《アオイがユキちゃんと居なくなってから数日後》
「ほぅ?」
シルクハットを被った奴隷商人の幹部は、期限が来たためお金を受け取りに来たのだが――
「どうやら、何か厄介ごとの様ですね」
家の前にある老人の死体。
死後から数日経っているため、腐敗臭が凄まじい。
「エス、警戒をしといてください」
そう言うと、幹部の後ろに漆黒の騎士が降り立つ。
「……」
「奴隷マスターの反応の場所を見るに、どうやらこの老人は契約を移した様ですね。家の中から反応があります」
「殺して奪ったのか?」
「いえ、奴隷の契約は例え相手が死んでいたとしても有効です。
殺したところで私たちが解除しない限り『呪い』により、無意識に死体まで帰って来てしまうでしょう」
「そうか」
幹部は家のドアの前まで来る。
「っ__」
まだ開けていないのに、先程とは比べ物にならない程の凄まじい腐敗臭が鼻に直撃する。
「……」
家のドアを開けると、まるでここで解体ショーでもしたのかというほどの血が飛び散っており、
床には臭いの原因である肉が綺麗に並べられていた。
「職業柄、死体には慣れておりますが、ここまで必要以上の殺人は初めて見ましたね」
「……ひどいな」
「私でもそう思います」
そして2人は、壁の文字に注目する。
「『貸し一つ』ですか。なんのことでしょうね」
「……」
「しかし、普通なら帰って来ているはず。隠れてる様子もない様ですし、もしかして『あの方』の判断ですかね」
「……」
「となれば、一度アジトに帰り、確認した方がいいでしょう」
「そうだな」
2人は中に入らずドアを閉め、戻ろうとした時――
「下がれ」
「? どうしました?」
エスが幹部の前に立つ。
そして、森の奥の方から“とある冒険者パーティー”がやってきた。
「ここだよっ、“リュウト”っ! 『女神』の反応があった場所っ!」
「あーたんも感じた感じた!」
「こんな山奥に家なんて、誰が建てたのよ」
「待て、お前達……どうやら、とんでもない奴も嗅ぎつけて来てたみたいだ」