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第6話 救済

 流雫は自転車を止めたまま、何も言わず澪の吐息を聞いていた。怒りや混乱と戦う澪にとって、今何よりも必要なのは流雫の存在を感じられること。それは判っている。

 こう云う時、流雫は何もできないことに苛立ちを感じる。ただ、最愛の少女の名を呼ぶだけだ。

「澪……」

しかし、澪にとってはそれだけで救われる。

「……ありがと、流雫……」

とだけ言った澪は、漸く落ち着きを得た。今は、悠陽が生きていることを願うだけだ。

 澪との通話が切れた後で、流雫はペダルに足を掛ける。

 ……MMOはリアルで死人を出すようなゲームではないハズだ。こうなることは、どんなに高性能なAIですら予見できなかっただろう。

 人間は最も厄介なブラックボックス。アルスが言った通りだ。尤もそれは、自分も当て嵌まるのだが。


 病室のベッドの上で、悠陽が目を覚ましたのは3時間後のことだった。開ける視界が最初に捉えたのは、ボブカットの少女だった。

「悠陽さん……!」

泣き出しそうなその声に、

「澪……?」

と名を呼ぶ悠陽。

 ……澪と別れた直後に、男とすれ違い、胸に感電したような痛みを感じた。そこまでは覚えている。

「助かった……」

と言った澪の頬が濡れていく。

 ……澪は近くの交番で、父親から取調を受けた。護身のためとは云え、銃を使った以上取調は免れない。正当防衛を確定させるためには避けられない、それは判っているが、この事後が何よりも厄介なのだ。

 その後、澪は父親から悠陽が搬送された病院を聞き出して向かった。そして医師を拝み倒し、病室で目を覚ますのを待っていた。その事実を悠陽が知ることは無い。

 悠陽は泣く澪を見ながら、何故自分が狙われたのか、思い当たる節を探す。

 通り魔でなければ、スタークの死と同じような理由。そうでなければ説明が付かない。

「……私を襲ったのは……?」

と悠陽は問う。澪は大きな脈動を感じた。

 ……澪が追ったが、最後は線路に下りて列車に撥ねられた。逃げられないなら死を選ぶ、その結末だった。ただ、正直に言わなければ悠陽の気が済まないだろう。澪は頬を手で拭うと、溜め息をついて言った。

「……死にました。悠陽さんを、神に逆らう女だと言って、列車に飛び込んで……」

「神に……逆らう……?」

「AIを神と崇め、それに逆らう者を排除しようとした。悠陽さんは、スタークと同類だと認定されたんです」

「あんな奴と同類……!?」

と、悠陽は目くじらを立てる。何故あんなのと同類なのか。

 「スタークはかつて、EXCの開発に携わっていました。時折見せるEXCやAIへの批判も、元関係者故の目線。そして悠陽さんも、最近の動きについては不審に思ってる。……何かそれらしいこと、EXCで言及してませんか?」

そう問う澪に、悠陽は

「……一度だけ……」

と答える。


 2週間近く前、悠陽は小さな騒動に遭遇した。突如としてチート級モンスターが現れ、アルバと云う6人編成のコミューンが1つ壊滅した。全員がトップクラスの強さを誇っていたが、次々と葬った。

 影響は周囲に居合わせたユーザーにも及び、レイド戦の様相を呈した。

 悠陽が操るアウロラは、他のアバターが負わせたダメージに便乗する形で仕留めたが、キルされたアバターは14体に及んだ。

 その直後、悠陽は居合わせた数人に対し、EXCへの批判を思わず口にした。

「AIの生成に異常が起きてるなら、早く是正しないと」

それに言葉を被せたのがスタークだった。

「AIも完璧じゃない。だがこれは、エンタメの範疇じゃない」

 あの日より前にスタークと言葉を交わしたのは、この時だけだった。それも、他にもアバターがいる中で。

 スタークは、あの週末の時点で悠陽の敵になった。死亡したことは残念だが、それはそれだ。だが、その数分だけは同じ疑問を抱える、謂わば同士のようなものだった。

「何故、スタークのことを知ってる……?」

と悠陽は問う。澪は小さく溜め息をつく。話を進める上では、カミングアウトしなければならない。

 「……父が刑事で……」

と澪は答える。まさかの言葉に、悠陽は眉間に皺を寄せる。

 「……スタークは元関係者だから、厄介者として扱われた。そして悠陽さんは、その時居合わせたスタークにAIの異常の可能性を指摘した。指摘と呼べるほどのものではなくても、アドミニストレータAIは批判と判断した……」

