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第3話 ダイバー&ライバー

ぐっすり眠って気分上々!

朝から致して若干ダウナー。

そんなわけでアタシはダンジョンにまたやって来た。


一応朝ごはんの後、ヨウに教わってダンジョンについて知識をいれてもらってる。

今のニッポンではダンジョン学の授業があってダンジョンについての基礎知識を義務教育で習うらしい。

ダンジョンに挑む目的は大きくわけて2つ。

1つは素材を手に入れること。

もう1つはレベルをあげること。


モンスターを倒すと人間はレベルを手に入れる。

あんまりアタシはやらないんだけどヨウがやるのを眺めてたりするから一応それがゲームっぽいってのは分かるよ。

モンスターを倒せば倒すほどレベルは上がり、レベルが上がれば生物として全体的な能力が向上する。

そうやって強くなりながらダンジョン攻略を進めていく。


ちなみにニッポンでは義務教育の最終学年で、ベテラン引率の元、レベルを手に入れる為に遠足があるらしい……その方法というのが……拘束して動けなくした弱いモンスターにクラス一同で石を投げつけること……倫理観仕事して?


でもまぁレベルを手に入れれば地上で事故に会っても大ケガにならなかったり、万が一ダンジョンからモンスターが出てきても逃げきれたり、最低限のレベルを手に入れるのは現代において必要なこと。とはいえ、それがトラウマでダンジョンにそれきり行かないって子は多いみたい。ヨウは完全にそのパターン。

まぁ、ダンジョン潜るならモンスターを殺してなんぼなので、ある意味それがふるいになってるんだろうね。

別にダイバーだけが仕事でもないし。

アタシは仕事したことないけど。


そういえばアタシ、モンスターを大量殺戮したけどレベル上がってんのかな? アタシにもわからん。


そうやってダンジョンに潜りレベルを上げ、素材回収を生業としてる人達をダンジョンダイバー、通称ダイバーという。

昨日の若者達は初心者ダイバーだったんだろうね。

ちなみにニッポンでは法律で未成年の素材回収、売買は原則禁止されている。あの手この手で子供を使って儲けようとする大人がいるからだ。


ついでに、ニッポンでは警察や自衛隊も訓練としてレベルを上げているらしい。レベルを持つ犯罪者や他所の国に備えるには必要なこと。

あとは引退したダイバーが立ち上げたダイバーの互助組織とか警備の会社なんかもあるらしい。

まぁ、人間は強かでなんやかんや世の中は上手く回っているってことだ。


「とりあえず今日はダンジョンを深く潜っていけってことだけど」


昨日から来てるダンジョンは通称トーキョーダンジョン。まんまだね。日本には他に6つ、全部で7つのダンジョンがあるらしい。分かってる限りはね。

トーキョーダンジョンはオーソドックスな洞窟ぽい迷宮タイプで下に下に階層を下っていく。

出てくるモンスターは、ファンタジーなモンスター図鑑を開けば載ってるような連中。や、そんな常識見たいに言われても困るけどさ。


ヨウからは「まずは普通に道なりに攻略してみてね、あとゴミは拾ってこないでね」と命令されている。わんわん。

道なりに……というのは壁抜けショートカットはするなってこと。

ただ、透視をしてみると地面のずっと下や端の壁らしき部分は先が見通せないみたい。

そも、本当にこんな広いダンジョンが都市のど真ん中の地下に拡がってたら地下鉄やらなんやらとぶつかってしかりだけどそういうことは無い。

入り口があるだけで、ダンジョン自体は別空間だとか別世界にあるだろうってのが偉い学者さんの見解らしい。

知らんけど。

とにかく今日はこの入り組んだ道なりに次の層に繋がる階段を探しては降り、探しては降りってするつもり。


アタシは入り口を潜りクラウチングスタートの構えを取り、いつものお気にの台詞でカッコつけて軽めに踏み切った。


一瞬で音速の数倍に加速。反動やら衝撃波やらなんやらは念動力で相殺。

圧倒的動体視力で最小限の動きで角を曲がり、他のダイバー達を避け、モンスターには適当に蹴りをくれて爆散させる。

このダンジョンの最高到達層は現在49。

とりあえず50層には行くなとヨウからは言われ……厳命されてるので従おう。ヨウは怒ると可愛いいけど怖い。


アタシは2層目に繋がる階段を攻略開始数秒で見つけるとサクサクっと段飛ばしで下る。同じことを繰り返し早くも10層目。

アタシの前には大きな扉……あと何かくっちゃべってる若い男の子と女の子のペア。姿を消しながら様子を見てみれば、なにやら浮いている目玉みたいな機械に向かって自己紹介のようなことをしていた。


「どうも! 高校生カップルライバーのハル&アキのアキです! 今日はトーキョーダンジョンの10階層のボスに挑みます! 初挑戦です!」

「ハルです! うぅ~緊張する……! 頑張ろうね、アキ君」

「しっかり推奨レベルまで上げたし、いつも通りやれば大丈夫だよ、ハル。あ、応援スパチャありがとう!」 


う、初々しい……あとリア充爆発しろ。

目玉みたいな……フローティングカメラというやつだろう。それからも「リアジュウバクハツシロ」と合成音声が流れている。


ともかくアタシはその様子で彼等が何者かわかった。

ヨウに注意されていたいくつかの事。

その中にライバーの存在があった。

ダンジョンライバー、通称ライバー。

ようするにダンジョンの攻略模様を生配信して、娯楽コンテンツとして提供してる連中。

承認欲求と、収益化が通れば未成年でもダンジョンで大金が稼げる、安定性皆無だけど色々満たせる人気の職業だ。

生配信、すなわち彼らいるところカメラ有り。

ライバーがいるところで迂闊なことはしないようにってヨウには厳重注意されてる。

なんでかって? アタシが違法ダイブ真っ最中だからですよ。

とりあえずアタシはフルステルス状態。さらに、あのカメラにサーモ機能があるかは知らないけど体温を気温に馴染ませて対策しておく。


さて、目の前に鎮座する大きな扉。

さっきライバーのカップルが言ってた通りにこの向こうにはボスがいる。

トーキョーダンジョンはボス部屋方式で10層毎にボスがいて、倒さないと次の層には進めない。

おまけに“不思議な力に守られている!”のか、ボス部屋の扉は透視は出来ないし壁抜けしても何もなかった。開かないとダメらしい。


そして、今扉を開くとあら不思議。勝手に扉が開くところがバッチリカメラに収まってしまうのだ。

アタシが待ちぼうけをくってるのはそのせい。

早くしてくれないかな~? と待つこと数分。

ようやく挑む気になったのかカップルはカメラに向かって「じゃあ行きます」的なことを宣言して扉に手をかけた。


そこでふと、これもしかして勝つにせよ負けるにせよこのカップルの挑戦が終わらないと入れない? とアタシは気づいた。

アタシは面倒くさがりだが、何もせず待つことも嫌いなのである。

そういうわけでアタシはスルっと扉のすき間に身体を差し入れカップルに続いてボス部屋に潜り込んだ。












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