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第6話「シャルとセフィ」

 ◆


 それからシャールとセフィラの二人きりの逃避行は困難が続いた。


 昼は森や岩陰に身を潜め、夜の帳が下りてから星明かりと月灯りだけを頼りに道なき道を進む。


 食料はシャールが用意したわずかな保存食と、道すがら採集した木の実や湧き水でしのぎ、野営の夜は交代で短い仮眠を取りながら、常に追手の影に怯えなければならなかった。


 かつての王太子と公爵令嬢という身分がもたらした柔らかな生活は、もはや遠い夢の残滓でしかない。


 切り傷や擦り傷は絶えず、疲労は鉛のようにその若い身体に蓄積していった。


 そうして幾つかの夜を越える頃には、彼らはついにウェザリオ王国の国境線を越えた。


 そこからさらに数日を要し、ようやくとある辺境の街へと辿り着いたのである。


 その街はラスフェルと呼ばれていた。


 ウェザリオ王国の壮麗な王都とは比ぶべくもない、しかし確かな活気に満ちた場所だ。


 高く堅固な木製の外壁に囲まれ、石畳の道には露店が軒を連ね、様々な人種や服装の者たちが行き交っている。


 聞こえてくる言葉もウェザリオで使われる標準語とは異なる訛りがあり、そこが自分たちの知る世界から遠く離れた場所であることを二人に実感させた。


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 そうしてラスフェルの街に辿り着いたシャールとセフィラは、ひとまず人心地つくため、そして今後の活動の拠点を確保するために、街の中央広場から少し入った路地にある、比較的大きな構えの宿屋の扉を叩いた。


『木漏れ日亭』と古びた木製の看板が掲げられたその宿は石と木材を組み合わせた三階建ての建物で、長旅の商人や腕に覚えのありそうな冒険者風の者たちが出入りしており、それなりの賑わいを見せているようだった。


 扉を開けると、そこは酒場を兼ねたような広い土間になっており、香辛料の匂いとエールの微かな香り、そして人々の話し声が混然一体となって二人を迎えた。


 シャールは周囲の喧騒に一瞬眉をひそめたが、すぐに気を取り直し、カウンターの奥で帳簿に何かを書きつけていた恰幅の良い主人らしき男に声をかける。


「宿の主人か。部屋を借りたいのだが、空きはあるだろうか」


 静かであったが、不思議と周囲の騒めきの中でもよく通る声。


 主人は顔を上げ、シャールとその背後に控えるように立つセフィラの姿を値踏みするように一瞥した。


 二人の服装は旅慣れた者のように簡素ではあったが、どことなく漂う気品と、長旅の疲れの中にも失われていない端正な顔立ちはただの田舎者ではないことを主人に感じさせた。


「へい、お客さん。部屋なら空いちゃおりますがね。うちはご覧の通り、ちと騒がしいんで、静かにお休みになりてえ方にはあまりお勧めできやせんが」


 主人は商売人らしい愛想笑いを浮かべながらも、目は鋭く二人を観察していた。


「構わない。それよりも当面の間、腰を落ち着けたいと考えている。できれば静かで日当たりの良い部屋を用意してもらいたいのだが」


 シャールはそう言うと、懐から革袋を取り出し、中から一枚の金貨をカウンターの上に滑らせた。


 それはウェザリオ王国の王都で鋳造された、純度の高い金貨であった。


 主人の目が、その金貨に吸い寄せられるように見開かれる。


 しかし次の瞬間にはその表情がわずかに曇った。


「こいつは……確かに上等な金貨のようだがね、お客さん。あいにくだが、このラスフェルじゃあこんなモンはそのままじゃ使い勝手が悪くてねえ。両替屋に持ってくにも手間がかかるしねぇ」


