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第14話

 巨大な穴の前に立ったミライたちは、底から吹き出す不気味なオーラに圧倒されていた。それは、古代文明の力の残滓とは全く異なる、生々しく、原始的な力だった。それは、まるで世界の底から湧き上がるような、根源的な恐怖を呼び起こす力だった。


「これは…一体何なのでしょうか…」


リリアンは、震える声で呟いた。彼女は、神殿で様々な魔力や霊的な存在について学んできたが、このような力は初めてだった。


「わからない…だが、危険な力であることは間違いない。」


ガイは、剣を構え、周囲を警戒しながら言った。彼は、騎士としての経験から、この力が尋常ではないことを直感していた。


ミライは、穴の底を見つめていた。彼女は、その奥底に、巨大な何かが蠢いているのを感じていた。それは、意識を持っているのかどうかもわからない、ただ純粋なエネルギーの塊のようなものだった。


「この穴は…世界の底と繋がっているのかもしれない…」


ミライは、呟いた。彼女は、古代文明の記録の中に、世界の底に眠る力についての記述があったのを思い出していた。それは、世界の創造と破壊に関わる、根源的な力だという。


「世界の底…?そんな…まさか…」


リリアンは、信じられないといった表情で言った。


「わからない…だが、この力は、古代文明が制御しようとした力よりも、はるかに強大だ。もし、この力が暴走すれば…王国だけでなく、世界全体に甚大な被害が及ぶかもしれない…」


ミライは、深刻な表情で言った。彼女は、この力を何とかしなければならないと強く感じていた。


彼らは、穴の内部を調査するため、慎重に下へと降りていくことにした。穴の中は、暗く、湿っており、不気味な静けさに包まれていた。時折、底から吹き上げるオーラが、彼らの体を震わせた。


降りていくにつれて、オーラの力は強くなっていった。リリアンは、魔力の影響を受け始め、体調を崩し始めた。ガイは、リリアンを支えながら、ミライに注意を促した。


「ミライ、無理はするな。もし、危険を感じたら、すぐに引き返すんだ。」


ガイは、心配そうに言った。


「わかっているわ。でも、ここで引き返すわけにはいかない。この力の正体を突き止めなければ…」


ミライは、強い決意を込めて言った。


彼らは、さらに深くへと降りていった。そして、ついに、穴の底にたどり着いた。


そこは、広大な空間だった。天井は見えず、どこまでも暗闇が広がっていた。足元には、黒い液体が溜まっており、それが不気味な光を放っていた。


そして、その中心には、巨大な塊があった。それは、まるで心臓のように、脈打ち、周囲に強いオーラを放っていた。


「あれが…この力の源…?」


ミライは、息を呑んだ。彼女は、その塊から、圧倒的な力を感じた。それは、彼女がこれまで経験したことのない、次元の違う力だった。


その時、その塊から、声が聞こえてきた。それは、人間の言葉ではなく、感情や思考が直接伝わってくるような、不思議な声だった。


『…来たか…』


その声は、ミライたちに語りかけてきた。


『…お前たちは…何者だ…?』


ミライは、勇気を振り絞って答えた。


「私たちは…この世界を守るために来た…あなたは何者なのですか…?」


『…私は…世界の始まりから存在するもの…創造と破壊の力…』


その声は、答えた。


『…私は…眠っていた…だが…お前たちのせいで…目覚めてしまった…』


その言葉と共に、巨大な塊から、さらに強いオーラが放たれた。周囲の空間が激しく歪み、地面が揺れ始めた。


「まずいわ!離れるんだ!」


ガイは、叫んだ。彼は、このままでは危険だと判断し、ミライとリリアンを連れて、穴の上へと逃げようとした。


しかし、その時、巨大な塊から、無数の触手のようなものが伸びてきた。それは、彼らを捕らえようとしていた。


ミライたちは、必死に抵抗したが、触手の力は強大だった。彼らは、次々と捕らえられ、巨大な塊へと引き寄せられていった。


ミライは、捕らえられながら、巨大な塊を見つめていた。彼女は、その奥底に、深い悲しみと孤独を感じ取った。


『…私は…ただ…眠りたかっただけだ…』


その声は、悲しげに呟いた。


その瞬間、ミライの体の中に、不思議な力が流れ込んできた。それは、古代遺跡で水晶と一体化した時に得た力だった。


ミライは、その力を使い、触手を振り払った。そして、巨大な塊に向かって、語りかけた。


「あなたは…孤独なのではない…私たちは…あなたを理解したい…」


ミライの言葉は、巨大な塊に届いたのだろうか。その動きが、少しだけ止まった。


しかし、その直後、巨大な塊は、再び激しく脈打ち始めた。そして、今まで以上の強いオーラを放ち始めた。


『…理解…?人間が…私を…理解する…?笑わせる…』


その声は、怒りに満ちていた。そして、巨大な塊は、ミライたちに向かって、その強大な力を解放した。


ミライたちは、未知なる力との、絶望的な戦いを強いられることになった。





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