夜が明け、雪に覆われた村が朝日で輝き始める中、慎一とユキは村人たちの視線を受けながら家から出てきた。慎一の腕に寄り添うユキの姿に、村人たちは驚きと好奇心が入り混じった表情を浮かべていた。
「ユキさんと慎一さん……一緒にいるのか?」
誰かがぽつりと呟き、それが他の村人たちの間でささやきとなり広がった。
ユキは少し俯いていたが、慎一がそっと手を握りしめてくれると、顔を上げた。その目には不安と緊張が浮かんでいたが、慎一の優しい微笑みに励まされ、ゆっくりと前に進んだ。
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村の広場に二人が到着すると、村長の老人が慎一とユキに近づいてきた。彼の顔には深い皺が刻まれ、厳格そうな雰囲気を醸し出していたが、どこか優しげな目をしていた。
「慎一君、ユキさん……二人が一緒にいることを認めるつもりなのか?」
村長の問いかけに、慎一は強い意志を込めた目で頷いた。
「はい。僕はユキさんと一緒に生きていきます。彼女が雪女であろうと、それが僕たちにとって何の障害にもなりません。」
慎一の言葉はしっかりとしていて、村人たちにもその決意が伝わるほどの力強さがあった。
ユキはその言葉に感動し、涙を浮かべながらも静かに立っていた。村人たちは一瞬静まり返ったが、やがて一人の女性が口を開いた。
「ユキさんは確かに雪女かもしれないけれど、村に害を与えたことなんて一度もない。それに、慎一さんがここまで言うなら……。」
その言葉をきっかけに、他の村人たちも次々に声を上げ始めた。
「ユキさんが村を守ってくれているのは知っているよ。」
「慎一さんが彼女を選ぶなら、私たちは応援するよ。」
「二人で幸せになってほしい。」
ユキはその声を聞いて驚き、慎一を見上げた。彼もまた、村人たちの言葉に少し驚いたようだったが、すぐに優しい笑みを浮かべた。
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村長はしばらく考え込んでいたが、やがてゆっくりと頷き、口を開いた。
「分かった。二人の決意がそこまで強いのなら、私たち村の者も応援しよう。」
その言葉が広場全体に響き渡ると、村人たちは一斉に拍手を送り始めた。その音は雪原に響き渡り、慎一とユキの心を温かく包み込んだ。
ユキは涙をこぼしながらも微笑み、慎一の手をさらに強く握りしめた。
「ありがとう……慎一さん。そして、皆さんも。」
彼女の声には感謝と喜びが溢れていた。
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その後、村人たちは二人のためにささやかな祝宴を開くことにした。広場には手作りの料理や温かい飲み物が並べられ、村人たちは笑顔で二人を囲んだ。
ユキは初めて村人たちと直接的な交流を持ち、自分が受け入れられたことを実感していた。慎一はそんな彼女の様子を見守りながら、彼女がどれほど幸せそうに笑っているかに胸を打たれていた。
「ユキさん、よかったね。」
「ええ……こんな日が来るなんて、夢のようです。」
ユキはそう言いながら、慎一に微笑みかけた。その笑顔は、これまでに見たどんな景色よりも美しいと慎一は感じた。
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祝宴が終わり、村人たちがそれぞれの家に帰っていく中、慎一とユキは雪の中を歩いていた。夜空には満天の星が輝き、二人の足跡が雪原に続いていた。
「これからは、新しい日常が始まるんだね。」
慎一がそう言うと、ユキは頷いた。
「はい。でも、あなたと一緒なら、どんなことも乗り越えられる気がします。」
その言葉に、慎一は彼女の手を強く握りしめた。
「僕もだよ、ユキさん。君がいれば、何も怖くない。」
二人は互いの手を取り合いながら、静かな雪の夜に歩みを進めていった。その足跡は、未来へと続く希望の道となっていた。