王宮の鐘の音が響き渡り、クラリスとヴィクターは急いでその音源へと向かった。王宮の中庭にはすでに重臣たちや兵士たちが集まり、慌ただしく指示が飛び交っていた。
「どうしたの?」クラリスが駆け寄ると、一人の兵士が息を切らしながら答えた。
「国境付近で緊急事態です!影の公爵の手下たちが大規模な動きを見せ、我々の兵士たちと衝突しています!」
クラリスとヴィクターは顔を見合わせた。影の公爵の計画が遂に動き始めたのだ。
「兵力はどのくらい?」ヴィクターが尋ねた。
「正確な数はわかりませんが、かなりの数が集結しているとのことです。我々の防衛線は押され気味です。」兵士は焦燥感を隠せない様子で答えた。
「今すぐ私たちも向かいましょう。」クラリスは強い決意を持ってその場を離れ、ヴィクターもすぐにそれに従った。
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クラリスとヴィクターは国境へ向かうために馬車に乗り込み、最前線へと急いだ。道中、クラリスは自分の胸の中で沸き起こる焦りと使命感を感じていた。この戦いが国全体の運命を左右するかもしれないという重圧が、彼女の中で静かに燃えていた。
「影の公爵がこんなにも早く動き出すとは……」クラリスは窓の外を見つめながらつぶやいた。
「彼も追い詰められているのだろう。」ヴィクターは冷静に答えた。「これが彼の最後の賭けだ。だからこそ、この戦いで決着をつけなければならない。」
クラリスは深く頷き、自分の剣に手を置いた。「必ず、影の公爵の陰謀を阻止してみせる。」
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数時間後、二人は国境付近の防衛線に到着した。兵士たちは激しく戦いながら、影の公爵の手下たちの猛攻に耐えていた。クラリスとヴィクターはすぐに指揮官の元へ向かい、状況の確認を行った。
「クラリス様、ヴィクター様!ご到着をお待ちしておりました。」指揮官が敬礼しながら迎えた。
「状況を教えてください。」クラリスが言った。
「敵は非常に巧妙に動いており、我々の防衛線を突破しようとしています。特に南側の防衛が薄く、そこが最大の危機です。」指揮官の声は緊張で硬直していた。
「南側の防衛を強化しましょう。私たちもそちらへ向かいます。」クラリスは即座に決断を下した。
ヴィクターも同意し、二人は南側の防衛ラインへと急いだ。そこでは、兵士たちが必死に防御を続けていたが、次第に押し込まれつつあった。
「ここで踏ん張らなければ、この戦線が崩壊してしまう……!」クラリスは剣を抜き、兵士たちに声をかけた。「皆さん、もう少し耐えてください!私たちが援護します!」
クラリスとヴィクターが前線に立ち、敵の攻撃を受け止めると、兵士たちは一瞬の安堵の表情を見せ、士気を取り戻した。二人の存在は、戦場で圧倒的な支えとなっていた。
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戦闘が激化する中、クラリスは冷静に敵の動きを見極め、素早く剣を振るった。彼女の剣技は鋭く、次々と敵兵を倒していった。その背後では、ヴィクターも同じように敵兵を打ち倒していく。
「数は多いけれど、私たちが守り切らなければ!」クラリスは心の中で強く誓いながら戦い続けた。
その時、遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。何かが近づいている。クラリスは瞬時にその音に気付き、振り返ると、一隊の兵士がこちらに向かってくるのが見えた。
「増援か?」ヴィクターが警戒しながら言った。
だが、その兵士たちの動きには何か違和感があった。彼らは明らかに敵軍だった。しかも、通常の兵士とは異なり、重装備の精鋭部隊のようだった。
「これは……影の公爵の親衛隊かもしれない。」ヴィクターが冷静に推測した。
「このままでは突破される!」クラリスはすぐに指揮官に命令を飛ばした。「防衛線を強化して!敵の精鋭部隊が来ます!」
兵士たちは素早く命令に従い、防衛体制を整えたが、敵の精鋭部隊の攻撃は猛烈だった。彼らは高度な戦闘技術を持っており、次々に我が軍の兵士たちを打ち倒していく。
「これ以上は耐えきれない……!」クラリスは焦りを感じながらも、冷静さを失わずに戦い続けた。だが、敵の攻撃は止まらない。
その時、突然敵の精鋭部隊の後ろから巨大な影が現れた。影の中からゆっくりと姿を現したのは、黒いローブをまとった男だった。彼の存在感は圧倒的で、戦場全体がその存在に引き寄せられるようだった。
「影の公爵……!」クラリスはその男を見て、直感的に彼が長らく追ってきた黒幕であることを確信した。
影の公爵は冷たい微笑みを浮かべながら、静かに戦場を見渡していた。「ようやくここまで来たか。だが、お前たちが私を止められると思うか?」
その声は静かでありながらも、強大な威圧感を放っていた。クラリスは剣を握り締め、影の公爵に向かって歩み寄った。
「あなたがこの国を混乱に陥れた張本人ね。ここで終わりにするわ。」
影の公爵は軽く笑いながら答えた。「終わり?それはお前次第だ。だが、私の計画はすでに動き出している。お前にそれを止められるかな?」
クラリスは冷静さを保ちながら、影の公爵を睨みつけた。彼を打ち倒さなければ、この戦いは終わらない。すべてがこの瞬間にかかっている。
「覚悟しなさい、影の公爵。私はこの国を守るために、あなたを倒す。」
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