タクシーから降りたクナトは門の前で佇む。数多の人々が集まっていた。門はまだ開かないだろう。
人混みに入る気などないクナトはちょっと離れた位置に立っていた。ボーと待つことは慣れていた。
遠くに見える建物は校舎だろうか?のっぺりとした長方形の箱は無機質な空気を垂れ流していた。
その前にある噴水はせめての景観として用意されているのだろうが、逆に建物が如何に機能性しか見ていないのかを証明していた。
噴水の中心には一本の時計塔が時刻を示していた。クナトはバッグから合格者の手引きを取り出し、集合時間を確認する。
まだ時間に余裕があった。凡そ30分ほどだ。
「真面目だね」
「ひゃっ!」
声が後ろから掛かり、クナトは驚きの声を漏らす。
「あら、驚かせましたか?」
「え、あ、ごめんなさい」
クナトは慌てて頭を下げるが、声の主は少しだけ笑い大丈夫ですよと返した。歳は同じぐらいの少女であった。同じ新入生だろうと、クナトは推測する、
手引きにも書かれていた動きやすい服装を意識しているのか、白のスニーカーに続いては明るい青のズボン。上着は水色のポンチョを着ている。
肩で揃えた金髪は絹の様な滑らかさを持ち、その瞳は力強い碧の色をしている。全体的に青く冷たい雰囲気を醸し出す姿にクナトは少しだけたじろいだ。
彼が威圧されているのは相手の雰囲気のみならず、彼女の胸に着いている紋章。そう、彼女がどこに所属しているのかを示す家紋だ。六花とそれを描こう円状の茨は『
冷気操作に長けた超能力である
「
「あ、クナトです」
慌てて頭を下げるクナトにリュースは少しだけ微笑む。
「わざわざかしこまらなくてもよろしいですわ」
「あ、でも…」
クナトは言葉を探す。それにリュースは何も言わずにそっと手を差し出す。
「同級生から、そうかしこまれますと、やり辛いってことですの」
「はい」
お互いに握手を一つ。何か冷たい感覚が掌から伝わる。凍結能力だから、人よりも冷たいかもしれない、と何も言わずに握手をしていると、リュースは少しだけ驚いた様子を見せ、手を引く。
「それではまた後程」
スーと去っていくリュースを見ながら、グーパーと先ほどの感触を思い出すように手を開閉する。
「それ、キモイよ」
後ろから唐突に刺す様な男の声にクナトが驚く。
「へいへい。古いジャケットはお洒落か?」
「えーと」
「あー、みなまで言うなみなまで。似合ってなくても着たい服を着るのはマストだ」
彼でまず目立つは赤髪とその高い身長だろう。ジャラジャラとした飾りの多い服は機能性が見えない。一種の爬虫類に見える程の鱗だらけな姿は奇抜そのものだ。
「よう、俺はカヅチだ」
「く、クナトです」
「へいへい」
委縮しているクナトを見て、カヅチは笑う。そんなに驚くなと、肩をパンと叩き、そして前を向かせる。
「校門が開いたぜ」
「みたいですね」
ぞろぞろと進む人の群れを見て、クナトは慌てて追いかける。その後ろをカヅチは悠々とついていった。