《リュウトパーティー テント内》
一見、外からはただの質素なテント。
だが中に足を踏み入れると、そこは魔法で改造された“豪邸”のような空間が広がっていた。
入り口の人一人分ほどのドアを開けると、まず目に飛び込んでくるのは中央リビング。
暖炉の火が優しく揺れ、ソファーが円を描くように配置されている。
その奥にはカウンターとキッチンが繋がっており、反対側には階段があり、そこを上ればパーティーメンバーそれぞれの個室が並んでいる。
「私はキール様と部屋でゆっくりじっくり話すからあんた達はここで話しなさい?」
「いや、私は____」
「いいからいいから♪キール様♪」
アンナはそういって、キールの腕に絡み付き胸を当てて部屋まで連れて行った。
「行きましたね……」
「うんっ、あの人には聞かれたくない話もあるからっ、アンナは察してくれたっ」
「そう言うことですか?完璧な演技すぎて分かりませんでした」
「ふぁ〜あ……あーたん眠い……」
「うんっ、あーたんリュウトを探してくれたのありがとっ、部屋でゆっくりしててっ」
「ふぁ〜い」
眠そうにあーたんは階段を上がって行き、リビングにはアカネとみやの2人だけになる。
「では、話を」
「うんっ、アカネがアバレーに行った後、私たちはアバレーへの入国申請がいつまで経っても降りなくてっ、ミクラルから一度グリードに戻ったのっ」
「アバレーへの入国審査は獣人は早く、人間は遅いのが常識みたいですからね」
「うんっ、それで直接グリードの女王に頼んでみたのっ」
「はい」
「色々話して裏ルートで行くことになってその時に……」
みやはそこで言葉が詰まる。
「その時に?」
「途中で……その……私がちょっとヘマをして殺されそうになった時、リュウトがあんな姿になっちゃって……」
「みやさんが?相手は魔物ですか?」
「ううんっ、違う……人間……悪い人間……」
「そうですか……」
アカネはそれ以上は詳しく聞かなかった。
「あの姿になったリュウトは周りの人間を全部殺して、それでも止まらなくて私達まで襲い始めて……」
「……」
「でもその時、白い神父さんが現れてリュウトを無力化してくれたのっ」
「白い神父?」
「うんっ、その神父が言うには――リュウトは“女神の力”に食われてるって」
「女神……?」
「それでね、この薬を渡されたのっ。“女神の力”を抑えるためのものなんだって」
そう言いながら、みやは手のひらに小さな魔注射を取り出して見せる。
「これ、アカネも持っててっ。もしもの時のために」
「……はい、わかりました」
アカネは真剣な表情でそれを受け取り、そっと懐へしまった。
「つまり、また暴走する可能性があるんですね?」
「うんっ……それで私達は今リュウトの力をどうしよ?ってなってるっ」
「そうですか……タイミングが悪いですね……」
「?、タイミング?」
「【山亀】が動き出し、世界樹ウッドに一週間後到達するという情報が入りました」
「えっ!?あの山亀がっ!?」
「知ってるんですか?」
「うんっ……ま、まぁね……」
「?」
「とにかくっ、そのことも詳しく話してっ!」
アカネは今まで離れていた時の事を全て話した。