《現在》
「……リュウト」
「ヒロユキ、魔神の居場所が分かったよ」
城の外、少し離れた所の森の中でリュウトを待っていたのはヒロユキ。
「……そうか」
「アオイさんは俺たちに言ったのは居場所を探すとこまでだよね?」
「……あぁ」
「アオイさんは任せてって言ってるって事は援護は来なくていいって事だよね?」
「……そうだ」
リュウトは悩む。
――本来なら助けに行くべきだ。あのトミーとやり合っているとなれば、尚更。
でも、アオイは「任せろ」と言った。
その覚悟は、相手の強さを理解した上での言葉。
「……“神の島”って、聞いたことあるか?」
「……一度だけ。王国会議――各国の王が集まる会議が、神の島で開かれると」
「それだ!」
「……だが、それ以上の情報はない」
「逆に、その会議に参加できる王なら場所を知ってるってことだよな……」
リュウトは口を噤んだまま、険しい顔で地面を見つめる。
「……今のグリードの女王に聞くのは無理だ。他の王と話そうにも、俺たちは“勇者”であることを隠してる。ただの冒険者扱いじゃ、まともな情報に辿り着くまでに時間がかかる」
「……」
「ヒロユキ?」
ヒロユキはしばらく無言だったが、やがてぽつりと問い返した。
「……もし場所が分かって、行けるとしたら……アオイを、待つか?」
「……それなんだけど、ちょっと考えたんだ」
「……?」
「六英雄が“俺たちを殺しに来る”ってことは、魔神と手を組んでる可能性もある。仮にそうじゃなくても、あの人たちと戦えばこっちは全力を使うしかない」
「……うむ」
「もしその直後に魔神が来たら……立て直す時間すらない。だから逆に考えてみた」
「……というと?」
「アオイさんは、“六英雄全員を引きつけてる間に、魔神を倒して”って……そう言いたかったんじゃないかって」
「……なるほど」
違います。
アオイはそこまで考えてません。
アオイとヒロユキが別々になってから3日、ここまで早く居場所を特定できると思ってもいない。
「むしろ、俺達は早く魔神を討伐できればアオイさんの援護へ行けるから、ここは時間との勝負だ」
「……仕方ない」
「お、何かあるのか!?」
「……ナオミに相談してみる」
こうして、リュウト達は魔神討伐を目標に準備を進めていった。