 主人はわざとらしくため息をつき、迷惑だと言わんばかりに首を振った。


 辺境の街では大都市の通貨よりも、現物や地域で流通する小額貨幣の方が重宝されることも少なくない。


 しかしこの態度には主人なりにシャールたちを見定めようという意図があった。


 こんな宿でいきなり金貨をぽんと放る者は間違いなくワケアリと言ってもいい。


 すげなく追い返す事もできるが、それでも金貨は欲しい──そう思った主人の会話の妙である。


 こういった会話から相手の人柄を見極めていくのだ。


「ふむ、そうだろうな」


 シャールは主人の反応を意に介した様子もなく、静かに頷いた。


「両替の手間については理解している。だがこの金貨の価値もまたお分かりのはずだ。一泊とは言うまい。これで部屋をどれほどの期間借り受けることができるだろうか」


 シャールは探るように主人に問いかけた。


 その言葉には単に宿を求めるだけでなく、相手の出方を見極めようとする冷静な響きがあった。


 焦って身を隠したがっているというわけでもなさそうだと踏んだ主人は、カウンターの上の金貨を指先で弾き、その重みと質を確かめるようにしながら、シャールの顔をじっと見返した。


 ──この若造からは何かこう、妙な覇気を感じる。こういう男は後々大物になるか、もしくは既に大物か、だ


 そしてこの金貨は間違いなく一級品とくれば。


「ううむ……お客さんのおっしゃる通り、こいつは確かにたいしたもんだ。これ一枚あれば……そうさなあ、うちの三階の、一番静かで日当たりの良い角部屋なら、食事抜きで一月は見てやれるがね。もっとも、両替の手間賃はきっちり引かせてもらうことになるが」


 主人はそろばんを弾く代わりに、自らの指を折りながら計算して言った。


「一月か。悪くない」


 シャールは短く応じると、こともなげにもう一枚、同じ金貨をカウンターに加えた。


「ではこの二枚でどうだろうか。食事も付けて、そうだな……できるだけ長く、静かに過ごせるように計らってもらいたいのだが。我々はこの街で冒険者になりたいと思っている。ついては、この宿を常宿としたいのだ」


 二枚目の金貨の出現に、主人の目がカッと見開かれた。


 瞳には商売人特有のギラギラとした光。


 これほどの金貨を惜しげもなく出すとは、やはりただの旅人ではない。


 これは大きな商いの機会やもしれぬ。


「へっへっへ……お客さん、そいつは豪気なこった! なるほどなるほど、そこまでおっしゃるんでしたら、あっしとしても男気を見せにゃあなりますまい!」


 主人はカウンターから身を乗り出すようにして、声を潜めた。


「実はですな、三階の奥に、普段はあまりお貸ししてねえ特別な続き部屋がございやす。二間続きで広さも十分、窓からは森の緑が一望できやすし、何より静かで、おまけに専用の湯殿までついてる代物でさあ。そこを、この金貨二枚で、そうさな……三月! 食事も朝晩しっかりとお付けして、この木漏れ日亭が責任もって、お客さん方が安穏に過ごせるようお世話させてもらいやすよ!」


 その変わり身の早さと、提示された条件の良さに今度はシャールがわずかに目を見張る番だった。


 辺境の宿とはいえ、それほどの部屋を三月も借り受けて、さらに二食が付くとなれば今のシャールたちには十分に思える。


 主人側がかなりの誠意を見せたとさえ言えるだろう。


「……その条件、確かか?」


「へい! この木漏れ日亭の亭主、バルトの名にかけて間違いはございやせんとも! お客さん方のような上客に、嘘偽りは申しやせん!」


 バルトと名乗った主人は、胸を叩いて請け負った。


 嘘偽り、ぼったくりの類はない。


 だが、恩に着せようという考えはあった。


 冒険者になるというのなら、さぞ大物になるだろうと思ったからだ。


 シャールはセフィラと視線を交わす。


「分かった。その条件で頼む」


 シャールがそう告げると、主人のバルトは満面の笑みを浮かべ、カウンターの裏から特別に磨き上げられたであろう鍵を取り出した。


「毎度ありがとうございます! ささ、どうぞこちらへ! 最高の部屋へご案内いたしますぜ!」


 こうして二人は、ラスフェルの街での最初の、そしておそらくは当面の安住の地を思いのほか有利な条件で確保することができたのである。


 部屋に通される道すがら、セフィラはシャールにそっと囁いた。


「シャール……お見事でしたわ。まるで歴戦の外交官のような交渉術ですこと」


「いや……相手が欲を出してくれたおかげだ」


 ◆


 部屋にて。


 身なりを整え温かい食事を腹に収めると、シャールは部屋の窓辺に立ち、眼下に広がる街の喧騒を静かに見つめていた。


 セフィラが彼の隣にそっと寄り添う。


「セフィラ、すまないな。話す順序が逆になってしまった。宿の主人──バルトに話した事なのだが」


「冒険者になる、という事ですか?」


 ああ、とシャールは頷く。


「今後のことについて少し考えてみたのだが」


 シャールは街並みから視線を外さぬまま、穏やかな声で切り出した。


「まだ宝石もあるし金貨もある。だがいずれ尽きるだろう。私たちがここで生きていくためには何か仕事を始めなければならない。そこで……冒険者になろうと思うのだが、セフィラはどう思う」


