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第43話 指令部(制圧済み)よりどうぞ


「ミツキ、今どんな感じ?」

「はい、ヨウさん。一行は41層待機メンバーと合流後、順調に攻略中。45層を突破しました」

「あんまり不信感持たれないようにモンスターの数とかはいじってないんだけど、なかなかやるわね~」

「一応は高レベルの集団です。戦闘能力は確かかと。ポチさんとは比べるべくもありませんが」

「じゃ、ぼちぼちカメラの用意しとかなきゃね」

「えぇ。……あなた達、配信カメラの設定は出来ていますね?」

「「はい、ミツキ様、ヨウ様」」

「ふふ、ふふふ……なんていい気分なのでしょう」


あぁあぁもうミツキったら上機嫌。

そんなに自分のとこのメンバーを顎で使えるのが嬉しいのかしらね?

攻略メンバーが出払った後裏方だけが残ったクランハウスに、既に眷属になっていたミツキを介して私が侵入……というか強襲。

全員を魅了して今にいたるわけだけど……このプランを立てたのはミツキなのよねぇ。

私とポチ的にはちょっと怖い目にあって貰おうくらいのつもりだったんだけどね……クソヤロウは除いて。


確かにコッチ側に引き込んだのは私だけどまさかこんなことになるなんて。……頭の回る人を敵にまわすのは怖いわね。

そう、2日前。

ファミレスでの一件の後、私は「ポチの加入について話したい」とミツキを呼び出しポチ曰くクソコンボ、魅了からの眷属化をしたの。


あ、眷属化っていうのはダンジョン機能のひとつでね?

簡単に言うとダンジョン側に引き込む為の機能なの。

私は“コッチ”に引き入れるって言ってるわね。


最下層到達とか、DP1000万くらい使う契約書とか、自主的にじゃないとダメとか諸々前提条件とかあるんだけど私の場合、魅了して近くに入り口開けて強制的に条件満たしちゃえるのよね。これがクソコンボって呼ばれる所以。

ちなみに誰でも眷属化できるわけでも無いらしくて、例えばポチはダンジョンレベルが足りませんってエラーになっちゃうのよね。

眷属は戦争に参加できるからポチがいてくれたら百人力どころか億人力だったのに。


ともかく、私とポチの目的の為に眷属化で仲間?を増やしているわけ。


んでミツキの話ね。

ミツキったら眷属化してダンジョンについて伝え終えたら一番に何て言ったと思う?


「潰しましょう! あのクラン! 完膚なきまでに!」

「「えぇ……」」


私とポチの標的はタケルだけだったんだけど、ミツキの恨みつらみは想像以上でさ、んでもってミツキのクラン壊滅プランは最高に面白そうだし採用したわけ。


さてさて、憐れな生け贄の羊達は何も知らないままについに50層ボス前に到達したみたい。

ちなみに50層のボスは倒させてあげるつもり。

調子に乗ったところを奈落に突き落とした方が楽しいからってミツキがね?

鎮座してるのは、ポン出しヒュドラに安上がりの黒鉄化しただけのハリボテ黒化ボスだけど手応えとかは現場のポチが調整してくれるから問題なし。


名付けて『指令部の罠』作戦……いざ開始!

私と目配せして、ミツキはほくそ笑み頷くとマイクに向けて口を開いた。


「海堂さん……まもなく配信を開始します。海堂さんを映しているカメラがメインで、他メンバーのカメラはサブチャンネルで切り替えながら配信します」

『おう! わかった!』

「ではカウントダウンします。5,4,3,2,1……配信開始」 


さて、私も配信を見るとしようかしらね。

ポップコーンよし、ドリンクよし。

本当はポチと一緒に見たいんだけど、ポチは今回の罠に欠かせない役割があるし……。

あとでいっぱい褒めてあげなきゃね。


事前の宣伝と豪放磊落のネームバリューのおかげか配信待機者も3万人越えてるし、最高の祭りになりそうだわ。


『よう! おまえ達! Sランククラン、豪放磊落。マスターの豪羅だ! 今日はおまえ達に特別な景色を見せてやるつもりだ。 我々は50層ボス、黒化ヒュドラを討ち果たし、未だ誰も足を踏み入れたことのない51層へと進む。 先の異変で40層から先へ進み、調子づいてる連中もいるようだが、生憎と我々は常に先駆者でありそんな連中眼中に無い。そうだろう!? 我が同胞達よ!』

『『おぉおおお! 豪放磊落! 豪放磊落!』』

『行くぞ! おぉおおお!』 


鬨の声に合わせて豪放磊落のメンバーがボス部屋に雪崩れ込んでいく様子はなかなかに迫力があるわねー。

ゴウラさんとやらの演説も様になってるし。


ポチはというと、どうやってるのかよくわかんないけどカメラに映らないようになってたりする。

ステルスの応用らしいけどポチも感覚でやってるみたい。 

ま、協力の条件として目立たないようにするって約束だし。

表向きの役割もゴウラさんに偽ブーストしたら後方待機だし。


さぁて戦闘開始。

ボスのやられ役ヒュドラちゃんは健気にお約束の開幕ブレス攻撃。

弱、とはいってもモンスターランク的にはかなり強くて同格なら頭一つ抜き出してる。

強化次第で格上のティラ吉と勝負になるくらいだしね。


豪放磊落も手の内は割れてるとばかりに、魔法担当の複数メンバーが嵐魔法、トルネードウォールの多重発動。

毒々しいブレスを塞き止めた。


「前衛、突貫。首一つに3人で釘つけにしてください。海堂さんは爆裂撃を胴体に……」


一応は的確な指示を出すミツキはずっと「まだだ……まだ笑ってはいけません」って漏れそうになる高笑いを堪えてる。

ミツキの指示通りに動いた前衛に、私の指示通りに動いたヒュドラちゃんが律儀に首9本全部使って噛みつきで前衛に対応。

当然がら空きになった胴体はほーら狙ってくださいと言わんばかり。

歴戦の猛者らしいゴウラが見逃すはずもなく……。


『どぉりゃああああ!』


掛け声一発、爆音一発。

例の特撮アタックがどっごおおおんと炸裂。

やっぱ絵になるわぁ。

あえなく木っ端微塵になったヒュドラちゃんにはダンジョン機能で別フロアで復活させてお詫びにお肉をたくさん用意しておいたからね。


さぁ……進みなさい。

飛びきりの罠の待つ51層に。

さぁさぁと爛々とした目で成り行きを見守る私と美月の耳をつんざくような悲鳴が突然迸ったの。





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