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第27話 ダイニングルーム(5)

「勝則にも友達の一人ぐらいいるはずだろう」と達也。「お前たちがそんなにべったり引っ付いていなくてもいいはずだ。」


「さあ、どうかしら」と伽耶。「兄さんに友達なんて聞いたことがないわ。」


「麻衣、あなたは何か心当たりはないの?」と真知子。


「親しい友達はいないと思うわ」と麻衣。「中学2年の変な時期に転校しちゃったから。高校も入学早々、あの騒ぎだし。」


「そうだったわね」と真知子。「今考えると可哀そうだったわね。」


「何言ってるのよ」と麻衣。「私はあの時、反対したわよ。」


「仕方ないだろう」と達也。「教育方針が合わなかったんだ。」


「父さんが兄さんの担任にヒステリーを起こしただけでしょ」と伽耶。「何が気に入らなかったのか知らないけど。」


「あの担任が悪いんだ」と達也。「勝則にはあんな成績でも大したものだといったんだよ。」


「悪くない成績だったわよ」と麻衣。


「だが十分じゃない」と達也。「お前たちとかけ離れてるじゃないか。」


「勝則は勝則よ。一緒にしちゃ可哀そうよ」と麻衣。「特に伽耶と沙耶は異常なのよ。」


「あいつはもっと努力するべきだし、努力できる環境で育つべきだよ」と達也。


「どうかしらね」と麻衣。「今ではすっかりいじけて萎縮してるわ。」


「あいつの性根が腐ってるからだ」と達也。


「兄さんは学校の勉強ができなくても、優しくて感受性が豊かだわ」と伽耶。「それで十分よ。」


「あんな臆病で泣き虫な軟弱者を男とは認めん」と達也。「父親として恥ずかしい。」


「兄さんは父さんのメンツのために生きてるわけじゃないわ」と伽耶。


「父親として言っているんだ」と達也。「ちゃんと社会で生きていけるようにしてやるのが親の責任だ。」


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