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第16話 見せられないよ

”おぉおおおおおお!! いったああああああ!!”

”やったか?! ってもう転移門でてたわ”

”ちょ、瞬殺?! なんだ今の火力!!”

”アキの動きもキレッキレ”

”ポチちゃんの攻撃がいちいち痛そうなんだよなあ”


「倒した……?」

「や……やった?」


信じられないって顔のハル&アキは指一本動かせないようでその場でへたり込む。

『ほら演技演技』とヨウから指示が来たのでアタシも真似しとかなきゃ。

3人その場で動けないまま、なんとか配信のコメントや周囲を見渡して勝利を噛みしめる。


「ほらほら2人とも! 勝ったんだよ! 笑って笑って!」

「は、はい! やったね、ポチさん! ハル!」

「うん! 2人ともすごかった! あ、集中してあんまり見えてなかったんだけど」

「僕も無我夢中で……それにしてもすごい威力の魔法だったね、ハル。 新しい魔法?」

「うん! 火魔法が炎魔法に進化して……それと多分……覚醒スキルも」

「ハルも?! 実は僕もスキルが目覚めたみたいなんだ」


なんと2人は土壇場で覚醒スキルに目覚めたらしい。なるほど急にパワーアップしたと思ったらそういうことだったのか! よくわかんないけど。


”覚醒スキル?!”

”マジか”

”どんなスキル? 詳しく!”

”考察班です どうやって覚醒しました? スキル名は? 効果は? 情報お願いします!”


わは~コメントがいっぱいだ。 覚醒スキルってやっぱり大事なのかな?

2人がどう答えればと目を見合わせていれば”ほらほらまずはせっかくのボス戦初勝利を祝わないと”とコメントがくる。 ふふっ、ヨウのコメントだ。


「そうそう! まずはボス戦初勝利おめでとー! あ、アタシもか」

「ははっ、そうですね! スキルの話はまた今度で」

「うん! 2人ともおめでとう! あ、ポチさん。ドロップは?」

「おお! そうだった!」


そういえばドロップの為にダイブしてるんだったわ。

トロール君、消し炭だったけどドロップはちゃんと残ってるかな?

焼け跡みたいになってるとこをよく見てみれば真っ黒な塊……これはまさか!


「あー! アダマンタイト!」

「えっ」

「えっ!」


だだっと駆け寄って塊を拾い上げ2人とカメラに向けて掲げて見せる。

うん、前に拾ったのと同じ奴だ。めっちゃ高く売れるやつ!


「これでまた儲け儲けだ~」

「ポチさんアダマンタイトを手に入れたことがあるんですか? たしかトーキョーダンジョンでも深層でしかドロップしないって」

「うえっ?」

『ポチ! あれは秘密でしょ!!』


あ、そうだったわ。内緒だったわ。やーん失言。

「や、前にね譲ってもらったことがあってね! えっと、借金のかわりに!」とかなんとか誤魔化してみるけど……あはは、ヨウにまた怒られそ。

と、とにかく! ボスも倒して、お宝もゲット! 2人はスキルもゲット! 万々歳だ。


「あ、ね、これすごい高いんだけど……貰っていいの?」

「はい! そういう約束です!」

「ですね。 僕らでは売れませんし」

「じゃー! またいっぱいスパチャするね!」

「あはは、ほどほどにお願いします」

「そうですよ? ヨウさんにまた怒られちゃいますよ?」

”たしかに(笑)”

”もう誤爆しちゃだめだぞ”


わーん図星だよ! コメントでも笑われてるし!

なお、アタシのスマホは支払い機能停止されております……ヨウもハル&アキにならスパチャ許してくれるよね。


「さすがにこれ以上の連戦は厳しそうですし、今日はもう帰還門で地上に戻りましょう」

「そうだね……すごく疲れちゃった」

「おっけ~! 帰るまでがダイブだよ!」


精魂尽き果てたって感じから回復はしたけど、さすがに戦えるコンディションじゃないとアキ君が帰還を提案する。モチロン、アタシは余裕だけどここは合わせておくよ。

魔法陣に向かう寸前、アタシはハルちゃんの背中に手を当て耳打ちする。


「(ハールちゃん、ほらっ。勝ったんだから……行くなら今だぞ~)」

「ポ、ポチさん!?」

「アキくーん、ハルちゃんがお話だって!」

「わっわっ! ポチさん!」


「ん?」と振り向くアキ君に向けてハルちゃんの背を押せば、2人は丁度いい距離で向き合う形になる。

よし! いけー! いくんだー!


「あ、アキ君」

「何? ハル?」

「えっと……あの、今日はす、凄かったね!」

「ハルこそ! すごい魔法だったよ!」

「本当? 私、役に立てたかな?」

「モチロンだよ!」

「足手まといじゃない? これからもアキ君と一緒にいてもいい?」

「ハル?」


お、行くか? 行くか? ハルちゃんの雰囲気が変わった。 決意したって感じだ。

アタシはスッとフローティングカメラの前に移動して背中で2人を隠す。

ふふふ、これは配信には流せませんな~。


「アキ君! わ、私たちカップルだよね!」

「うん。カップルライバーってことで活動して……」

「そういうことじゃなくて! ……ちゃんとカップルだよね」

「……うん」

「じゃ、じゃあカップルらしいことしてもいいよね?」

「えっ?」


いったー! ハルちゃんがアキ君に飛びついてキッスしにいったー!

首に手を回して熱いベーゼだ!

アタシはカメラを隠したままスマホを取り出し激写する。連射機能パシャシャシャシャシャっ。

使い方覚えておいてよかったね!

突然のことにどぎまぎしてるアキ君と顔真っ赤にしてるハルちゃんが、落ち着いて我に返り撮影中のアタシに気づくまでばっちし一部始終を撮っておきましたとも。

2人はアタシに気づくとバッと飛びのいて距離を取り「「ポ、ポチさん~~~?!」」と抗議が上がる。

アタシはスマホを構えたままサムズアップで応えるのだった。












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