遠くに見える神の島の海岸には、異様に白い肌の人間に似た魔族と、見たこともない魔物が夥しい数ひしめいていた。
その数は――ホワイト団の何百倍にも及ぶ。
「……」
「流石にバレてたみたいだね、アニキ」
「……コソコソするのは趣味じゃない。やってやろう」
「流石アニキ! 正面突破ってことだね!」
「……そうだ」
山亀――ユキナが近づくにつれ、魔族と魔物たちは一斉に魔法陣を展開し始める。
「へぇ……神の島の魔物は魔法を使ってくるんだ」
「……あちらもやる気らしい。射程に入れば撃つつもりだろう」
「ふーん? ミー達を殺す気満々だなぁ。恐いなぁ」
ジュンパクは呑気にそう言いながらも、ヒロユキを抱きしめ、その顔には薄く笑みを浮かべていた。
「……フッ。ジュンパク、みんなに通信で知らせろ」
「了解♪」
ヘラヘラしていた表情は、通信魔皮紙を取り出した瞬間に一変。声を張り上げ、全員へ告げる。
「{てめーら! 準備はとっくに出来てるなぁ? 作戦αを実行する! 溺れんじゃねーぞ? きゃっハッハッハ!}」
――五分後。
腕を組んだヒロユキが、短く告げた。
「……行け、ユキナ」
合図と同時に、ヒロユキ達の視界は一気に海の中へ沈む。山亀の巨体が、深く潜水したのだ。
その異様な光景は、当然ながら魔族側にも目撃され、陣形に動揺が走る。
__そして。
「!!!!!!!!」
海中から姿を現したユキナが、巨体のままイルカのように海面を跳ね上がる!
「いやっほおおおおおう!」
「……」
ジュンパクのテンションの高い声が響き渡る。
ザッパーーーーーーン!
ユキナが着水した瞬間、巨大なビッグウェーブが生まれ、海岸に並んでいた魔族と魔物をまとめて呑み込んだ!
「そんな所で悠長に待ってるからそうなるんだよ♪ もっと頭を使いなよ」
完全に陣形を崩された魔族たちは、混乱の渦に沈む。
「……これで先手は打てた。次だ」