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第17話 秘密

娑婆の空気は美味いわい! ってことで地上に戻って参りました!

さすがに帰還門が転移トラップってことはなかったね。

んでんで、カップル繋ぎのハル&アキと一緒にトーキョーダンジョンの壁内施設でドロップの売却にやって参りました。

アダマンタイトの他は魔石と呼ばれる諸々のエネルギーとして使える物質をポケットに押し込んできた。えっとあとは……腰ミノとかもドロップしたけどヨウが置いてきなさいって。


査定結果は~しめて2000万と6002円なり。腰ミノ……2円って……。ゴミじゃん……もう拾わない……。

アダマンタイトが2000万、魔石はサイズで違うみたいだけど10層までじゃそんな大きいのはドロップしないみたい。でもまーぼろい商売だね。


「儲け儲け~」

「す、すごいですね……たった数時間で2000万円なんて」

「ドロップは確実にあるわけじゃないからすごく運がよかったですね!」

「2人とも本当に山分けしなくてよかったの?」

『こら! ポチ!』

「だって~! なんか悪いじゃん」

「いいんですよ。僕らもまだ高校生ですし、ポチさんがいなかったら勝てませんでしたから」

「そうですよ! ちゃんとわかってますから!」

『アンタ達ほんといい子ね~。ちょっとならスパチャしてあげる』

「いっぱいしてあげたらいいじゃ~ん」

『節約しなさい!』

「嘘、ヨウの口から節約なんて言葉が聞けるなんて!」


チョーカーマイクをスピーカーモードにしてハル&アキとヨウも交えて雑談中だ。

壁内にはちょっとしたフードコートや、ダイバー用宿泊施設もあって意外と至れり尽くせりだ。


「じゃー、これでお開きってことで!」

「はい、本当にありがとうございました!」

「ポチさん、また一緒にダイブしましょうね!」

「うん、まったね~!」


ファストフードをぱくぱくしながらお喋りすればぼちぼち夕方のそこそこいい時間。

ハル&アキとお別れしてアタシはヨウのアパートまでバビュンと飛んで帰るのだった。



「たっだいま~!」

「はーいお帰り。楽しかった?」

「うん!」


帰るやいなやヨウに飛び付いて軽くキス。

チョーカーを外してポイポイっとジャージを脱ぎシャワーを浴びてワシャワシャ髪を拭いたタオルを首に。

シャワーから上がるとヨウは珍しく部屋着で椅子にかけてスマホをに弄っていた。

アタシが後ろから首に腕を回してしなだれかかれば「コラ」と怒られる。


「まだ髪濡れてるじゃない」

「いいでしょ~どうせ汗だくになるんだし」

「そういう話じゃないの」

「む~」

「離れなさいったら」

「は~い……ね、何見てたの?」

「残高。ちゃんと今日の稼ぎが振り込まれてるかなってね」


ヨウはスマホをスリープさせるとポンと放り投げて部屋着のまま横になる。アタシはすぐにヨウに抱きついた。

でもなんだかヨウは乗り気じゃなくて、アタシに話しかけてくる。


「ポチ、今日はどうだった? 初めての……普通のダイブは?」

「ん~? のんびりだったかな」

「そりゃあそうだろうけど、そういうんじゃなくて。これからも、そののんびりでやれそう?」

「んぅ……たぶん」

「あの子達は? ハル&アキ。仲良く出来そう?」

「うん! また一緒にダイブしよって!」

「良かったわ……私以外に友達が出来て」


やっぱり最近なんだかヨウの様子が変だ。

思い詰めてるというか……アタシに急に普通のダイブ活動をさせたりしたのだってそう。

2人きりだったのに急に交遊関係を気にしたり。

まるで居なくなる準備をしてるみたいだ。


「ヨウ? ヨウがアタシの一番だよ?」

「はいはい」

「ね~ちゃんと聞いてよ~んむっ」


言い募ろうとすればヨウが唇を塞いでくる。

ヨウは服を脱がないで裸のアタシを一方的に責め立てる。

なし崩しで気持ちよくされて、結局いつもみたいに受け入れてしまう。

細めた目で覗くヨウの表情はやっぱりどこか寂しげでアタシはそれが気になってしょうがなかった。


「(ん……ヨウは寝たかな?)」


スヨスヨとヨウが寝息を立てたのを確認してアタシは目を開ける。

念動力でヨウの腕を支えながら抜け出して代わりにクッションを差し入れておく。

そのままアパートを飛び出すとアタシは富士の樹海へと全速力で飛び出した。


「到着っと」


樹海にぽっかりと空いた穴、その中にある入り口を潜りアタシはまた未発見ダンジョンにやってきた。

ここに来てからだ。ヨウの様子がおかしいのは。


「寄り道は無し、手加減も無し」


集中して遠視と透視を使えば、すぐに階層の全容を把握できる。

凄いなぁ……恐竜がたくさんいる。ティラノ君も。

孤島の恐竜の楽園だ。 本当に映画みたい。

でも今日はお遊びは無し……ここにはきっと何かある。

ヨウの秘密がある気がするんだ。


どうやらここはトーキョーダンジョンの21層~みたいに転移門で次の階層に進むタイプらしい。

アタシは転移門目掛けて透過で密林を通り抜けて一気に飛び込んだ。


転移した先は真夏のビーチだった。

ダンジョンだから人っ子一人いないけど、ここで遊べたら楽しそう。でも……海にはサメがいた。

……なんか本当に映画っぽいな。すんごい既視感だ。

遊びたくなるのをグッと堪えて転移門を探せば、沖合いに浮かぶ漁船のデッキの上にあった。


次の階層は……無かった。

や、あるんだけど、なんにもない異様に広い部屋っていうか。

中央に転移門だけがチョンとあるのがなんだか滑稽だ。

次も、その次も同じで、何もない階層。

まるで作りかけみたいな……そんな印象だった。


5層目で見つけたのはそれまでと違う転移門。

もう見るからに特別って感じ。

その転移門を潜るとそこはヨウのアパートの玄関だった。















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