乃は元の姿で倒れていた。


「よかった……やったぞ!石…川……?」


颯斗が莉乃からみのりの方に視線を向けると。


























































そこにはオムニバスブレードが腹部に突き刺さったみのりがいた。


「石川っ!!!」


颯斗はすぐにみのりの方へと駆け出す。


「おい!!しっかりしろ!!」

「颯斗、君……私…莉乃ちゃんの、力に…なれたかな……?」

「ああ……!!なれたからもうしゃべるな……!!」


颯斗は涙をこぼす。


「しゃべっても…しゃべらなくても、一緒だよ……私は、もう…助からない……」

「諦めるなよ!!」

「颯斗君……莉乃ちゃんを、お願い……あの子は、優しいから……きっと…自分を、追い、詰めるから……」

「わかった…わかったから死ぬな!!」

「今日まで…あり…が、とう……」


そう言ってみのりは目を閉じた。


「石川……?おい、冗談はやめろって……なぁ!!石川!!!起きろって!!石川!!」


颯斗の悲しき叫びが木霊する。


「みのり…ちゃん……?」


その声に颯斗は目を向ける。

そこには立ち上がった莉乃がいた。


「莉乃……」

「颯斗君…これはどういう状況ですか……?」

「実に面白いだろう?」


そう言って現れたのはゲイルだった。


「ゲイル……!!」

「いいデータが取れた。感謝する」


ゲイルの手には莉乃が使った禁忌のカードが握られていた。


「それと莉乃?お前にはもう1つ感謝しておかないと」

「何を言ってるんですか……?」

「そこのイレギュラーを殺してくれてありがとう!お疲れ様でした♬」


ゲイルはニヤッと笑ってそう言った。


「私がみのりちゃんを……?」

「お前以外に誰がいるんだ?オムニバスブレードも刺さっているしな」


莉乃はその場に崩れ落ちる。

そして、ポツリポツリと雨が降り始める。

ゲイルはオムニバスブレードを消し、自身も姿を消した。


「あああああああっ!!!」


莉乃の悲鳴が響き渡った。


          To be continue……


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