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国立超能力研究センターにて 3

 校門を通った先には受付が設置されている。カヅチに連れられる形で手続きをし、そのまま講堂へと向かう。入学式を行うという。

 入学式と言っても簡単な式であり、儀礼的なもんとはカヅチの発言。

 長々とした所長の話はいかに欠伸を噛みしめるのかという状態でもなっていた。席自由ならば態々、前の方に行く必要性もなく、後ろにいるのもなんだかとクナトは全体の中央当たりで話を聞いていた。


 もしかして、長話ができる超能力かもしれないと頭が真っ白になっていく中で終わり、入学式は閉式へと運んだ。

 軍事的な側面が強いためなのか、来賓などはいないという。電報が来た程度の報告だけで挨拶などはなく、一時間もしないうちに終了した。


「んでさ、クナト」


 入学式も終わり、講堂から外に出るや否や颯爽とカヅチがクナトを呼ぶ。


「お前、クラスはどこなんだ?」

「あ、えーと」


 入試テストの成績でクラス分けされるという。

 あの事件の後、クナトは能力が覚醒した為に中央区に存在する研究センターの支部にて検査を受けていた。そこで検査を受けていたクナトの超能力は既存のデーターベースには確認されていないものであった。

 支部の検査員の勧めでセンターでの受験を行い無事合格した。


「1の特だよ」

「はぁ?…どっちでだ?」

「珍しい超能力なので」


 受かったのは超能力者ゆえだろう。

 常に人不足になりえる現場として、建前として試験は行う。どんなに弱くても使い物にならなくても、4年間育てれば、兵力にはなるだろうという魂胆だ。

 クナトはそれを知らず、受かった事をラッキーと思うべきか、不幸だと思うべきかと悩んでいる。


「へへ、俺も特だ」


 そう言いながら、ガシと肩を組むとグイと持ち上げて歩き出す。


「ちょっ?」

「ケケケ、俺はさ上を目指してぇ」


 キラキラとした紅い瞳は校舎を睨む様に見える。周りが妙にざわつくのだが、クナトは知らぬ顔で乗り切ろうとしている。


「お前は?」

「…僕は知りたい事があるんだ」


 クナトは静かに告げる。それにカヅチは眉を片方だけ上げる。


「お勉強って事か?」

「違うけど…」

「んー、わかんねぇが…」


 バッはクナトを解放する。唐突な解放にクナトは思わず尻もちを搗く。見下す様にカヅチはクナトを睨む。


「俺が一番になる。お前は俺のライバルになるのか?」


 バチバチと小さく雷を鳴らし、カヅチは言う。思わず、小火をうっすらと纏いクナトは睨み返す。


「一番じゃないと知れない情報とあるなら…」

「あーだめだめ」呆れた顔でカヅチは続ける。「ここはライバルになるって堂々と宣言するってとこだろ?」


 肩を大下座に竦めてカヅチは散らした雷を消す。クナトもそれに倣い、小火を消すと立ち上がる。


「もうちょっと闘争心をなぁ」

「えぇ…」


 続けての駄目だしにクナトは呆れた声を漏らした。


「んじゃ、教室に行こうぜ」

「ぎゃ!」


 ガツと再び肩から掴まれ、クナトはカヅチに連れ去られいった。

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