「悪くはないと思います──というより、現状それしか選択肢がないかもしれませんね」


 この世界において冒険者とは、特定の国家や組織に属さず、ギルドと呼ばれる互助組織を通じて様々な依頼を請け負い、その報酬によって生計を立てる者たちの総称であった。


 その仕事内容は多岐にわたり、魔物の討伐や危険地帯の探索といった文字通り命懸けの任務から、薬草の採集、行方不明者の捜索、さらには街の護衛や商隊の警護といった比較的危険度の低いものまで様々である。


 実力さえあれば大きな富と名声を得ることも可能だが、同時に常に危険と隣り合わせの不安定な身分でもあった。


 四大属性の魔力を持つ者がその力を活かして華々しい活躍を見せることもあれば、特別な力を持たぬ者でも、知識や技術、そして何よりも勇気と機転によって名を成す者もいる。


 自由ではあるが、それ故に全てが自己責任という厳しい世界。


 それがこの世界の冒険者という存在なのだった。


「もちろん、最終的には私たちは“何者か”にならねばならないだろう」


 シャールはセフィラに向き直り、その手を優しく握った。


「だがまずは日々の糧を得ることが必要だ。そして冒険者ギルドに登録すれば、身分を証明するものも得られる。それは流浪の身である私たちにとっていくらかの助けになるかもしれない」


「確かにそうですね……ただ、危険ではありませんか?」


 彼女はシャールの力を信じてはいたが、同じくらい身の安全も危惧している。


「確かに危険な側面もあるだろう」


 シャールは率直に認めた。


「魔物との戦闘や、無法者とのいざこざに巻き込まれる可能性も否定できない。しかし先ほども言ったように、冒険者の仕事はそれだけではない。ギルドには私たちの今の力でも十分にこなせるような、日常的な依頼もあると聞いている。例えば、街から街への手紙を届ける仕事や、特定の品物を採集してくる仕事などだ」


 彼はセフィラの瞳をまっすぐに見つめた。


「それに……私たちのこの力だ」


 シャールは自らの掌を広げ、そこに宿る見えざる力を感じ取るかのように目を細めた。


「この“無の魔力”は冒険者という仕事には向いているかもしれない」


 セフィラはしばらく黙ってシャールの言葉を吟味していたが、やがてはっきりと頷いた。


 瞳からは不安の色が消え、代わりにシャールへの深い信頼と、そして新たな道への好奇心にも似た光が灯っていた。


「シャールがそうお決めになったのなら、私はどこまでもお供いたします。それに、私も興味があります。エルデ公爵家にあった書物はほとんど読んでしまいましたし……市井にはきっと色んな書物が出回っているのでしょうしね。珍しい景色、珍しい植物、珍しい動物──そういったものを自分の目で見られるかもしれないと思うと、少し興奮してしまいます!」


 いつもの冷静な彼女からは想像もつかないようなはしゃぎっぷりである。


 シャールはそんなセフィラの姿を愛おしく思い、彼女の額にそっと口づけを落とした。



 ◆


 そうして「木漏れ日亭」での生活にも少しずつ慣れ、ラスフェルの街の地理や空気にも馴染み始めた数日後。


 シャールとセフィラはいよいよ冒険者としての第一歩を踏み出すべく、街の中央広場に面した冒険者ギルドの建物へと足を運んだ。


 石造りの建物で、入口の樫の木の扉には交差する剣と盾、そしてそれを囲むように麦の穂が描かれた金属製の紋章が掲げられており、それがこの地域の冒険者ギルドのシンボルであることを示している。


