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第38話 ダンジョンの負のアレコレとアレ

「許せないのは! こんなに何でもかんでもあって何故かシアターの1つも無いってことよ?!」

「ね~」

「ヨウさんって本当に映画がお好きなんですね」

「僕らはあまり映画を見ないのでシアターのことは気にしてなかったですね……」


ハル&アキと合流して買い物済ませてまたまたフードエリアでお夕飯を食べておりまーす。

え? アーマリッシュの2人はどうしたかって?

アタシはちょっとよくわかんないんだけどヨウがダンジョン機能でなんやかんやしてたみたい。

また家に帰ったら詳しく教えてくれるって。

もちろんちゃんと会社に帰したし、アタシとハル&アキの装備用にオリハルコンも渡しておいたし、あとはアレ! インディのPV見せて探検服もフルタイムアーマー加工で作ってもらえるようにお願いしておいたから完成が楽しみ!


ウィンドウショッピングであちこち冷やかしたり配信機材屋さんでフローティングカメラとチョーカーマイクを新調。ついでにハル&アキの分も新調したから一応今日予定していた買い物は終わり。食事を済ませて映画でも……と思っていたらなんとD-MALu にはムービーシアターが存在しないというのだ。なんてこったい。


「なぁに? アキぃ? アンタも映画はオワコンとでも言うつもりぃ?」

「い、いえ! そんなことは!」

「ほーら、ヨウ。アキ君に絡まないの。えい」

「む、もぐもぐもぐ」


沢山頼んでおいたのはピザとか串カツとかソーセージ盛り合わせ、あとはまたフライドポテト。ポップコーンと並んで好きなんだよね、細く揚げたやつ。


女子3人男1人だけど女子会メニューからかけ離れたジャンキーメニューだ。まぁアタシは太らないしダイバーやってる2人も問題なし。ヨウに至っては分身体だ。


黒ビールを既に2杯飲んで出来上がったヨウがアキ君にウザ絡みするのをソーセージを口に突っ込んで恵方巻サイレントさせた。


「でも観劇場はあるのにシアターが無いのもおかしな話ですよね」

「む……むぐ……ぷはっ。認めたくは無いけど映画産業はかなり下火だからね。ま、映画だけじゃないけど。いろいろな娯楽産業がダンジョン配信に押されてるの。そもそもダンジョンが娯楽として楽しめるようになったのはここ10年くらいでかなり目新しいわけ。おまけに本物のモンスターでしょ? 娯楽産業なんて互いが互いに競合しててそこに超大型新コンテンツが出たらそりゃ人気を持ってかれるわよ」


ソーセージを飲み込み黒ビールをあおったヨウは早口でダーッと一息に愚痴を溢す。こうなったヨウはなかなか止まらないんだよね。


「映画はまだマシよ? ジャンルがいろいろあるから恋愛モノとかヒューマンドラマメインなら新作もまだまだ息してるし。昔の名作も配信で見られるわよ。シアターはめっきり減っちゃったしパニックホラーとかアクションメインだとどうしてもダンジョン配信に負けちゃうけどね。スポーツ業界はもっと厳しいらしいわ。なにせレベル上げた素人のほうが遥かに運動できるからね。レベルって計れないから制限も出来ないし、消えないドーピングなんて言われてるの。もう対等な条件での試合は出来ないって言うのが専門家の意見よ」

「たしかに……僕らが物心ついた頃にはスポーツの報道はほとんど無くてダンジョン関連の報道ばかりでしたね」

「学校の授業で習いました……。昔、まだレベルという存在の認知が甘かった頃、格闘技の試合で死者まで出たって。私達も力加減にはかなり気を使うように教わりますし、そういう訓練もあります」

「ポチ、アンタも気を付けなさいよ?」

「わかってるよー」


そりゃあもう細心の注意をはらっていますとも!

だってアタシが加減とか制御しそこねたら抉れちゃうから! トーキョーが!


ダンジョンやレベルの存在は、人類全体にとっては資源不足を解決したり新技術の発明に繋がったりといいことの方が多いんだけど、一部業界には逆風らしい。

あっちを立てればこっちが立たず世の中はいつも世知辛い。ま、アタシはヨウとダラダラ出来れば幸せだけど。


「んー……アンタ達、家は? どの辺?」

「僕らは実は都内じゃなくてサイタマなんです。ダンジョンまではシャトルと徒歩で」

「今から移動したら間に合うかしら……ナイトショー見て……深夜かぁ。明日学校よね? ていうか門限とかある?」

「あ、はい。私は22時までに帰ってきなさいって」

「僕も23時までと」

「じゃあ仕方ないわね……なぁに? 2人ともいいとこのお坊ちゃんにお嬢ちゃんなの?」


ヨウは「今後の為に映画見せときたかったのに」とか「いっそ魅了して……いや、まだ早い」とか小言のようにぶつくさと溢していたけど、思いついたとばかりにパッと顔を上げた。


「よし決めた! アキ、ハル! アンタ達配信サービス契約しなさい! 料金は私が持つから! ほら端末出して!」


とまあ、そうやってヨウは強引に2人の端末からアタシ達が使ってる動画配信サービス……『Cinema Legacy』に登録してしまった。


「はい、オススメ作品一覧ね。三大サメ映画でしょー、ジュラパ全部に、グリードとトレマーズは外せないわよね~!あ、あとアナコンダあたりも追加っと」

「ヨウ……モンスターパニックばっかりじゃん! もっと他にあるでしょ!」

「ほら予習よ、予習!」


あ~……たしかにいずれヨウのダンジョンに招待するなら見といたほうがいいラインナップなのかなぁ?

え? ていうか恐竜とかサメだけじゃなくゲテモノクリーチャーもそのうち追加する気なの?


とはいえあんまりにも偏りすぎなラインナップだったからアタシのオススメも追加しとこっと。

バーフバリでしょ~RRRでしょ~ロード・オブ・ザ・リングは外せないし~。あとはあとは……。

結局ヨウと2人がかりで作ったオススメ一覧なんと50作品。うん、やりすぎた。ハル&アキの口がぽっかーんとしてるよ。


「それじゃいい頃合いだし。今日はお開きかしらね。アンタ達、全部とは言わないけど映画見なさいよね? 面白いんだから!」

「は、はい! 頑張ります」

「どれから見たらいいかな……またLimeで教えてくださいね」

「おっけ~!」


シャトルの発着場で別れてハル&アキを見送ったらヨウとアタシ2人きりだ。せっかくのお出かけだしもうちょっと何かしたいなぁ。


「ね、ヨウ。映画見にいこうよ、映画。なんかもうその気になっちゃっててさ~」

「たしかに。じゃ、Zシアター寄って行こっか」

「いぇーい! ヨウ~掴まって~」


というわけでヨウをお姫様抱っこしてステルス&フライハイ。ビューンと行きつけの映画館に飛んでいくことにするのだった。












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