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第31話 熱血!野球対決!


第三者side


「あ〜あ。死んじゃったか」


ヴィテレはそう呟いた。


「当然の結果だな」


そう言ってゲイルは頷く。

すると、どこからか声が聞こえてくる。


「だが、カードは全部奪っていたのだろう?」

「誰だ貴様は!」


ダークエイドヴァルキリーが声を上げる。


「そんなに警戒する事はない。私は味方だ」

「随分と久しぶりだな?ガイタ」

「ああ、久しぶりだな。ゲイル」


2人はニヤリと笑い合う。


「ゲイル様、誰なんですか?」

「彼は我々の技術者だ。君のシステムも彼が作ったし、このタブーカードも彼が作った」

「そういうことだ」

「それは失礼した」

「気にするな。君がそういう風になっているのは私がそうさせているのだから」

「それは一体……」

「今回は俺が行こう!」


ダークエイドヴァルキリーの言葉を遮るようにヴィテレが言う。


「ほう?」

「任せておけ!ちょっと力試しをしてくるだけだ」

「なら、私も行こう」


ダークエイドヴァルキリーは名乗りを上げる。


「じゃあ、行こうか」


─────────────────────────────────────


リットを撃破してから1週間が経った。


「……行ってきます」


莉乃は空いている部屋にお墓が出来るまでの簡易的な仏壇を作り、そこに手を合わせていた。


「莉乃ちゃん……」


春香はドアを少し開け、心配そうな様子で呟いた。


「大丈夫です。私は立ち止まりませんから」


気配に気付いた莉乃は春香の方を振り返ることなく、そう呟いた。


─────────────────────────────────────


「石川だが、急に転校することになった」

「「「え〜っ!?」」」


学校ではみのりの死は転校という形で知らされることはなかった。

クラスのみんなは口々に“もっと仲良くしたかったな〜”とか“何か言ってくれればよかったのに〜”などと明るい様子で言っている。

そんなクラスの様子とは反対に莉乃達の表情は暗かった。

だが、そんな様子に気付くものは誰も居なかった。


「「「……………………」」」

「(誰も知らないんだ。石川が俺たち共に戦ったことを…大事な仲間を守ったことを……)」


少し複雑な心境だった。

ホームルームが颯斗は立ち上がって教室を出ていった。


「颯斗君……?」


莉乃はそれを追うように教室を出た。

教室を出た颯斗は屋上へと来ていた。

柵に腕を乗せ、俯いている颯斗に莉乃が声をかける。


「どうしたんですか?颯斗君」

「莉乃か……」


颯斗は元気が無さそうに声を出す。


「どうしたんですか?」


莉乃は柵に背中を預けて座る。


「……別に」

「そうですか」


莉乃は何も言わずに隣に居座った。

そんな時。


「随分としんみりした空気だな?」

「「……っ!!」」


2人が声の方を見ると、ヴィテレとダークエイドヴァルキリーがいた。


「ダークエイドヴァルキリー……!!」

「エイドヴァルキリー。お前はここで潰す!!」


そう言ってダークエイドヴァルキリーは2枚のカードをスキャンしてフォームチェンジする。


『爆速の暗黒人形!パペットチーター!』


「そう簡単に負けるわけにはいきません」


莉乃はカードをスキャンする。


『フォートレス!』

『ユニコーン!』


「オムニバスチェンジ!」


『要塞の一角獣!フォートレスユニコーン!』


「はあああああっ!!」


ダークエイドヴァルキリーは莉乃に飛びかかる。


『オムニバスバスター!』

『ブレード!』


「ふっ!!」


ダークエイドヴァルキリーの拳をバスターの平面で受け止める。


「前の私とは違いますよ」

「そのようだな」


『ダークオムニバスブレード!』

『ダークフェニックス!』

『ダークフェニックス!ブースター!』


「はああっ!」


ダークエイドヴァルキリーはブレードから黒い不死鳥を放ち、莉乃に突撃させる。


