クラリスとヴィクターが影の公爵を打倒して数日が経過した。影の公爵が倒れたことにより、国境付近での戦いは終結し、王国には一時的な平穏が訪れた。しかし、クラリスは戦いの疲れから来る安堵感と共に、影の公爵が残した謎がまだ完全に解けていないことを感じていた。
王宮では、影の公爵の背後にあった「闇の結社」の存在についての情報が徐々に広まりつつあった。だが、その存在を信じない者も多く、彼らは影の公爵の死をもってすべてが終わったと考えていた。重臣たちの間でも、結社の存在について意見が分かれており、クラリスはこの問題に対処する必要があった。
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クラリスは、ヴィクターと共に王宮内の会議室へと向かった。そこで、国王や重臣たちと今後の王国の方針について話し合うことになっていた。影の公爵の倒れた今、国の再建や復興に力を注ぐことが急務であったが、クラリスはそれだけでは不十分であると考えていた。
会議室に入ると、すでに多くの重臣たちが集まっており、クラリスの到着を待っていた。彼女が席に着くと、国王がゆっくりと口を開いた。
「クラリス、まずは君に感謝を伝えたい。君の勇気と決意によって、我々は影の公爵という脅威を取り除くことができた。王国全体が君の功績に感謝している。」
クラリスは一礼して感謝の意を示したが、その表情は真剣なままだった。「ありがとうございます、陛下。しかし、私はまだ終わったとは思っていません。影の公爵を倒したことで、彼が手を引いていた陰謀は止まったかもしれませんが、彼の背後にある組織、『闇の結社』の存在を無視するわけにはいきません。」
会議室内の空気が一瞬張り詰めた。重臣たちの多くは「闇の結社」の話を聞いたことがあったが、それを実際の脅威と認識している者は少なかった。
一人の重臣が疑念を込めた口調で言った。「クラリス様、確かに影の公爵は王国にとって大きな脅威でした。しかし、彼が倒れた今、我々が再び混乱に巻き込まれることはないのではありませんか?結社などというものは、ただの噂に過ぎないのでは?」
クラリスはその意見に対し、毅然とした態度で答えた。「私は影の公爵の残した手記を読みました。そこには彼がただの独立した存在ではなく、『闇の結社』の一員であったことが明確に記されていました。この結社はまだ王国全体に根を張っており、私たちがその存在を軽視すれば、さらなる危機を招くことになるでしょう。」
別の重臣が同意を示しながら言った。「確かにクラリス様のおっしゃる通りです。影の公爵が単独でこれほどの混乱を引き起こしたとは思えません。我々は今こそ、王国内の隠れた脅威に目を向けるべきです。」
国王はその言葉を聞き、深く頷いた。「わかった、クラリス。我々も君の意見を無視するつもりはない。だが、この問題に対処するためには、まず我々が具体的な証拠を持つ必要がある。結社がどのようにして王国に影響を及ぼしているのか、さらに調査を進めよう。」
クラリスはその言葉に感謝し、さらに強く続けた。「陛下、私は結社がただの噂ではなく、確実に王宮内にも影響を及ぼしていると考えています。彼らは貴族や重臣たちの中に潜り込み、影の公爵を通じて計画を進めていたはずです。私たちはその動きを見逃してはならないのです。」
国王は再び深く頷き、会議は進行していった。
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会議が終わり、クラリスとヴィクターは王宮の庭を歩いていた。クラリスの心には、これからの戦いへの覚悟がますます強まっていた。影の公爵を倒したことは確かに大きな勝利だったが、その背後にある闇はまだ完全に消えていない。
「ヴィクター、これから私たちはどう動くべきだと思う?」クラリスは歩きながら問いかけた。
ヴィクターはしばらく考え込んだ後、静かに答えた。「まずは、影の公爵の手記に書かれていた結社の手掛かりを追うべきだろう。彼がどこで何をしていたのか、結社の本拠地がどこにあるのか、それを探り出さなければならない。」
クラリスは頷き、次の行動を決意した。「そうね、次は結社の痕跡を辿ることに集中しましょう。彼らが王国に再び暗い影を落とさないように、私たちがその動きを封じなければならないわ。」
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数日後、クラリスとヴィクターは結社に関わる情報を集めるため、古代の遺跡がある地方へと向かうことを決めた。影の公爵が使っていた魔法が古代の技術に基づいていることがわかっており、その力を解き明かす鍵が遺跡に眠っているという情報がもたらされていた。
「この遺跡には、影の公爵が使っていた力の源があるはずだ。私たちがそれを手に入れることができれば、結社の計画を阻止できるかもしれない。」ヴィクターが馬車に乗り込みながら言った。
クラリスも同意し、彼女の心には再び新たな戦いへの決意が宿った。「この遺跡で全ての謎を解き明かし、結社の動きを止めるために全力を尽くすわ。」
こうしてクラリスとヴィクターは、再び新たな冒険へと旅立つ準備を整えた。彼らの旅路はまだ終わらない。影の公爵を超えるさらなる脅威が待ち受けていることを感じながらも、彼らは決して屈することなく前へ進む。