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第181話  強さを求めて辿り着いた場所!

《別れて1時間後》


 俺は、みんなの見えないところで座り込み、気持ちを落ち着けてから、地図を片手に町を歩いていた。


 「えーっと……貰った地図だと、ここら辺にあると思うんだけど……」


 もらった地図は魔法で動くタイプの簡易ナビみたいなもの。元の世界で言うならスマホの地図アプリに近い。現在地も向いてる方角もわかるのが地味に便利。


 「なんだろう……ペラペラな紙の上で魔法が動いてるの、すごいはずなんだけど……すごい既視感……」


 そう、スマホ地図を見てる時の感覚にそっくり。違いといえば、この紙は折りたたんで持ち歩けるところかな? ただしこの地図、町の外に出たら反応しないらしい……うん、めちゃ限定的。


 地図の目的地には、こう書いてあった。


 「えーっと……りゅう、が……道場? “龍牙道場”?」


 聞くところによれば、そこは“強くなりたい人たち”が集まる場所――そう言われているらしい。


 どうしてこの道場を知っているのかというと――


 「強くなりたい」


 たまこさんと話していた時、ポロッとそう言ってしまったのだ。


 あの時、自分にもっと力があれば。子供たちに、怖い思いをさせずに済んだ。もっと強ければ……奴隷にされることだってなかった。


 「あの時も、黒騎士を呼ぶ魔皮紙があったから救えた。この前も、代表騎士さんが洞窟にいなければ……2人とも死んでたかもしれない……」


 結局、全部“運が良かった”だけ。


 そんな運、これからも続くとは限らない。


 だからこそ、俺は強くならなきゃいけない。リュウトくんも、ヒロユキくんも、きっと頑張ってる……俺だけ、守られてばかりじゃダメなんだ。


 その気持ちに応えてくれたのが、たまこさんだった。


 「……なんでも、たまこさんの知り合いがいる道場らしいんだけど」


 地図に従って町の外れへ進んでいくと、人通りがほとんどなくなり、静かな通りにたどり着いた。そこに、ぽつんと小さな木の古屋が現れる。


 「え、えーっと……あ、あれれ〜? おかしいぞ〜? ……じゃなくて、たまこさん、もしかして地図渡し間違えた……?」


 俺の目の前にあったのは、“道場”と呼ぶにはあまりにも貧相な建物。


 屋根の上に掲げられた、風に揺れる木の看板。


 そこには、こう書いてあった。


 ――《うまかっちん》


 ……うん、わかる。何となくだけど、わかる。


 前の世界でもよくお世話になった雰囲気だ。


 「……居酒屋だね、これ」


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