雪の庭の開店
朝、いつものように「雪の庭」の前には常連客たちが集まっていた。
待ちわびたように顔を覗かせる客たちの前で、店のドアが開く。
そこに現れたのは、エプロン姿の月だった。
月:「雪の庭、開店です!」
満面の笑みで宣言する月の姿に、お客たちは安堵の表情を浮かべる。
開店の札が掲げられ、次々と客が店内へと入っていく。
クラリスとセリーヌがいつものようにテーブルへ案内し、オーダーを取り始める中、月は厨房に戻り準備を整える。
クラリス:「月様、今日のスイーツはパネットーネですね?」
月:「ええ、数量限定だから、早い者勝ちよ。」
弥生が厨房に入ってきて尋ねる。
弥生:「パネットーネって、そんなに珍しいスイーツなんですか?」
月:「ええ、とても手間がかかるし、普通の喫茶店ではまず出さないわね。でも今日は特別。お姉様の代わりに、この私が最高のものを提供するわ!」
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特別なスイーツ:パネットーネ
月は、熟成させるためねかせていたパネットーネを慎重に取り出し、一つ一つ丁寧に盛り付けを始める。
フルーツの香りとふわりとした生地の甘さが店内に広がり、客たちはその香りだけで満足そうな表情を浮かべる。
クラリス:「香りだけで幸せになりそう……。」
セリーヌ:「これが月様の力なのね。」
最初のパネットーネが運ばれたテーブルでは、常連客が一口食べて感激の声を上げる。
「ふわふわで甘くて、まるで夢みたいな味だ……!」
月は客たちの反応を見て満足そうに頷きながら、テーブルを回って感想を聞いて回る。
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スタードール店長の訪問
まだ開店して間もない「雪の庭」。常連客たちがスイーツを楽しむ中、スタードール店長のアルベルトが早々と店内に現れた。
アルベルト:「さっそく、本日のスイーツをいただこうか。」
店員たちは一瞬驚いたが、すぐに慣れた様子で対応する。
セリーヌ:「いらっしゃいませ、アルベルト様。本日はパネットーネをご用意しております。」
アルベルトは興味津々な表情を浮かべて席に着き、月に目を向けた。
アルベルト:「噂の妹店長が作ったというスイーツ、期待させてもらうよ。」
月は厨房から顔を出し、笑顔で応じる。
月:「ご来店ありがとうございます。パネットーネ、どうぞご堪能ください。」
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特別なパネットーネの提供
ほどなくして、アルベルトの前に盛り付けられたパネットーネが運ばれた。
その表面には美しい焼き色がつき、中から漂う甘いフルーツの香りがふわりと広がる。
アルベルトはフォークを手に取り、一口頬張る。目を見開き、思わず感嘆の声を上げた。
アルベルト:「……これは、素晴らしい……!ふわふわの生地にフルーツの甘さが絶妙だ。」
近くで様子を見ていた月は、満足そうに頷きながら微笑む。
月:「ありがとうございます。長時間をかけて仕込みましたので、その価値が伝われば幸いです。」
アルベルトは少し感心した様子で月を見つめ、言葉を続けた。
アルベルト:「ぜひスタードールでも提供したいものだ。」
その言葉を聞いた瞬間、月の笑顔が一瞬だけ冷ややかなものに変わった。しかし、すぐに元の明るい表情に戻り、柔らかく答える。
「その話なのですが……当店が閉店後にスタードールに伺い、お話しする機会をいただけますか?」
アルベルトはその提案に驚きつつも、前向きな展開を期待して笑みを浮かべた。
「それは、前向きな返事がもらえるということなのかな?」
「ええ、まあ……詳しいお話は後ほど直接お伝えします。」
その言葉に、アルベルトは満足げに頷きながら席を立った。
「そうか、それなら楽しみにしているよ。だが、一つだけ言わせてもらう。この店のスイーツには、いつも驚かされる。」
「光栄です。またのご来店をお待ちしています。」
アルベルトが店を後にすると、月は彼の背中をじっと見送りながら、静かに呟いた。
「ふん……準備は整ったわ。あとは、仕掛けるだけ。」
その言葉の意味を知る者は、まだ誰もいなかった――。
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