校庭の東側に着くと、ハイリザードマンが大量にいた。10体ほどだろうか。子のハイリザードマンたちは中級魔法くらいまで使えるようで、ハイリザードマンが魔法を放っている。ハイリザードマンが魔法を使うなんて聞いたことがない。リザードメイジなら魔法を使うけど…。
魔族の魔法でパワーアップさせたのかもしれない。ステータスプレートで見てみた。レベルは120ほどだ。何年か前に父親と戦ったハイリザードマンより、レベルがずいぶん高い気がする。
レーザー先生が指揮を執る。「3人で一組になって、1体のハイリザードマンと戦え」と。
俺はセレナちゃんとレティと組んだ。セレナちゃんとレティは、どっちが回復魔法を主に使うか話し合っているみたいだ。
「セレナちゃんの方が魔力が強いから、セレナちゃんは基本的に攻撃魔法をお願い。私は基本的に回復魔法で、手が空いた時に攻撃魔法を出すから。セレナちゃんは私の逆で、攻撃魔法を中心に頼むね。」
「レティちゃん、分かりました。攻撃魔法、頑張ります。」
「ハイリザードマンは火属性魔法に弱いから、火属性魔法をお願い!」
「分かった! 私の火属性魔法をお見舞いします!」
3人一組でハイリザードマン1体とはいえ、そう簡単にバラけてくれるはずもなかった。俺たちの方にハイリザードマン10体が一気に来た。ハイリザードマンが雌で、俺が何かフェロモンみたいなものを分泌してるのか…?
このままじゃ確実に負けるので、他のクラスメートも合流して、結局全員で10体を相手にすることになった。それぞれ攻撃担当と回復担当に分かれている。基本は魔法で攻撃する人が2人、回復する人が1人らしい。回復担当はたまにアイスウォールみたいな防御魔法も使う。
俺とセレナちゃんとレティみたいに、銃担当、回復担当、攻撃魔法担当で組んでるところはない。そりゃそうだ。このクラスで銃を使えるのは俺とレーザー先生だけだ。
何人かの生徒がアイスウォールやアースウォールでハイリザードマンの行く手を阻もうとする。数十秒は時間を稼げるけど、ハイリザードマンは上級魔物で数も多いから、簡単に突破してくる。そこでセレナが詠唱を始めた。すると、生徒の一人が叫んだ。
「セレナちゃんが詠唱してる! みんな時間を稼ぐんだ!」
「おう!」
ウォール魔法をどんどん重ねて時間を稼いだ。時間は稼げてるけど、ハイリザードマンが疲れてる様子はなく、どんどんこっちに向かってくる。
「セレナちゃん、あとどのくらい?!」
とレティが叫ぶ。
「もう少し!」
そうセレナちゃんが言うと、「テンペストウォール」と唱えた。
「これは上位魔法、テンペストの壁だな。」
レーザー先生が言った。
俺たちに被害が及ばないよう、嵐の壁を作った。これにはハイリザードマンもたまらないようだ。耐えてはいるものの、すごい風で飛ばされそうで身動きが取れていない。
そして、セレナちゃんが言った。
「みんな、また時間を稼いでください。」
セレナちゃんが再び詠唱を始める。結構長い詠唱だ。緑色に光った魔法陣と共に、召喚魔物が現れた。人間の子供くらいの大きさかな?
これってもしかして風の精霊シルフか? 図書館で見たことがあるけど、エルフ族と契約してる風の魔法を自由自在に操る精霊だ。
見た目と違ってとても強力な魔法を使うと言われている。初めて見たけど美しいな。髪は緑色で、羽は薄緑、羽の数は4つ。スカートのようなものを履いて脚を出してるけど、いやらしさはなく、とても美しい印象だ。
その精霊シルフが上級魔法「ハリケーン」を無詠唱で放った。
ハリケーンは風だけでなく稲妻も伴う。クラスのみんながハリケーンから遠ざかる。容赦なく連続でハリケーンを放つ。風の精霊シルフってここまで凄いのか。クラスのみんなが口を開けてポカーンとしている。これには強力なハイリザードマンも苦戦してる様子だ。
そして、少し詠唱をして、最上級魔法「ヘルテンペスト」を風の精霊シルフが放った。最上級魔法をこんな短時間で詠唱するのもすごいけど、そこらの生徒が放つテンペストとはわけが違う。魔力が段違いだ。テンペストって広範囲にわたる魔法だけど、その範囲をハイリザードマンだけに被害が及ぶように制限してるように見える。これほどの魔力は見たことがない。
これにより、ハイリザードマンはすべて討伐された。
「セレナ万歳! セレナ万歳!」
と歓声が上がった。これは誰もが万歳って言うだろう。これがシルフの力、エルフの力か。改めてセレナちゃんの凄さに感心した俺だった。
自分もこのレベルの魔法を銃に込められたら、セレナちゃんみたいに活躍できるかな。そうすれば父さんも喜んでくれるはず。だから、もっともっと鍛錬しないと。やっぱりセレナちゃんに魔法を教わろう。この子は本当にすごいから。