「だから私も狙われた……?」

「恐らく。でもリアルにまで危害を及ぼすのは……」

と澪は言った。

 お前は悪くない、と父親が言ったことを思い出す。通り魔を取り押さえようとした、その度胸は褒められるべきだからだ。

 ……こう云う話は、流雫の方が詳しい。そう思った澪は悠陽の目を見つめ、言った。

「あたしは、悠陽さんのフレンドですから」

澪は何度でも言うだろう。彼女は孤独じゃないことを、知ってほしかった。


 山梨県東部の都市、河月。北部の河月湖を資源とした観光が盛んで、流雫を保護する親戚もその畔に建つペンションを営んでいる。

 流雫も、河月にいる日は精力的に手伝いをこなす。自由な時間を得られるのは大体21時からだ。

 そのタイミングで、澪からのメッセージが届く。

「ルナ、先刻はありがと」

名前がカタカナなのは、2人が互いの顔を知らなかった頃の名残だ。

「ミオが無事で安心した」

「悠陽さんも助かったわ」

そのメッセージに安堵の溜め息をつく流雫。誰も死ななくて済んだことが、何よりも大きい。

 先刻のニュースでも、夕方の事件について取り上げられていた。犯人はほぼ即死だと報じられている。

 澪は何が起きたか、掻い摘まんで書いた。流雫は3通のメッセージに目を通した後で、宗教テロのようだと思った。

 殺害ではなく救済、そう言っている時点でそう判断できる。AIと云う神に逆らうなら、死を以て救済する。これ以上、魂が穢れないように。そう言いたい連中がいて、人を殺そうとしている。

 ただの痛々しいオタクが暴走しているだけならマシだが、如何せんそれほどシンプルな世界ではない。そして、今想像しうる限り最悪のケースは、スタークと接触したことで流雫や澪が標的になること。それも、EXCとは別の世界で。

 昨日まではアバターをロストするだけだったが、明日からは何かの拍子でリアルに命を奪われかねない。ぶっ飛んだ話とは思いたいが、それができない。

 「美桜……」

と、流雫は地球にいない少女の名を呼ぶ。……僕はどうすれば、澪を護れる?

 そのまま30分程経っただろうか、突然流雫のスマートフォンが震えた。EXCの通知だった。

 流雫は慌ててイヤフォンを耳に挿し、ログインする。再作成する必要が有ったアバターは保存したものをロードし、ゲームサーバにアクセスした。


 「よくやったよ、澪」

と詩応は言う。ニュースを目にするなり、彼女は澪が遭遇したと直感し、端末を耳に当てたのだ。

 少し話をした後で、2人はEXCにログインする。並んだ2体のシスター、ミスティとフレアがゲームフィールドに転送されると、様々な場所で小さな戦闘が起きているのが判る。これが本来のEXCだ。

