「先生! ヴェスク君の治療お願いしますー。」
「はい~、今日の患者君ねー。まかせてー。」
そして、レティが俺の耳元で囁いた。
「あの先生は、気に入った生徒を誘惑するらしいよ。といっても、本当に気に入った生徒だけらしいけど…。ヴェスも気を付けてね。誘惑に乗っちゃダメだよ。」
「先生ー、じゃあ私はこれで。」
と言い、レティは去って行った。
回復術室の先生は、眼鏡をかけていて、足が長く、胸元がちらりと見えていて、目がぱっちりしていた。そして、どこかふわふわした感じで少し抜けてる雰囲気があるが、色気もあるような先生だった。それに、いい匂いがした。なるほど、なんかえちえちだ!
「治癒魔法を多めに使っとこうかねー。」
「はい、お願いします。」
辺りを緑がかった光が包み込む。すると、あら不思議。気分が良くなった気がする。治癒魔法って不思議だよね。気分が悪いのも治っちゃうんだから。
「あと、ちょっとベッドで寝てなさいー。」
「分かりました。そうします。」
「君が噂の銃使い君?」
「はい、そうです。」
「君には期待してるよ。先生は君をしっかり見てるからねぇ~。」
「はい、ありがとうございます。」
「君、可愛い顔してるね。私とキスしない?」
「それはまずいんじゃないですか?」
「何がまずいの? 君が私のことを魅力的だと思うならいいでしょ?」
初対面の先生にそんなこと言われるなんて、今世の俺がイケメンだからか、この世界の女性が積極的だからか分からないけど、すごいことになってしまった。前世なら一発で逮捕されるだろうな。この世界ではそういうのって大丈夫なのか?
「とにかく、寝ます!」
「可愛いね~! また寝て回復したら、いつでもここに来ていいんだよ~。」
「は、はい。」
そう言って、俺は眠った。夢の中で前世のことが出てきた。母と父と兄弟とワンコと一緒に、ワンコも泊まれる旅館に泊まる夢だ。ワンコを膝の上にちょこんと乗せて、豪華な食事を食べる。あれほど幸せなことはなかった。この世界でもそんな幸せを迎えたいと思いながら、時計を見ると2時間ほど経っていた。
2時間寝たのか。そういえば、この世界にも時計があるんだな。形状は少し違うけど、前世の世界と似てる。そんなことを考えていると、先生が声をかけてきた。
「銃使い君、ご気分はいかが?」
「だいぶ良くなりました。先生の治癒魔法のおかげです。」
「そんな大したことしてないよ。」
「また体調悪くなったら、いつでも来るんだよ~。」
「はい。」
思いがけないトラブルはあったけど、俺は回復術室を後にした。
1年生の授業が行われているところに移動すると、錬金術の授業だった。
なるほど、錬金術を行うには魔力が必要だと…。俺にはできないじゃないか…。ここでも魔力がないことの弊害が出てきてる…。
いや、銃に魔法を込められるんだから、魔法が使えるうちに入るのかな? どっちにせよ、銃でしか攻撃できないことに変わりはないけど。
そうだ、銃を使えるメリットをソフィ先生に聞いてみよう。
魔法が使えると錬金術ができるように、銃が使えると何か役に立つことがあるんじゃないか。
自分が今考えたのは、1.狩りができる、2.狩りができる、3,4がなくて、5.狩りができる…。あ、狩りができるくらいしか思いつかない。
魔法でも狩りはできるし。気になって夜眠れないから、今日中に先生に聞いてみよう。
1年生の銃使いの先生に聞いてみるか。まあ、自分の担任の先生なんだけど…。
俺の担任であり、銃科の担当でもあるソフィエラミスティーク先生。学校でも有名な銃コレクターで、小さい頃は魔法の天才と言われたらしいけど、親の反対を押し切って銃の道に進み、銃科の先生を志したそうだ。うちの町でも有名な先生で、学校に入る前から知ってた。
名前が長いから、みんな「ソフィ先生」と呼んでる。本人は「ソフィって感じの名前じゃないよね」とよく自分で言ってる。
今日の講義も終わったし、ソフィ先生のところに行ってみるか。
「ソフィ先生、少し質問があります。魔法が使えると錬金術ができるように、銃が使えることのメリットってありますか?」
「そうだなー、素手でやるより狩りが簡単にできるぞ! あと、銃のコレクションをしたくなる。銃のコレクションはいいぞー。私は学園一の銃コレクターだからな。わはははー。まぁ、本当のところは、銃で魔力の消費がない魔法のような火力のある魔法弾薬を使えるところかな。でも、やはり、銃を撃った時の反動、破壊力に勝るものなしだなー。わはははー。」
銃のコレクションをしたくなるって何だ。この先生、ふざけてるのかな? 俺がこの先生に聞いたのが間違いだったかな…。そういえば、この先生いつもレザーパンツを履いてるな…。なんでだろう? ついでに聞いてみようかな。
「先生、なんでいつもレザーパンツ履いてるんですか? レーザー大好きなんですか?」
「レーザー?」
「いや、ちょっと噛みました。」
「ああ、私の心に赤色のレーザーを打ち込むのかと思ったわ。情熱的だなと感じたけど、違うの?」
「いや違います!」
「君、可愛いから先生のこと好きになってもいいのよ。私とヴェス君のひ・み・つだよ。」
「いえ、大丈夫です。」
「そんなー、つれないなー。」
噛んでしまった俺も悪いけど、この先生ちょっと苦手だ…。でも何か憎めなくて、嫌いになれない。あ、引き続きこの先生と積極的に話してみよう。銃のことをもっと勉強したいし。あと思ったのは、この世界の女性はやっぱり積極的なんだろうか。まあ、嫌な気持ちにはならないからいいんだけど…。