「なら、これです」


『キャノン!』


莉乃はバスターをキャノンモードにし、カードをスキャンする。


『ジェット!』

『ジュエル!』

『フォートレス!』


「はああっ!」


黒い不死鳥に照準を定め、トリガーを引く。


『マキシマムバスターフィニッシュ!』


バスターからは高速で宝石の見た目をした巨大なエネルギー弾が放たれる。

2つの技が激突し、相殺し合った。


─────────────────────────────────────


「あっちは随分と盛り上がっているな」

「ヴィテレ……!」


颯斗はカードをスキャンする。


『オーロラ!』

『Tレックス!』


「オムニバスチェンジ!」


『北極の暴君!オーロラレックス!』


「はあああっ!!」


颯斗はオーロラのエネルギーでヴィテレを拘束する。


『オーロラレックス!フィニッシュ!』


「はああああっ!」


颯斗は蹴りを放つ。


「そんなに焦ってどうした?」


ヴィテレは拘束を破壊し、颯斗の蹴りを避ける。


「焦ってない!」


『反射の毒蛇!ミラーコブラ!』


「はああっ!」


颯斗はヴィテレの周辺に鏡を生成し、そこから蛇を呼び出す。

蛇はヴィテレに巻き付く。


「ほう?だが、甘い!!」


ヴィテレは蛇の巻きついた方向とは逆の方向に回転し、蛇を吹き飛ばす。


「なっ……!!」

「焦っているお前じゃ勝てない!!」


ヴィテレは動揺した颯斗の腹部を殴り飛ばした。


「がはあっ!」

「颯斗君!!」


莉乃は颯斗の元へと駆け寄る。


「さぁ、ゲームを始めようか!」


そう言っヴィテレの背後からオミナスが姿を現す。


「やきゅ〜っ!!」

「野球オミナスか……!!」


2人は身構える。


「や〜きゅう!!」


野球オミナスがバットを掲げると周囲は光に包まれた。


─────────────────────────────────────


光が収まると。


「な、なんですかこれ!?」


莉乃は驚いたような声を上げる。


「野球のユニフォーム……?」


変身状態は維持しているが莉乃達の衣装は野球のユニフォームへと変わっていた。

そんな莉乃達に相対するように野球オミナスとヴィテレ、ダークエイドヴァルキリーが立つ。

もちろん、野球のユニフォーム姿で。


「何故私まで……!!」


ダークエイドヴァルキリーはヴィテレを睨む。


「まぁまぁ!」


ヴィテレはそんな彼女を宥めつつ、莉乃達をビシッと指差して。


「野球対決だ!!」

「「は?」」


2人は思わず間の抜けた声が出る。


「だ・か・ら!野球対決だって言ってるでしょうが!」

「「えぇ〜……」」


2人は困惑しつつも対決が始まろうとしていた。


「野球対決するにしても人数が足りなさすぎるだろ」


颯斗は冷静に言う。


「確かにそうですね」


莉乃もその言葉に同調する。


「そんなの知らん!!」

「「はぁ!?」」

「さぁ、始めるぞ!!」


ヴィテレの目は燃えていた。


「これ、あの人がやりたいだけじゃ……」

「やきゅ……」


ダークエイドヴァルキリーと野球オミナスはそう言う。


「わ、私からいきます」


莉乃はバッターボックスに立つ。


「行くぜ!はあっ!」


そう言ってヴィテレは投球した。


「はああっ!」


莉乃はバットを振る。

しかし、ボールは通常ではあり得ない軌跡を描き、キャッチャーのダークエイドヴァルキリーのミットに収まった。


「ストラ〜イク」


ダークエイドヴァルキリーはやる気のなさそうにそう言った。


「えっ?えっ?」


莉乃は2度見した。


「ズルいぞ!!」

「何がだ?俺は1度も普通の野球をするとは言っていないぞ?」

「なんて野郎だ……っ!!」

「あと言い忘れていたが、アウトになったらボールになりま〜す!」

「「はぁ!?」」

「こんな風にな!」


ヴィテレが指示を出すと野球オミナスがたくさんのボールを見せてくる。

それらはボールの形をした人の顔だった。


「卑劣ですね……っ!」

