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第33話 ラブレター事変、揺れる男心


颯斗side


「はぁ……」


俺は靴箱で1人ため息を吐いていた。


「俺は……」


俺は役に立てていると思えない。

オムニバスになったのは莉乃を守るためだった。

覚悟はあった。

莉乃を守る覚悟は。

でも、技術が…力が足りなかった。

莉乃が苦しんでいる時に俺は力になれなかった。

誘拐された時も。

いつだって力になったのは俺じゃない。

俺“以外”だ。


「何のために……」


自身の腕についているチェンジャーをギュッと握りながら呟く。


「おはようございます。颯斗君」


そんな俺の背後から莉乃が声を掛けてくる。


「ああ。おはよう」


自分の心情を悟られぬよう、笑ってそう返した。


『颯斗君も何かあったら私に言ってください。頑張って力になりますから!』


以前言われた言葉が過ぎる。

……こんなこと言えるわけないな

内心冷笑しながら、靴を履き替える。


「えっ」


ふとそんな声が聞こえた。


「どうかしたのか?」


俺は声の主である莉乃に視線を向けて聞く。


「靴箱にこんなものが」


そう言って見せてきたのは、1通の手紙だった。


「は?」


俺は間の抜けた声を上げる。


「これは一体……」


莉乃は不思議そうに封筒の表裏を見ている。


「……とりあえず教室行こうぜ」


正気に戻った俺は少し焦ったような声を上げ、莉乃に言う。


「そうですね」


莉乃はそれを丁寧に鞄にしまい、俺たちは教室へと向かった。


─────────────────────────────────────

第三者side


「それって……」

「ラ、ララ、ラブレター!?」


教室に着き、莉乃が靴箱での話をすると公人は興味深そうに笑い、瑞稀は動揺を露わにした。


「ラブレター……そうなんでしょうか?」

「まぁ、十中八九そうだろうね。七瀬さん、モテるんだね?」

「モテるのかどうかは分かりませんが時々、お店に来て私に“好きだ”と言ってくる方もいらっしゃいますね」

「モ、モテモテじゃん……っ!!」


瑞稀は目をかっ開いて言う。


「なるほど……」

「………………………」


公人は颯斗の方をジッと見ていた。


「とりあえず、中を見てみないことには始まりませんね」


莉乃はそう言って手紙を開けた。


「ふむふむ……確かにこれはラブレターですね」


莉乃は眉ひとつ動かすことなく淡々と告げる。


「へぇ?」

「内容聞きます?」

「いや、そこはプライバシーだからね」


そう言って公人はパスする。


「私も流石にそこまでは……」


瑞稀も1歩引く。


「颯斗君はどうです?」

「………………………」


莉乃の言葉に颯斗は反応しない。


「颯斗君?」

「……え?あ、悪い。聞いてなかった」

「ラブレターの中身を聞きますか?」

「いや、いい」

「そうですか」


すると公人が切り込む。


「返事はどうするの?」

「迷っています」

「「……っ!?」」


瑞稀と颯斗は目を見開く。


「……マジ?」

「そうですね」


莉乃は何を言っているのかわからないと言った表情を浮かべながら瑞稀の言葉に頷く。


「………………………」


颯斗は無言の中、担任がやってきてホームルームが始まった。


─────────────────────────────────────


放課後。


「颯斗」


公人は教室をそそくさと出て行った颯斗に声を掛けた。


「なんだよ」

「ちょっと付き合ってくれないか?」

「……悪い。俺はノンケだ」

「そういう意味じゃねぇよ」


そんなやりとりをした後、2人は屋上へと移動した。


「ほい!」


公人は買ってきた缶ジュースを投げる。


「うおっ、と!」


颯斗は驚きつつも受け止める。


「……なにこれ」

「牛乳ソーダ」

「きっしょ。なんでそんなの売ってんだよ」

「さぁ?校長先生の趣味じゃない?」

「お前、自分の何買ったんだよ」

「……コーラ」

「おい、交換しろや!」


颯斗は公人に飛びかかってくる。


「うわっ!ちょっと!缶開いてるんだから危ないでしょ!?」


公人はヒラリと躱してそう言う。


「知るかよ!」


それからしばらく追いかけっこをした。


「「はぁはぁ……」」

「公人…お前、避けるの上手すぎだろ……」

「逃げる側だけど昔から鬼ごっことかドッヂボールは強かったでしょ?」

「そうだったな……」


公人はコーラを飲む。


「あぁ〜!これこれ〜!」

「…………………………」


颯斗は牛乳ソーダをジッとみる。


「飲まないの?」


公人はニヤニヤしながら言う。


「……飲まず嫌いはダメだよな」


颯斗はそう言うと嫌な顔をしながら、開封する。


「くっ……」


少し間を空けて、颯斗は覚悟を決める。

そして、それを飲む。


「どう?」

「……トイレ行ってくる」

「うっす」


颯斗は全力ダッシュでトイレに向かった。


「……そうなるよなぁ」


1人残された公人は苦笑しながら呟いた。


─────────────────────────────────────


「まだ味がするぞ……」

「ごめんて」


公人はそう言ってコーラを渡す。


「お前、1回飲んだ方がいいぞ」

「飲んだから渡したんだよ」

「怖いもの知らずかよ」


それから少し無言の時間があり。


「それで?どうするんだ?」

「……どうするって?」

「惚けるなよ」


公人は真面目なトーンで言った。


「……どうしようもないだろ。誰と付き合うかは莉乃の自由だ」

「確かにそうだけど……そんな簡単に諦められるの?」

「え?」

「颯斗の想いはそんな軽いものだったの?」

「そんなわけないだろっ……!!」


颯斗は絞り出したような声を上げる。


「俺は莉乃を守りたくてオムニバスになったんだよ……!!なのに、全然だった……!!守るどころか、守られるし…力になりたいのに実際に力になったのは俺じゃない……っ!!だから、俺じゃ莉乃を幸せに出来ない……」