 2体はクリーチャーとの戦闘を避け、フィールドを動き回る。このフィールドで探し回っても、今日の事件に関わることは何も得られないだろう。

 15分ぐらい経ったか、2体のシスターの目の前に突如、ピクセルの塊が現れる。人間の形をしたそれが光を失うと、2人は同時に名を呼ぶ。

「流雫……!」

 昨日、澪のアバター……ミスティを護ってロストした流雫のアバター、ルーン。しかし、ルーンはレーザーガンをミスティに向ける。

「な……!」

無意識に声を上げる詩応に、澪は

「流雫のアバターもゾンビ……!」

と、焦燥感を漂わせて続く。

 PvPでもない限り、ユーザー同士の戦闘はできない。だからこれは、流雫じゃない。流雫のアバターだが、中の人が違うなら容赦しない。

「あたしを処刑しようとしてる……」

そう言いながら澪は、画面上に置いた指をスライドさせる。

 逃げる間合いを確保しようと後退りするミスティ、その主はキルされる気はしなかった。

 昨日は囮として動き回り、攻撃を掠らせつつレーザーガンで反撃していたが、あれはリアルで見せる本来の流雫の動き方ではない。1発が生死を分けるだけに全弾回避は最低条件、故に本来はもっとスピーディーなトリックスター。

 しかし、彼はMMOだからとそのスタイルを半分封印していた。否、身体能力差が無いから封印せざるを得なかった。

 一緒に戦ってきたから、流雫の動きは全て判る。それだけに、目の前のアバターは例えるなら流雫の劣化コピー。屈するワケが無い。

 AIにとってはこれ以上無いほどの皮肉、と思いながら、ボブカットの少女は懐に飛び入ろうとするアバターを避けながら、レーザーガンをセットする。

「流雫のアバターを乗っ取ってまで、あたしを処刑したいの!?」

思わず吐き出した言葉に、詩応の背筋が凍る。狙われていることより、恋人のアバターを悪用されていることへの怒りが強い今の澪は、詩応にも止められない。

 ミリ単位で指を滑らせる澪がシュートボタンを押し、それに詩応が続く。紅と碧のシスターが、ネイビーのスーパーヒーローの体力を削っていく。

 だが、体力が強化されている。それに、本来は1発のダメージが加速度的に増えるが、この敵にはそれが適用されていない。そう、澪を処刑するためだけにモディファイされていた。

 澪はウェポンを持ち替えようとボタンを押す、しかし詩応に通知が飛んだ。

「ミスティがヘルプを求めている」

 苦戦する時にヘルプボタンを押すと、フォロワーやコミューンのメンバーにヘルプを求めることができる。澪は隣のボタンと間違えたが、常にボタンの位置を見ながらプレイしているハズの澪にとっては珍しいミス。

 リアルなら命取りになりかねないが、幸いにもこれはゲーム。だが、体力チート化されたルーンとの戦いは勝てないように設定されてあるハズ。それでも、最後まで抵抗するのは最早プライドの問題だった。


 初戦でキルされた為、全てが初期状態のまま。だが、流雫にとっては何の影響も不都合も無い。手にする武器は、やはりレーザーハンドガン。ゲームとしてはもっと強いウェポンの方がいいのだろうが、それで十分。

 ……通知は、澪からの助けを求めるものだった。フォロワーやコミューンにヘルプを求めるボタンが有り、それが押されたのだ。

 最初に立ったフィールド、その奥で戦闘する3体のアバターに目が止まる。それは澪と詩応、そして……自分?

「……やはりか……」

と流雫は呟く。その声は、詩応といる影響で澪には届かない。

 ……自分のアバターが澪と詩応に銃を向ける光景は、流雫もアドミニストレータAIから敵認定されたことを意味していた。処刑用エネミーとの最後の相討ちは、AIにとって処刑と同義だった。だからロストしたアバターを乗っ取り、唯一のフォロワーの澪を襲うことにした……。

 流雫が走らせるアバターが遠目に映ると、澪は

「詩応さん!流雫のフォロワーに!」

と言い、詩応はそれに

「ああ!」

と返す。昨日、あの戦闘の後でそうする気でいた。しかし、その前に流雫がロストしたままログアウトしたから叶わなかった。

 フォロー可能なまでの距離にルーンが近寄ると同時に、詩応はフォローボタンを押した。流雫もそれに続く。

「やはり僕も敵か……」

と言った流雫は、昨日まで操っていたアバターに銃を向け、シュートボタンを押す。

「ダメージは増えないわ!」

澪の言葉に、流雫は2日連続のキルを覚悟した。流石に澪はいい顔をしないが、そうでもしなければ澪のアバターを護れない。

 レーザーガンはエネルギーを使い果たした。近接用の武器を持たないルーンは、肉弾戦で戦うしかない。或る意味スーパーヒーローらしいが、与えられるダメージは更に弱く、2人の気休めにもならない。

