山亀が飛んだ直後――すぐさまリュウトパーティーが先陣を切って飛び出した。
「流石ヒロユキだな、こんな作戦を思いつくなんて!」
海に呑まれていく魔族の兵士や魔物たち。
混乱のど真ん中へ、彼らは真っ先に突っ込んでいく。
「それでもここからです。何があるか分かりません、油断せずに行きましょう」
「任せろ。そのために最高戦力の俺が居る」
リュウトはレイピアを抜き、敵陣へと突っ込む。
「行くぞ! 覚悟しろ!」
その声に反応し、周囲の敵が一斉に襲いかかる。
「【サイクロンストライク】!」
レイピアが風を纏い、突き出した瞬間――巨大な竜巻が一直線に走り、敵を巻き込み薙ぎ払った。
「【稲妻ハンマーダウン】!」
アカネが巨大ハンマーを頭上まで振りかぶる。
瞬間、槌全体に稲妻が走り、バチバチと空気を裂く音が響いた。
振り下ろされた一撃が地面を叩く――
ズドォォンッ!
爆発するような閃光と衝撃波。
雷は地面を這い回り、鎖のように絡み合って周囲の敵を一斉に貫く。
「あーたーん、きーーっく、ぱーーんち! そのたもろもろ!」
人間形態でチャイナドレス姿のあーたんは連続で突っ込んでくる敵たちを、拳、蹴り、肘打ち、さらにはカポエラの回転蹴りを織り交ぜ、まるで舞うように次々と薙ぎ倒していく。
「みや! 時間は稼いだぞ!」
視線の先――月を背に、風魔法を纏い空中に浮かぶみやが魔眼を輝かせていた。
「『分析』完了。対象の殲滅を開始するっ!」
次の瞬間、みやの周囲に細く小さな針が――千、二千……否、数千万本生成され、音もなく放たれていく。
「!」
「ぐっ!」
「ガッ……!」
魔族も魔物も、突如襲いかかった【死】の正体を理解する暇もなく、短い悲鳴を残して崩れ落ちた。
みやは『分析』で敵の体質を割り出し、それぞれに最適な猛毒を瞬時に針へと生成、打ち込んだのだ。
「いいぞ、みや。後は分析した情報を――」
「うんっ! ホワイト団のみんなに送るねっ」
「あぁ! 行くぞ、道は俺たちが切り開く!」
「はい!」
「はーい!」
「うん!」
リュウトたちは倒れ伏す敵の死体を後にし、迷いなく前線を突き進んでいった。