賢者との修行を終えたミライは、再び旅に出る決意を固めた。以前の彼女は、絶望と悲しみに打ちひしがれ、ただ逃げるように故郷を後にした。しかし今の彼女は、内なる力を得て、真実を明らかにするという強い意志を胸に抱いていた。
賢者の小屋を後にする日、ミライは深々と頭を下げた。
「これまで、本当にありがとうございました。あなたがいなければ、今の私はありません。」
賢者は優しく微笑んだ。
「わしは、ただお主の眠っていた力を呼び覚ましただけじゃ。これから先は、お主自身の道を行くのじゃ。」
賢者はミライに、王都へ向かう道中で役立つであろういくつかの助言と、わずかな旅費を渡してくれた。そして最後に、意味深な言葉を付け加えた。
「王都では、以前とは違う何かが起こっておるらしい。気を付けて行くのじゃ。」
ミライは賢者の言葉を胸に刻み、小屋を後にした。森を抜ける道は、以前と違って心なしか明るく感じられた。彼女の心には、未来への希望が灯っていた。
王都までの道のりは長く、険しいものだった。野山を越え、川を渡り、時には野宿をすることもあった。しかし、賢者との修行で鍛えられた体力と精神力は、彼女を支え続けた。
旅の途中、ミライは様々な人々と出会った。親切な村人、旅の商人、そして、困っている人々。彼女は、賢者から教わった薬草の知識や、わずかな魔力を使って、彼らを助けた。人々の感謝の言葉は、ミライの心を温め、彼女に生きる力を与えてくれた。
ある日、ミライは小さな村に立ち寄った。村は活気に溢れ、人々は皆笑顔で働いていた。村の中心にある広場では、子供たちが楽しそうに遊んでいた。その光景を見て、ミライは心が安らいだ。
村の食堂で食事をしていると、隣の席に座っていた男が話しかけてきた。彼は旅の商人だと言い、様々な土地を巡って商売をしているらしい。
「お嬢さんは、どこへ行くんだ?」
商人はにこやかに尋ねた。
「王都へ行きます。」
ミライは答えた。
「王都か。最近、王都の様子がおかしいらしいな。」
商人は眉をひそめた。
「何が起こっているんですか?」
ミライは尋ねた。
「詳しいことは分からないんだが、街の雰囲気が以前と違うらしい。治安が悪くなっているとか、物価が高騰しているとか、色々な噂を聞くよ。」
商人の言葉に、ミライは不安を感じた。賢者も言っていたように、王都では何かが起こっているのかもしれない。
「それと、最近、王宮の様子もおかしいらしい。」
商人はさらに続けた。
「王宮では、以前聖女だった女性が追放されてから、色々な問題が起こっているらしい。王子の様子もおかしいとか、大臣たちの間で意見が対立しているとか、色々な噂が飛び交っている。」
ミライは息を呑んだ。自分のことが、王都で噂になっているのだろうか?
「お嬢さんは、王都に知り合いがいるのか?」
商人は尋ねた。
「…かつて、いました。」
ミライは曖昧に答えた。
商人はそれ以上何も聞かなかった。しかし、ミライの心には、様々な思いが渦巻いていた。王都で何が起こっているのか、自分のことがどのように噂されているのか、そして、自分が王都に戻ることで何が起こるのか。
その夜、ミライは村の宿屋に泊まった。夜空を見上げると、満月が輝いていた。彼女は、故郷を離れる前に、よくアルトと一緒に月を見ていたことを思い出した。あの頃は、全てが輝いて見えた。未来への希望に満ち溢れていた。
しかし今は、全てが変わってしまった。彼女は、全てを失ってしまった。
それでも、ミライは諦めなかった。彼女には、真実を明らかにするという強い意志があった。そして、自分を陥れた者たちに、償いをさせなければならないという強い決意があった。
翌朝、ミライは再び旅に出た。彼女の心には、不安と期待が入り混じっていた。王都で待ち受けるのは、一体何なのだろうか?