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第28話 陥落、トーキョーダンジョン

「あぁもう! やっとわかったわ!」


私、ことヨウはアパート風マスタールームでダンジョンコア相手に四苦八苦していた。

だって戦争なんて初めてだし、コアのヘルプ機能だって小難しくてわかりにくいんだもの!


まぁとりあえず敵マスターの進攻はオープンウォーターエリアが防ぎきってくれたみたい。

バカみたいに広く深くした海洋地形に“海洋生物”ガチャで出たサメ型モンスターを大量に放しただけというやっつけ階層だ。 

我ながらひっどい構成だとは思うけど、凝ったダンジョンなんて私が作れるわけがないし。


ガチャで1度当たったモンスターは図鑑に登録されてモンスターランクに応じたDPを支払えば幾らでも同じモンスターを増やせるってのは便利ね。

ウヨウヨとサメ型モンスターのいる海は泳げなきゃどうにもならない……と思ってたんだけどまさかゴーレムがあんなに潜ってくるというか沈んでくるとは思わなかったわ。

URサメモンスター、メガロドンのメグちゃんが噛み砕いてくれたから良かったけど。本当レベルとかサイズとかめちゃくちゃ強化しといて良かったわ……。


ちなみにポチはこのエリアを3秒くらいでクリアしてった。続きも大概な、ポチじゃなきゃクリアは無理よねってエリアが続いてるけど、敵の進攻は止まっちゃったし御披露目の機会は無さそうね。

攻略不可なクソダンジョンをポチに攻略させるってズルい作戦よね……。ま、勝つためだし悪く思わないでね。


「よし……ダンジョン内モンスターを、進攻エリアに転移……これでいいかしら?」


ポチの攻略情報でだいたいの敵ダンジョンの構成も判明してる。陸地しかないみたいだしウチの進攻モンスターで十分いけるハズ。ちょっとサイズの大きい子は苦労しそうではあるけど。

ポチのスマホに入れといたケイロクンアプリの情報共有でダンジョンの複雑な地形も最短距離が分かってる。

むしろあの攻略スピードで正確に経路をだせるアプリが凄すぎるのだけど。


「いってきて! ティラ吉! with 2000匹ラプトル!」


URランクマッドティラノサウルスのティラ吉と、Aランクソルジャーラプトル……まぁヴェロキラプトルって呼ぶ方が私は馴染みが深いんだけど、とにかく“恐竜”パックで引いたモンスターナイズされた恐竜達が私の進攻戦力だ。

……種類が少ないのは召喚とか管理が面倒だからよ。

ちゃんとダンジョン内にはいろいろいるんだから。


DPをつぎ込んだティラ吉は言うまでもなく、ラプトル達もAランクで強化無しでもかなり強い、ランクの低いゴブリンやオークじゃ装備込みでも歯が立たない。

敵マスターは進攻を諦めたのか、進攻用戦力を防衛に回して来たみたいで迷宮にモンスターがひしめいていたけれど、ラプトルが雑魚に飛びかかり鋭い爪で急所を裂き、ティラ吉が強そうな奴を相手して叩きつけ踏み潰し噛み砕く。自分でやるのは嫌だけど血を見るのはむしろ好きだったりする。


あとさ、なんかねー。私のダンジョンのDPだけど、使っても使っても3Pから減らないの。だからいっぱい使っちゃったわ。あははは。


そーこーしてる間に10層のボス部屋にティラ吉とラプトル達がたどり着いた。

ポチが何度もいろんな目にあってる因縁のボス部屋よね、実際。


「こいつ……ポチの話だと50層のボスじゃなかった?」


いたのは、ポチ曰く頭いっぱい蛇……見当はつけてたけどヒュドラであってるみたいね。

えぇ、50層守ってたんじゃないの?

もしかしてモンスターの入れ替えは自由ってボスにも適応されるの?

最悪ポチが苦戦したとんでもなさそうなのが鎮座してたかもってこと?……あっぶな。

でもここにいないってことは出せないってことだし、敵はもう出し惜しみ無しみたいだし、ここを抜けば勝利に大前進ね!


ヒュドラの9つの首から吐き出された健康に悪そうな色のブレスをティラ吉のなんかバチバチいってるどす黒いブレスが押し返す。……ティラノがブレスってどうかと思うけど撃てるんだからしょうがないじゃない。

破壊力重視のブレスの方が撃ち合いには有利に働いて、

ゴバアアアッとティラ吉ブレスが直撃。

首が3本くらいぶっちぎれて飛んでった。


でも千切れた部分からウゴウゴウニョウニョまた首が生えてきた。たしかヒュドラってあれよね、首全部同時に潰さなきゃダメなのよね。

そういうわけで知性強化した指揮官役、ラプトルのラッフィーちゃんに伝達しよう。


「ラッフィーちゃん! 首を全部同時に潰さないと倒せないわ!」


ギュアっとお返事出来て偉いぞ~ラッフィーちゃん。

ラッフィーちゃんはギュアギュアとティラ吉とラプトル部隊に指示を出したみたいね。


ラプトルが数頭がかりでヒュドラの首に飛び付いて爪を立てて食らい付き押し付けていく数の暴力。

極めつけは、意外とジャンプとかできるティラ吉が胴体部分に飛び乗って真下にゼロ距離ブレス。

9本のビチビチ動く首だけ残してヒュドラは無事爆散。

偉いぞダイナソー!


あとは消化試合というか、ろくにモンスターのいない狭い鍾乳洞みたいな通路をラプトル達が駆け抜けてティラ吉が少し苦労して……最後にはあきらかにキレた感じにブレスで地形ごとこじ開けて通ったくらいしか見所はなかったわ。

時間ギリギリポチ襲来作戦が完璧にハマッたわ。


それで最終防壁というか、99層は隔壁みたいにとにかく真っ黒な分厚い壁が何十枚も一定間隔で並んでて通せんぼ。

ここからは絶対通したくないってありありとわかる。

でも通してもらいまーす。

ティラ吉ブレスでぶち抜いていくこと数十分。

マスタールームへの転移門が正面に見えた。


「……ストップ。ここのマスター性格悪いから……ほらやっぱりトラップ!」


ラプトル1頭が漢探知で転移門に飛び乗れば案の定。

紅く染まった転移門……転移トラップだ。

まぁ分かってるなら飛び退けばそれでお仕舞いなんだけど。

最奥が周りの壁と同じ見た目に擬装した崩せる壁で、その向こうにまたマスタールームへの転移門があった。

これは……さすがに本物みたいね。


「よーし! じゃあ敵マスターとご対面といきますか! ……ティラ吉が」













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