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第14話 お手軽バーベキュー。

 今日は四人で街中から少し離れた公園に来ていた。この公園はバーベキューが出来るところがあって、道具も貸してくれるし、食材も売っているのだ。お手軽にバーベキューが出来るので人気の公園である。泰斗さんと大也さんが火をおこして、私と奈美は食材の準備をしていた。


「奈美さんが競馬に興味持ってくれたみたいでさ、何か嬉しくて」

「だって、大也さんが楽しそうだから気になって、もえから色々教わっちゃった」

「私は何も教えてないよ。ただ、やってるゲーム紹介しただけ」

「ダービーランだろ。あれ、俺も好きでやってるんだ。最近は奈美とダービーランの話も出来て楽しいんだよ」

「それはよかったね。僕ももえさんと色々話せるから楽しいよ」

「で、二人は?」


 大也さんに問われ、言葉に詰まる泰斗さん。私は顔を逸らして金網が温まっているかを確かめた。すっかり仲良くなったけれど、進展はない。それが不満じゃないといえば嘘になるけれど、泰斗さんのペースもあるので焦らせたくはない。そもそも、早く付き合いたいのであれば、私から言えばいいだけの話だ。

 肉を焼く。野菜とウインナーも焼く。大也さんは先ほどからスマホを気にしながら、肉が焼けるのを待っている。


「大也、スマホ置いたら?」

「悪い、ちょっとレースが気になってさ」


 競馬の方を気にしていたのか。みんなで来てるんだから、今くらい一緒に楽しめばいいのに。奈美の方を見ると、大也さんのお皿に肉を取り分けながらにこにこしている。まあ、奈美がこういう大也さんがいいというならそれでいいのだろう。私は泰斗さんと自分のお皿に肉と野菜を取り分ける。大也さんは肉しか食べていないようだ。


「大也さん、野菜も食べようよ」

「苦手なんだよなあ、野菜。奈美さんの手料理なら食べられる気がするけど」

「大也、そこのピーマン焼いたのは奈美さんだよ」

「泰斗、そういうこと言うなよ。食べないわけにいかないじゃないか」

「よかったあ。私の焼いた野菜食べてくれてる」


 奈美、喜んでいる場合じゃない、手料理を期待されてるよ。と思ったら、ちらちらと視線をよこす奈美。これはあとで料理を教えて欲しいと言われるパターンだな。逆によく今まで彼氏に料理を作らずに来られたなあ。私はちょっとしょんぼりした奈美のお皿に野菜を盛った。


「もえさん、食べてるかい。取り分けるの交代するから、少し座って食べて」

「うん、ありがとう」

「泰斗はそういうとこ気が利くよなあ。俺は全然気がつかなかった。奈美さん食べてる?」

「ああ、私は食べてるよ。もえが取り分けてくれるから」


 私はようやくゆっくりと食べることが出来た。とはいえ、いつまでも泰斗さんに代わっていてもらうわけにもいかないので、急いで食べる。大也さんは泰斗さんから取り分けられた野菜を、全部泰斗さんのお皿に移していた。奈美もそれを心配しているみたいで、何度もあーんしてと野菜を口に運んでいる。その辺、泰斗さんは野菜もバランスよく食べてくれるので心配はない。


「あっ、函館記念の発走時間だ」

「大也、あとで動画見たらいいよ。馬券買ってるなら気になるのはしょうがないけどさ」

「うーん、仕方ない。後で動画見るか」

「あーん、函館記念がどんなレースなのかわかんない。大也さんと一緒に楽しみたいのに」

「奈美、ゆっくりゆっくり。そのうち分かるよ」


 奈美は早く競馬沼に身を沈めたいようだった。私はそんな奈美のお皿に最後の野菜を乗せる。肉は泰斗さんと大也さんに取り分けて、私は自分のお皿に乗っていた分を食べ終わり、片づけ始める。ゴミの始末とかは奈美と大也さんに任せて、私と泰斗さんは火の始末をしてからコンロと網の返却をすることにした。二手に分かれたところで、泰斗さんは何か言いたげにしている。どうしたのだろう。

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