「颯斗……」


そんな時だった。


「お前から潰すとするか」


そう言って現れたのはダークエイドヴァルキリーだった。


「ダークエイドヴァルキリー……!!」


颯斗は公人を庇うように前に出る。


「公人、下がってろ」

「う、うん」


『UFO!』

『マジシャン!』


「オムニバスチェンジ!」


『未確認の手品師!UFOマジシャン!』


「はああっ!!」


ダークエイドヴァルキリーはダークオムニバスブレードで斬りかかってくる。


「はっ!」


颯斗はUFOでその攻撃を防ぎ、ダークエイドヴァルキリーの腹部にパンチを叩き込む。


「弱いな」


そう言って拳を受け止めたダークエイドヴァルキリーは黒い光に包まれる。


『絢爛の暗黒狩人!ダークジュエルシャーク!』


「はああっ!!」


ダークエイドヴァルキリーはハンマーで颯斗を殴り飛ばす。


「ぐああっ!!」


颯斗は床を転がる。


「颯斗!!」

「来るな!!」


近寄ろうとしてくる公人に声を荒げて言う。


「七瀬さんを呼んでくる!!」


公人はその場を去った。

颯斗はゆっくりと立ち上がって。


「オムニバスチェンジ!!」


─────────────────────────────────────


『反射の毒蛇!ミラーコブラ!』


「はあっ!」


颯斗はダークエイドヴァルキリーを鏡で囲う。

そして、その鏡からコブラを召喚し、ダークエイドヴァルキリーを締め付けさせる。


「無駄だ」


『3つ首の暗黒土人形!ダーククレイべロス!』


黒いケルベロスがコブラを噛み砕く。


「行け」


ケルベロスは颯斗に突進する。


「ぐああっ!!」


颯斗は吹き飛ばされ、屋上から落下する。


「オムニバスチェンジ!」


『磁力の百獣王!マグネットライオン!』


「はあっ!」


磁石の磁力によって手すりに引き寄せられた颯斗は落下を免れる。


「ならコレだ」


『ダークライナー!』

『ダークホエール!』


「ダークオムニバスチェンジ」


『定刻の暗黒巨獣!ダークライナーホエール!』


「行くぞ」


ダークエイドヴァルキリーは一瞬で颯斗との距離を詰める。


「はああっ!」


電車のエネルギーを纏ったアッパーを喰らう。


「ぐああっ!」

「ふん!」


ダークエイドヴァルキリーはクジラのエネルギーを纏った回し蹴りを放つ。


「ぐあああっ!!」


颯斗は吹き飛ばされ、柵に叩きつけられる。


「だったら!!」


『宇宙の化け狐!プラネットフォックス!』


「ふん」


『宇宙の暗黒化け狐!ダークプラネットフォックス!』


2人はチェンジャーを操作する。


『プラネットフォックス!』

『ダークプラネットフォックス!』

『『フィニッシュ!』』


「「はああっ!」」


2人は惑星型のエネルギーをぶつけ合う。

周囲は煙に包まれる。


「はあああっ!!」


その煙の中から現れた颯斗はダークエイドヴァルキリーに殴りかかる。


『北極の暴君!オーロラレックス!』


「なかなか考えたな。だが、甘い」


『北極の暗黒暴君!ダークオーロラレックス!』


「ふん!!」


2人の拳がぶつかり合い、周囲の煙が吹き飛ぶ。


「お前じゃ私には勝てない」


『ダークオーロラレックス!フィニッシュ!』


空いていた左手にTレックスのエネルギーを纏ったパンチを颯斗の腹部に叩き込む。


「ぐあああああっ!!」

「その程度か?」

「まだ…だ……っ!!」


颯斗は立ち上がる。


「無駄な抵抗だ」


『爆速の暗黒人形!パペットチーター!』


「終わらせてやる」


ダークエイドヴァルキリーは高速で動き、隼人を攻撃する。


「くっ!ぐっ!ぐああっ!」


『パペットチーター!フィニッシュ!』


「お前の負けだ!!はああああっ!」


ダークエイドヴァルキリーはエネルギーを纏った蹴りを颯斗の胸部に放った。


「ぐあああああっ!!」


颯斗は大きく吹き飛ばされ、屋上から落下しようとする。


「颯斗君!!」


そこに息を切らした莉乃がやってくる。


「遅かったな?」


莉乃は走りながら変身する。


『ジェットナイト!』


そんな彼女の前にダークエイドヴァルキリーが立ちはだかる。

2人は剣をぶつけ合う。


「どいてください!」

「悪いがそうはいかない」

「颯斗君っ!!」

「(ごめん、莉乃…お前にそんな顔をさせるなんて……俺はやっぱりお前には……)」


そして、颯斗の意識は闇に落ちた。


「颯斗君っ!!!!!」


莉乃の呼ぶ声が響いた。


          To be continue……


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