目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第503話 先手は有利に

 遠くに見える神の島の海岸には、異様に白い肌の人間に似た魔族と、見たこともない魔物が夥しい数ひしめいていた。

 その数は――ホワイト団の何百倍にも及ぶ。


 「……」


 「流石にバレてたみたいだね、アニキ」


 「……コソコソするのは趣味じゃない。やってやろう」


 「流石アニキ! 正面突破ってことだね!」


 「……そうだ」


 山亀――ユキナが近づくにつれ、魔族と魔物たちは一斉に魔法陣を展開し始める。


 「へぇ……神の島の魔物は魔法を使ってくるんだ」


 「……あちらもやる気らしい。射程に入れば撃つつもりだろう」


 「ふーん? ミー達を殺す気満々だなぁ。恐いなぁ」


 ジュンパクは呑気にそう言いながらも、ヒロユキを抱きしめ、その顔には薄く笑みを浮かべていた。


 「……フッ。ジュンパク、みんなに通信で知らせろ」


 「了解♪」


 ヘラヘラしていた表情は、通信魔皮紙を取り出した瞬間に一変。声を張り上げ、全員へ告げる。


 「{てめーら! 準備はとっくに出来てるなぁ? 作戦αを実行する! 溺れんじゃねーぞ? きゃっハッハッハ!}」


 ――五分後。


 腕を組んだヒロユキが、短く告げた。


 「……行け、ユキナ」


 合図と同時に、ヒロユキ達の視界は一気に海の中へ沈む。山亀の巨体が、深く潜水したのだ。


 その異様な光景は、当然ながら魔族側にも目撃され、陣形に動揺が走る。


 __そして。


 「!!!!!!!!」


 海中から姿を現したユキナが、巨体のままイルカのように海面を跳ね上がる!


 「いやっほおおおおおう!」


 「……」


 ジュンパクのテンションの高い声が響き渡る。


 ザッパーーーーーーン!


 ユキナが着水した瞬間、巨大なビッグウェーブが生まれ、海岸に並んでいた魔族と魔物をまとめて呑み込んだ!


 「そんな所で悠長に待ってるからそうなるんだよ♪ もっと頭を使いなよ」


 完全に陣形を崩された魔族たちは、混乱の渦に沈む。


 「……これで先手は打てた。次だ」




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?