「昨日と同じ方法じゃないと……」

と言った流雫に、澪が

「今日はあたしが護るわ!」

と声を被せる。ゲームとは云え、昨日のように泣くのだけは避けたい。

 スナイパータイプのレーザーガンからレイピアに持ち替えたミスティに攻撃命令を出す澪、

「アタシも!」

と声を上げ、それに続く詩応。総プレイ時間は1時間程だが、初心者らしからぬ戦い方をしている2人が攻撃しやすいようにと、本来の標的ではない自分に目を向けさせる流雫。

 エネミーの体力ゲージは少しずつ削れていくが、3体のアバターもダメージを受ける。中でも最弱、そして最もリーチが短くゼロ距離での戦いを強いられるルーンは、誰より攻撃を受けている。掠った程度でも加速度効果で、体力は既に残り3割を切っている。

 ……自分の動きは自分が誰より判っているだけに、回避するのは意外と簡単だ。だが、その挙動すら反映されるのなら、再度こう云う事態に陥った時の戦いやすさを鑑みて、黙って攻撃を受けた方がいい。

 シュートボタンを押しながら、流雫は左手でノートに走り書きする。そしてペンを持ったまま、指の関節で画面に触れて微調整する。

「流雫、下がって!!」

その声に流雫は従い、ルーンを後ろに下がらせる。その視界を碧いケープが奪う。

 本来は中距離に強いスナイパータイプのレーザーガンだが、そのエリアの狭さ故に至近距離でしか使えない。単に取り回しが悪くなるだけだが、そう云う不利になる部分だけは反映されている。

「理不尽でも勝たなきゃ……明日が来ないから」

澪の言葉が全てだった。3人の明日は変わらない、しかしEXCで戦っているアバターに明日は来ない。

 ゲームとは云え、3人で遊ぶための分身。昨日のルーンのようなロストは避けたい。だから、何としてでも勝つ。それしか無い。

 ミスティが銃を構え、撃ち続ける。フレアもマシンガンを撃つ。ルーンはミスティに護られている。

 これも澪の戦略なのだが、自分だけ攻撃しないワケにもいかない。流雫は視点を回転させ、何か使えるものが無いか見回す。……一つだけ有った。

「澪、伏見さん……」

と流雫は言う。それに効果が有るのかは知らないし、有ったとしてもアバターをロストする可能性も有る。何より、AIが戦い方を学習するなら、この方法は二度と使えない。色々リスキーだが、賭けるしか無い。

 澪も詩応も、それに乗る。3人は同時に、画面に置いた指を滑らせる。静電気によってボタンが反応し、アバターに命令を出す。逃げろ、と。だが、エネミーはその3体に向かって走り出す。

 ……逃げられないことは判っている。ただ、エネミーを中心にバトルエリアが決められるのであれば、エネミーに追わせることでエリア移動ができる。逃げて、追わせることで、狙いに誘き寄せ、逆転の糸口を手に掴む。それが作戦だった。

 たった一つの勝機、それはビルの壁に衝突して大破した白いタクシーだった。設定上は乗り捨てられたオブジェクトで、可動の障害物として使える。しかし、問題は動かせることではない。

 フレアはミスティの隣に立ち、その背後にルーンが立つ。逆三角形のフォーメーションの後ろにはタクシーが有る。

 ……エネミーの足がドット単位で動いた。牽制せず、ミスティに飛び掛かる。

「伏見さん!!」

流雫の声に呼応し、詩応はアクションボタンを押した。フレアはミスティの腕を引っ張り、ルーンはその背中を押して走る。

 1秒前まで3体のアバターがいた場所にエネミーが突撃し、そのままタクシーに体当たりする。そのエフェクトに処理落ちを起こすスマートフォンの画面を、澪は何度かタップする。

