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第21話 前提条件イレギュラー

3日というのはあっという間だった。

あれやこれやと意見を出しながらヨウのダンジョンを作っていった。

やっぱりポイント表示が壊れているみたいで、使っても使っても3Pから動かない。まぁ使えるものは使っちゃえとガンガン使う。

一応いきなりDPが無くなることも考えて、アタシもヨウも全裸待機だった。え、うん、いつでもDP稼げるようにだよ。ムラムラしたけど。


運命の日。

ヨウのダンジョンvsトーキョーダンジョン、戦争当日。

戦争開始まであと30分と少しという時間。

アタシはトーキョーダンジョンのダンジョン入り口の前に来ていた。

トーキョーダンジョンはやっぱり連日多くのダイバー、ライバーで賑わっている人気ダンジョンで、多くのDPを稼いでいるんだろう。

和気あいあいと、あるいは緊張感に満ちて列に並ぶ彼らはこれから起こることを知らない。


『やっぱりポチ頼りになっちゃったわね』

「いいんだよ……アタシはヨウがいなくなるほうが嫌なんだから」

『そっか。……この作戦は諸刃の剣よ、相手にDPと戦争で使える階層を与えることになる。時間との勝負になるわ』

「うん、わかってる」


アタシとヨウの作戦はこうだ。

まず、護り。ヨウのダンジョン。

ヨウの思い付く限り難しいダンジョンを作って、それを“アタシ”が攻略した。

並の人間、モンスターでは絶対に進行不可能な地形だってアタシなら突き進める。階層は少ないけど難攻不落を軽く飛び越したダンジョンになったと思う。

トーキョーダンジョンの手の内がわからない以上安心は出来ないけれど。


これから行うのは攻めの作戦。

相手にどれだけ階層があるかはわからないけどヨウのダンジョンよりは確実に多いはず。コアを壊すつもりでないと勝てないだろう。

アタシがやるのは……露払いだ。


ダイバーによる情報をネットで集めた感じ、トーキョーダンジョンのモンスターは30分で一度リポップする。

自動で倒されたモンスターが召喚される設定にできるとヨウがいっていた。

手動でも召喚は可能だけど、操作が必要なのでそれなりに手間は食う。

アタシ達の作戦は単純明快。

戦争開始30分を切った段階でアタシがトーキョーダンジョンに攻め入り、戦争開始までに可能な限りダンジョン内のモンスターを殲滅すること。

戦争が始まった後はモンスターの追加は出来ないからだ。

始まる前に戦争相手に情報を漏らしたことを後悔するんだね。 


トーキョーダンジョンの攻略された階層はダンジョン協会の発表だと49まで。

50からは未踏破なんだけど、アタシが攻略することで戦争にはそれ以上の階層が追加される。

最近、アタシが何度か通ってるしまたDPも献上する。

そんなわけでこの作戦は諸刃の剣なのだ。


『時間よ、ポチ』

「うん」


ここからはノンストップダンジョン攻略だ。

速度を落としたら爆発するつもりで行くよ。 


「Go ahead,make my day」


お気にの台詞で気分を上げて、アタシはダンジョンに突っ込んだ。



その日、トーキョーダンジョンの数時間消失、及びダイバー達の強制転移が発生した。しかしそれ以上に、前触れのように発生したある事象がその後永きに渡り伝説……というより、怪奇現象という形で語り継がれることになった。

幾多のダイバーが目撃者となり、ライバーのカメラにも記録されたその現象はこう呼ばれることになる。


頭パーン現象、と。


「ヨーウとの暮らし守るためーアタシははしり~。おまえはもう死んでいる……なーんちって」


はい、ダンジョン攻略中です! お騒がせしております! フルステルスの通り魔です! お邪魔します!

目につく端からモンスターの頭を念動力で爆ぜさせるか、手か足を叩き込むかしてダンジョン浚いです!


この日の為に一度40層のボスは倒してきた。

ほら、ボス部屋の待ちが一番時間食うからね。

もしボス戦に他のダイバーがいたら一度地上に戻ってボス部屋の先から再突入するつもり。

特に40層ボス部屋前は簡易の拠点になってて人がたくさん詰めてるんだよね。


今回は目撃とか事件になるとかそんなことはお構い無し。迷宮の行き止まりも、丘の草木の影もしらみ潰し。

他ダイバーと戦闘中でも横入りして一発でモンスターの頭をぶっ飛ばす。


「ふ~ん、ふふふん、ふ~んふ~ん。ふ~ん、ふふふん。ふ~ん」


威風堂々を鼻歌で奏でながら5分足らずで50階層のボス扉前。人はいない、幸いボス待ちは必要なさそうだ。


「お邪魔しま~す」


一応初見だし、ここからは情報も無い未知エリア。

時間はかなりいいペースだし少しだけ慎重になる。

突入してきたアタシに突きつけられる視線、その数18。9本の首に1つの胴体、黒い光沢の艶めくウロコの巨大な蛇の怪物が出会い頭に、あ、いかにも吸ったらヤバいよ、みたいな毒の息をもふぁ~~っと吐きかけてきた。


「ブレスケア!」


直後に9つすべての頭とついでに胴体が弾けとんだけど。


「いぇい! ヨウ~50層クリアしたよ」

『え、まだ5分も経ってないのに?』

「うん! あ、急がなきゃだったね。まだ先があるみたいだし」

『ここからは本当に何があるかわからないから、気をつけて』

「は~い!」


転移門が出現したってことはまだダンジョンは続いてるってことだね。

アタシは更なるダンジョンの奥へ続く魔方陣に足を踏み入れた。






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