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第14話 高校生の恋愛事情・1

 昼休みになると教室内が騒がしくなる。俺は親友の相沢夕羽斗と真っ直ぐ売店に向かった。一応弁当は持ってきているが、少し量が足りないのでパンと牛乳を買う。夕羽斗も同じようにパンと牛乳を買っている。売店前で一年の水鳥と輝に遭遇し、一緒に弁当を食べようということになった。輝はいつもの大きな弁当の他にパンを三個持っている。水鳥も同様である。成長期とはいえ、それを全部食べるつもりなのか。

 教室は騒がしいので天気もいいし、中庭で弁当を食べることにした。


「いやあ、昨日会った男との体の相性最悪だったんだよねえ」

「夕羽斗もなんだ。僕の方も最悪だったよ」

「水鳥も夕羽斗も遊びすぎなんだよ。不特定多数の人となんて、僕は考えられないよ」

「俺からみると輝も同類なんだけどな」

「え、でも僕恋人としかやんないよ」

「その恋人って何人?」

「十人。体許してるのは上位三人ね」

「十分遊んでるよねえ」


 弁当を食べながらする会話なんだろうか、これ。いきなり、体の相性が最悪って。それはないだろう。俺にそういう経験がないから余計に分からないのかもしれないけど、それにしたってだらしなさすぎないか。もっとこう、自分を大事にしたらどうなんだろう。俺は翔特製のおにぎりバスケットを開けて、たらこのおにぎりを頬張る。今日は話の流れが悪いな。生々しい体験談とかに話がいかなければいいけど。ごはん時間にあんまり生々しい話は聞きたくないものである。そもそも、話についていけないし、ご飯をおいしく食べられる話でもない。


「僕ねえ、輝のランキングについて興味あるんだよね。どんな人をランキングに入れてるの?」

「もちろん、僕のことを好きでいてくれる人だよ。恋人だからね」

「で、三人と体の関係があるわけだ」

「あー、それが今一位がいないから、実質二人なんだよね」

「その二人って誰なの?」

「その手にはのらないよ、水鳥。そんなこといえないよ」

「何か、いえないってところが怖いな。相手は知り合いっぽい」

「秘密秘密」


 高校生の世界なんて大人に比べたら狭いものだろう。その中で輝がいえないというのだから、知り合いの可能性大である。そんな身近な人で輝を抱きそうな人っているだろうか。考えてみるが、想像をして少し怖くなった。身近な人だった場合、その人は輝とそういう関係にあることを隠して、何もないフリをしているのだ。大人ってそういうことが出来るものなのか。二個目のおにぎりの味が一瞬分からなくなった。全く俺たちに縁も縁もない人物と付き合ってるなら、輝は隠さないと思うし。やっぱ知ってる人なんだろうなあ。怖っ。


「で、その空いたランキングに入れたい人っているの?」

「この人いいなって人はいるよ。好みのタイプの人。夕羽斗はいないの、そういう人」

「好みのタイプっていうか憧れの人はいるよ。相手にもされてないけどねえ」

「へえ、夕羽斗みたいな美人相手にしないんだ。おかしくない?」

「まあ、仕方がないよねえ。そういう水鳥はいないの、狙ってる人」

「狙ってるっていうのはちょっと違うかな。好きな人はいるよ。振り向いてくれたら遊ぶのやめるんだけどなあ」

「やめられるの?」


 俺は思わずつっこんでしまった。水鳥の男遊びは激しい方だと思う。水鳥は親が仕事で外国に行っていてうちに預けられているんだけど、結構抜け出していなくなる。うちの親も忙しくて滅多に帰ってこないから、実質ひたきが親代わりになってる。俺が今までどれだけ誤魔化してきたか分かってるんだろうか。水鳥にしろ夕羽斗にしろ、そんなに男遊びしたいものなのだろうか。俺にはよく分からない。男と遊ぶのは一向に構わないが、危ない目にあったことはないんだろうか。


「水鳥は好きな人が振り向いてくれたら遊ぶのやめるんだ。僕はどうだろなあ」

「夕羽斗は憧れの人が振り向いてもやめないの?」

「どうだろねえ。分かんないかなあ、そうなってみないと」

「ふふ、意外と一途って可能性もあるんじゃない?」

「かもねえ。輝は恋人いっぱいいるけど初恋っていつ?」

「結構前。あっさりフラれたけどね」

「誰だよ輝をフったヤツ。こんなに可愛いのにな」


 水鳥はむっとした表情で三つ目のおにぎりを頬張った。確かに、輝は綺麗というよりは可愛いというタイプの顔をしている。可愛いタイプが好きなら一発で落ちると思う。というところで、俺は我に返った。こいつら、みんな男にしか興味ないのか。俺はどっちにも興味があるんだけど、それって変なことなのだろうか。だが、この場で聞くのは躊躇われた。男が好きなのが前提で話が進んでいるし、このノリだと前の彼女のことを話題にされかねない。傷口に塩を塗られるのはごめんである。

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