 エネルギーが残り僅かだったミスティのレーザーガンが光線を放つ。フレアもマシンガンで応戦する。しかし後者が狙ったのは白い車体だった。

 轟音を伴い、タクシーが爆発して炎を上げる。

 車でも焼け焦げた物と、そうでない物が有った。そして後者を燃やすことができるなら……それに賭けただけのこと。戦闘力で敵わないなら、使えるものを使うだけ。

 しかしオペレータAIは、学習していない流雫の癖に翻弄されている。タクシーの爆発によって、エネミーの体力は殆ど空になっていた。

「呪われたアバター……あたしが救済してあげるわ!」

そう言った澪の分身は、レーザーレイピアを昨日までの流雫のアバターに突き刺した。体力ゲージがゼロになったエネミーは、遂に倒れる。

 ……エネミーと同一の見た目のルーンは、キルされなかった。そしてミスティとフレアも、生きている。3人は同時に溜め息をつく。

「ルーンを……護れた……」

と詰まり掛けの声で呟く澪。リアルでは彼女と300キロ近く離れた詩応が

「……よく思いついたよ」

と続く。それに流雫は答える。

「僕は弱いから、こうするしか無かったんだ……」

 勝ったからと云って、経験値が入るワケでもない。これも特殊エネミーで、ただ戦績が増えるだけだ。だが、流雫はそれすらも付かない。自分がロストしたアバターだったからか、最後は攻撃していないからか。尤も、初キルや初勝利がデータ上幻に終わっても、それはそれで構わないのだが。

「でも、僕は強くならない」

と流雫は続けた。

 この戦い方すら、AIに学習されているハズだ。敵うワケがない正攻法しか、思い当たる残された戦術は無い。

 どんなにレベルアップしたとしても、その能力値を遙かに上回るアバターを投入される。それは即ち、居合わせた澪や詩応のアバターまでキルされるリスクが高くなる。逆に弱いままなら、2人のアバターは生き残れるハズ……。

 悠陽が聞けば、あまりに邪道だと言われるに違いない。しかし、それだけが今、リアルとは勝手が違い過ぎるゲームで生き残るために思い付く、唯一の戦略だった。


 同時にログアウトした3人は、メッセンジャーアプリのグループ通話でリンクする。普段は使わないが、何かの時のためにと以前から澪が設定していた。掌のスマートフォンが熱いのは、プロセッサがプレイ中常にフル稼働していた証左だ。

「これで判った。僕はスタークと同類……」

「ロストした次の日に、まさかあたしを襲うとは……」

と澪は言う。戦闘開始の時点までは流雫の唯一のフォロワーだったから、狙われるのは当然だった。

「ただこれで、伏見さんも標的になり得る……」

と言う流雫に、詩応は

「それはそれ。アタシはアンタたちの味方だからさ。ゲームの世界だろうと」

と言った。

 姉の死の真相を暴くために一緒に戦った2人には、一生頭が上がらない。だから、2人のためにできることは何でもする、詩応はそう決めていた。


 病院の消灯時間は早い。澪が帰った後で点滴を打たれる悠陽は布団に頭を隠し、SNSを開く。自分を襲った男の詳細が出ていないか、気になっていた。

 ……犯人は、小さなアパートに住む30代後半のフリーター。常にダブルワークで、1日まるごと休日なのは年間一桁。部屋にPC等は無く、遺留品のスマートフォンにもゲームは皆無。それどころか、二次元コンテンツそのものに全く興味が無かった。

 ……EXCのユーザーどころか、寸分も触れなかった人が、何故EXCのAIを神と崇めるのか。それが何よりも疑問だ。

 正常な脈を取り戻した心臓への負担を減らす必要が有る以上、今日はもう寝るべき。それは判っているのだが、如何せん眠気は駆逐されていた。

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