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第18話 僕のランクは・3

 この間、翔さんと話をして、輝のことを少し知れた気がしていた。僕自身の気持ちも確かめたし、後は勇気だけである。返事はもう決まっていた。輝が遊んでいたとしても、僕と付き合ったところでやめなくても、僕の気持ちは変わらないと思う。いつ、返事をしようか。そんなことを考えていると、涼がふらりと訪ねてきた。僕が円城寺家に遊びに行くことはよくあるが、涼が僕の家に来ることは珍しい。輝の話だろうか。


「涼、お茶入れてきたよ。緑茶しかなくてごめんね。うち、紅茶は常備してないんだ」

「ああ、気にしなくていいよ。ちょっと話がしたくて来ただけだし」

「そっか。話って何かな。わざわざうちに来るなんて珍しいよね」

「ああ、だいたい想像はついてると思うけど、輝のことだよ。荘介、輝から告白されたでしょ」

「そうだけど、情報源は輝本人?」

「まあね。で、聞いておきたいんだけど、輝のランキングに入る覚悟は出来てるの?」

「ランキング?」


 何のことだろう。僕にはよく分からなかった。涼は聞いたことなかったかと呟くと、お茶菓子のしょうゆせんべいを手に取る。輝も翔さんもランキングという言葉は口にしていなかった気がする。それは輝に関する需要なことなんだろうか。それを伝えにわざわざ来たのだから重要なことなのだろう。ランキングとは何なのか、全くの謎である。一方、ばりばりとせんべいを食べ、緑茶をすする涼。僕は少しだけ不安になった。


「ランキングだよ。輝は恋人をランク付けしてるんだ」

「それは、輝にはランク付けするだけ恋人がいるってことでいいのかな。認識間違ってない?」

「そういうこと。一応、ランキングは十位までだよ」

「え、恋人が十人もいるの?」

「そうなんだよ。ランキングに入れないヤツもいるらしいから、遊んでる程度のヤツはまだ他にもいるはずだよ。で、そのランキング十位以内でも、体を許すのは上位三人だけとか、輝なりの細かい基準があるんだ」

「そ、そうなんだ。もしかして、ものすごいサバイバルなんじゃ」

「荘介は耐えられるかい。もし、四位にランク付けされてしまったら、抱くことも出来ないんだよね」

「抱きたくて付き合うわけじゃないけど、それは何だかなあ」

「男ならしたくなるって」


 なるだろな、とは思う。けど、ランク付けしないといけないほどの人数の恋人ってどうなんだろう。僕はその中に飛び込まなければならないようだ。僕が輝のランキングどこに入れられるのか、それは全くの未知数。体を許すのは三位までということは、キスをするのも何位までとかいう基準がありそうな気がしてならない。どうせ付き合うならキスくらいはしたいし、出来るなら抱きたい。


「確かに、したくなるだろうなあ」

「そのランキングに入れられても大丈夫って思えないなら、輝と付き合うのはやめた方がいいかもしれない」

「僕はランキングどうこうより、輝を大事にしたいよ」

「あんな輝でも大事に出来る?」

「あんなって、それは輝に失礼でしょ」

「返事は一旦保留にしたって聞いたけど、それは何で?」

「いきなり告白されて、すぐにはいとはいえないよ。もしかしたら、輝の人生に影響するかもしれないんだし」


 付き合った相手によって変わる人もいる。僕と付き合って輝が少しでも変わるなら、それは輝の人生に影響を与えたことになる。そういうことを考えたら軽々しく付き合おうと返事は出来なかった。それは僕の考え過ぎなのかもしれない。輝は僕と付き合ったくらいでは何も変わらないかも知れない。けど、可能性があるならしっかり考えておくべきだと思った。涼は二枚目のせんべいを食べながら、緑茶をすする。


「荘介はちゃんと輝のことを考えてるんだね。安心したよ」

「そりゃあ、好きな子のことはちゃんと考えるよ」

「いつから輝のことを?」

「結構前だよ。ずっと可愛いなあとは思ってたよ」

「そっか。輝にゴリ押しされて仕方なくとかではないんだね。荘介は押しに弱いから強引に迫られたのかと思ってたよ」

「違うよ。輝はゴリ押しなんかしてないよ」

「じゃあ、話したいことも話したし、俺は帰るわ。輝にいい返事してやってよ」

「うん、分かったよ」


 涼はいつものように自分のしたい話だけすると帰って行った。涼は涼なりに輝のことを思って話してくれたんだと思う。何も知らないでランキングの話されたらえってなっただろうし、混乱していたのは間違いないだろう。翔さんはあえてランキングには触れず、遊んでいるとだけいっていたけど、それはそれで僕を驚かせないためだったのかなあと思う。僕はすごい涼と翔さんから気を遣われているようだ。ただ、不安なのは輝のランキングである。僕はどうなってしまうんだろう。

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