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第64話 たった一人の


 「......ここは?」


 全身が濡れている不快感と、どこかで頭を打ったのか頭痛がひどく、さらに手足の骨折の痛みで目が覚めた。


 痛みをこらえて上半身を起こす。


 「……あのワニを倒した場所か」


 もう少し、体力を回復して色々考え__


 「ヒロユキさーーーん!」


 「ぐぇ」


 見慣れた少女が全速力で走ってきて勢いよく抱きしめてきた。


 ……めちゃくちゃ痛いのだが……


 「良かった、良かったです!死んでない!ごめんなさい、まさか、まさか山菜の依頼でこんなになるなんて」


 ユキは顔をくしゃくしゃにして泣きながら言ってくる......



 そうか......



 「......泣くほど俺が成長してなかったのか」


 これからは山菜依頼も一人でこなせるように頑張ろう。


 「い、いえ!そう言う事では無くてですね!?うーん……ま、ヒロユキさんらしいですね、さぁ、帰りましょうスロー村へ!……あれ?他のお二方は?」


 「......解らない」


 冒険者という職業上、死ぬ事は珍しいことでは無い。

 今ここで自分が生きているのも奇跡的みたいなものだ……ユキはそれ以上追求する事は無かった。


 「そうですか……では、帰りましょう」






 「……あぁ」







 依頼は失敗。


 だがスロー村へ帰るとそれどころの騒ぎでは無かった。




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