「さっきのでワンストライク!残り2球で沈めてやる!!」


ヴィテレは再び投球する。


「はあっ!!」


莉乃は先ほど放たれた軌跡の位置にバットを合わせる。

しかし。


「ストラ〜イク」

「へ?」


今度はストレートで投げてきた。


「残念でした〜?」

「な、な…なぁ!?」


普段は冷静な莉乃もかなり感情を大きく表に出してしまう。


「莉乃!落ち着いていけ!」

「は、はい!」


颯斗に言われ、莉乃は深呼吸する。


「よし!」

「打てるものなら打ってみな!!」

「(今度こそ…絶対に打つ!!)」


莉乃は再びバットを構える。


「はあっ!!」


ヴィテレの投球を完全に読み切った莉乃は打ち返す。


「なに!?」

「よし!」

「な〜んてな?」

「え?」


守備についていた野球オミナスが莉乃の放ったボールをキャッチした。


「うそ〜ん……」


心の声が漏れた莉乃は光に包まれ、ボールとなった。


「莉乃!!」

「さぁ、次はお前だ」

「ふっ。いいだろう!見せてやるぜ!俺の野球魂!」


颯斗はバットをヴィテレに向けてそう言った。


「(なんだこれ)」


ダークエイドヴァルキリーは呆れていた。


─────────────────────────────────────


「さぁ、来い!」


バッターボックスに立った颯斗は元気よくそう言う。


「はああっ!」


それに呼応するようにヴィテレの全力投球を見せる。


「ストラ〜イク」

「くっ…!空振ったか……っ!!だが、まだだ!!」

「もう1回ストライクを味わいな!!」

「はあああっ!!」


ヴィテレの投げた球は先ほどよりもさらにあり得ない動きでミットに収まる。


「ストラ〜イク」

「クソっ!!」

「さぁさぁ!後が無いぞ〜?」

「だったらこれでいく!」


颯斗はカードをスキャンする。


『北極の暴君!オーロラレックス!』


「さぁ、次で終わらせてやる!!」

「終わるのはお前らだ!!ストレートで終わらせてやる!!」


そう言ってヴィテレは最後の一球を放った。

ヴィテレは宣言通りストレートを放った。

だが、その威力はとてつもないものだった。


「うおおおおおおおっ!!」


颯斗は押し切られまいと全力で力を込める。


「いっけええええええええっ!!!」


そして颯斗は球を打ち返した。


「なに!?野球オミナス!!」

「やきゅう!!」


野球オミナスはジャンプして球を受け止めようとするが。


「やきゅっ!?」


颯斗の球は野球オミナスの腹部に減り込んでいた。


「取られてアウトになるなら、取れない球を打てばいい!!」

「やきゅ〜っ!!」


野球オミナスが地面に打ち付けられると同時にボールになっていた人々が解放される。


「ありがとうございます!」

「ああ!」


颯斗はサムズアップする。


『オムニバスバスター!』

『ブレード!』


「これで終わらせます」


莉乃はバスターにユニコーンとフェニックスのカードをスキャンする。


『ユニコーン!』

『フェニックス!』


「はあああああっ!!」


そして、バスターを野球オミナスの腹部に当てると同時にトリガーを引いた。


『メガバスターフィニッシュ!』


炎を纏ったドリルで野球オミナスを貫いた。


「やきゅうううっ!!」


そんな断末魔を上げながらオミナスは爆散した。


「クソぉ〜!次は負けないぞ!」

「はぁ〜…今日は白けた」


そう言って2人は姿を消した。


「なんだったんだよ……」

「全くですね」


小言を言いながら2人は変身解除した。


「颯斗君」

「ん?」

「ありがとうございました」

「俺は俺に出来ることをしただけだ」

「いつも助けてもらってますね」

「そうか?」

「はい。ですから、颯斗君も何かあったら私に言ってください。頑張って力になりますから!」

「……ああ」


颯斗は莉乃にそう言った。


          To be continue……


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