「はぁ〜、憂鬱〜」
「そんなに気を落とさないでください」
「だって〜……」
たまこはブーブー言いながら、【ピコナッツミルク】をストローでちゅーっと飲む。
ユキが復活してから数日。
ヒロユキたちはそれぞれ挨拶や別れを済ませ、今後のことを話し合うために、ミクラルのギルドへ来ていた。
ミクラルのギルドは、元の世界で言えば空港に近い。
中には飲食店やお土産屋が立ち並び、観光客のような人々も多い。
この町が他国と違うのは、“転移ポータル”の多さだ。
観光名所が多いミクラルは、他国の都市と多数のポータル契約を結んでおり、
その管理をギルドが担っているため、自然とギルドの規模も巨大になる。
……ちなみに余談だが、ブルゼが討伐された後、ナルノ町の新たな町長は“もぐり”になっているらしい。
「まさか探し求めてた姉が、結婚してて……しかも私より先に幸せになってるんだもん〜」
「会えただけ、良いことじゃないですか。世の中には、探しても会えない人だっているんですよ」
「そうかもしれないけど〜……」
「まぁまぁ……。そういや、私と同じ名前の女の子はちゃんと預けましたか?」
「そっちはバッチリよ〜。アオイ?さんの手紙と一緒に預けてきたわ〜。
姉も義兄さんも、私に質問攻めしたあとで、安心して泣いてたのよ〜。
話に聞いてたけど、本当に家族みたいに扱われてたのね〜」
「ふふ、そうですか♪」
アオイの話になると、ユキはいつも機嫌が良さそうだ。
「……それで、どうする?」
ヒロユキが、静かに本題を切り出した。
「そうですね。まずは確認です。たまこさんは、これからどうするんですか?」
「そうね〜、私の人生の目的の一つが“姉に会うこと”だったからね〜。
いきなり新婚さんにお世話になるのも気が引けるし……あなた達のパーティーが良ければ〜?」
「思ってもみないことです! ヒロユキさん!」
「……構わない」
「な〜にが“構わない”ですか! 嬉しいくせに♪」
ユキはテンションが上がって、ヒロユキの背中をバンバンと叩きながら笑顔を見せる。
もう、完全に元気を取り戻しているようだった。
「……」
「いててていててっ、フィホユヒしゃんほっへふめらないへー!(ヒロユキさん、ほっぺつねらないでー!)」
「ちょっと〜、もうこれ以上、私の目の前でイチャイチャ見せないで〜」
「……イチャイチャじゃない」
「痛かったです……。さて、じゃあ行く所は決まりですね!」
「……? 決まってたか?」
「いえ〜?」
「何言ってるんですか。あと1人のパーティーメンバーを――迎えに行きましょう!」