「はぁ…はぁ……」
「大丈夫かキーさん!」
「あぁ!まだいける!」
あれからどれくらい経ったのだろう。
全身が痺れ呼吸するのも意識しないと出来ないくらいキツくなってきた。
転送魔皮紙から魔力回復を活性化させる《シクランボ》と《ルモン》という果物を特殊な調理法で作成した液をがぶ飲みする。
「まだまだ!」
私がクリスタルの鱗を焼き斬り。
剥き出しの肉の部分にオリバルが攻撃をしてダメージを与える。
そして、私とオリバルが【限界突破】により無理矢理動かしている筋肉の繊維や骨折をクロエの回復魔法により治しながらコンビネーション攻撃を続ける。
言葉にするとかなりよく聞こえるが1番問題なのは相手が“規格外の大きさ”なのだ。
まるで街一つくらいある大きな畑に1人でクワを持って耕しているかの様に……
「ぜぇ……はぁ……」
「キーくん……」
「大丈夫だオリバ……まだ、まだ!」
クリスタルドラゴンは謎の鎖により拘束されている!その間に少しでも早く____
バチン
そう思った矢先、何か大きな物が引きちぎれ弾ける音が聞こえた。
「ま、まさか!」
バチン……バチン……バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ!
そこまで来ると目視でも確認出来る。
鎖が引きちぎれたのだ!
「おいおい、キーさん……」
あのクロエからか弱い女の声が聞こえるほどまずい状況。
「総員!退避!!!!」
「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
バカバキバキと古い巨大な歯車が息を吹き返し力任せに回り出す様な音を轟かせながらクリスタルドラゴンは埋まっていた大きな足を出し地面から出てきてその全貌が明らかになった。
立派な足には大きな爪と鱗、お尻から生えている大きく刺々した尻尾は何キロも先まで続いている。
さらに____
「ーーーーー!!!!!!!」
「な!?」
「まじかよ!」
「うそだろ……」
クリスタルドラゴンが声のない咆哮を放った瞬間、背中から大きな……いや、言葉じゃ表せない程の巨大な翼が出現した!
そして羽があると言う事はつまり____
「おいおいおいおい!この巨体っで空を飛ぶって言うのかよ!?」
「ーーーーーーーーー!」
クリスタルドラゴンが翼を羽ばたかせると、辺り一面に竜巻が何個も発生し、近くにある物全てを飲み込み武器と化す。
この光景を例えるのなら災害……その言葉が正しいだろう……
竜巻の中に大きな木や岩も軽々しく浮いてクルクルと回っているものがそこら中に発生しているのだ。
「危ない!!!」
私は近くにいた冒険者パーティーに叫んだが彼らは後ろから飛んできていた岩に気付かずぶつかり自らも竜巻の中へ吸い込まれていった。
彼等の安否は確認しなくても解る……竜巻に巻き込まれた瞬間身体は細切れになり一瞬で竜巻が赤く染まったのだから……
周囲の竜巻が次々に赤くなっていくのが確認出来る。
一体どれほどの人間を………くそ!!!!
「くっ!!!」
周りのそんな光景で気を抜いてしまった!
「キーくん……!」
巨大な岩が飛んできたのをオリバルが粉砕する。
「すまない!」
「あぁ……」
「キーさん!オリバ!」
クロエも此方に来て3人で背中合わせになり気付く。
「こんな事が……ありえるのか!?!?」
まるで意思を持っているかの様に赤い竜巻が私達の周りに寄ってきて退路を絶ったのだ!
「なぁキーさん、一個、提案があるんだがよ」
「なんだ?」
「俺とオリバが特攻して竜巻を1つ消す、その間に一人で逃げてくんね?」
「は?」
クロエの言葉にオリバルも言葉に出さないが同意している。
彼女はいつも考えに考えて提案する、だがそんな彼女が言ったのだ……“一人で逃げろ”と……
「そんな事出来るわけ__」
「__行くぞオリバ!【限界突破】!!!」
「うん……!」
「ま、まて!!」
悪い意味で彼女のタイミングは完璧だ。
ここで1つ消えれば全力を出せば結界の外まで1人で出れる。
だが目の前で親友達を見捨てるのか?
だがここで止めれば3人とも死ぬ?
魔皮紙は何かあるか?
時間が足りない!
いっそ私も一緒に死ぬ。
娘はどうする?
まさかクロエはそれを思って私を!?
だがアイツらだって今後の未来がある!
なんで身体は動いていない?
自分の意思はどれなんだ!
頭の中で様々な考えが一瞬で入ってくる。
諦める?
思い出すのはあの時の感情____
生け贄志願者リストに我が妻の名前があり、絶望したあの時____
「もう遅い」「間に合わない」「知りませんでしたじゃ済まない」
あの日、私は全てに絶望した。
あの時の私は諦めた。
あの時はもう動いても無駄だった!全て終わった後だった!
だが今は!!!!!!!!!
諦めない!
頼む!神が見ているのなら今だけ......今だけでもいいから!力を貸してくれ!
【良かろう】
頭の中に響く一つの魔法の言葉。
諦めない!!
「【目撃護】!!!」
私の盾が光を放ち、黄金の装飾が華やかに姿を現した。
それはまるで神々の贈り物のように、その輝きは周囲を包み込み、この瞬間は、まさに魔法の頂点。
「もう、私の目の前で大事なものを失ってたまるか!!!!!」
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