 扉を押し開けると、そこは予想通り多くの人々でごった返していた。


 屈強な鎧に身を包んだ戦士、軽装で俊敏そうな斥候、怪しげな薬瓶を腰に下げた魔術師風の男女、そして大きな荷物を背負った者や、依頼の張り紙を熱心に見つめる者たち。


 そこには酒場の騒がしさとはまた違う喧噪があった。


 シャールとセフィラはその独特の雰囲気にやや気圧されながらも、奥にある受付カウンターへと進んだ。


 カウンターの内側には数人のギルド職員が忙しそうに書類を処理したり、冒険者たちの応対をしたりしている。


 その中の一人──栗色の髪を後ろで一つに束ね、実直そうな印象を与える若い女性職員が二人に気づき、穏やかな笑顔を向けた。


「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか」


「ああ、新規の登録をお願いしたい」


 シャールが答えると、女性職員は「かしこまりました」と頷き、一枚の羊皮紙と羽根ペンを差し出した。


「では、こちらの登録用紙にご記入をお願いいたします。お名前、ご年齢、得意とされる武器や技能、そしてもしお持ちであれば魔力の属性などもご記入ください。ただし、全て偽りなく記入する必要はありません。どの情報を明かし、どの情報を伏せるかはお任せいたします。しかし、この記入した内容によってどういった利益、不利益を受ける事となってもギルドはそれに関知しません


 シャールは羊皮紙を受け取り、セフィラと顔を見合わせた。


 結局、シャールは「シャル」と、セフィラは「セフィ」と、互いに元の名から一文字ずつ減らしたどこか中性的な響きを持つ名を記入した。


 年齢は正直に二十とする、得意な武器としてシャルは「短剣術」、セフィラは「特に無し」とした。


 魔力の属性については、二人とも「不明」とだけ記す。


 女性職員は二人の記入した用紙を受け取ると、特に表情を変えることなく内容を確認しギルドの印を押した。


「はい、登録は完了いたしました。シャルさん、セフィさんですね。こちらがギルドの身分証となります。失くさないよう、お気をつけください」


 そう言って手渡されたのは青銅製の小さな札で、そこにはギルドの紋章が刻まれていた。


「ギルドの依頼は、あちらの掲示板に張り出されております。難易度や報酬も記載されておりますので、ご自身の力量に合ったものをお選びください。何かご不明な点があれば、いつでもお声がけくださいね」


「ありがとう」


 シャルは礼を述べ、身分証を懐にしまう──まさにその時であった。


「おう、なんだなんだ? 見かけねえ顔だな、嬢ちゃん。ずいぶんと上玉じゃねえか。こんな所に何の用だ? 俺が相談に乗ってやろうか?」


 野太く、そして不躾な声がすぐ近くから響いた。


 振り返るとそこには筋骨隆々とした、いかにも場慣れた風体の男が腕組みをしながら仁王立ちしている。


 周囲の冒険者たちはどこか面白がるような、あるいは「また始まったか」といったような視線を向けていた。


 セフィラはわずかに眉をひそめたが、シャルは彼女を制するように静かに前に出て──


 その男の逞しい肩に、ポンと軽く手を置いた。


 男は一瞬、何事かと怪訝な顔をしたが、シャルの次の言葉に完全に意表を突かれることになる。


「素晴らしい筋肉だ」


 開口一番、シャルは感嘆の声を上げた。


 その瞳は真剣そのもので、男の鍛え上げられた肉体をまるで美術品でも鑑定するかのように見つめている。


 あっけに取られた男が何か言う前に、シャルは言葉を続けた。


「無駄な脂肪が一切なく、実戦で培われたであろうしなやかさと強靭さを兼ね備えている。特にその三角筋から上腕三頭筋にかけての連動は見事というほかない。飾りではない、まさに実用的な筋肉だ。日々の鍛錬を怠らなかった証左だな」


 シャルが賞賛の言葉を並べる間、男はただ呆然と立ち尽くすばかりであった。


 やがてシャルはふっと表情を引き締める。


 そして先程とは打って変わって、やたらと威厳を感じさせるオーラというか、圧を放ちながら言った。


「それだけの素晴らしい力と、それを維持するための克己心を持つあなたが──なぜ初対面の女性に対してそのようなぶしつけな振舞いをする必要があるのだ。あなたには──力がある! その力はもっと建設的な目的のために、あるいは誰かを守るためにこそ使われるべきではないのか。こんなつまらないことにあなたの貴重な時間と才能を浪費するのは実にもったいないとは思わないか。目を覚ませ!」


 簡単に言えば説教である。


 しかしそこには相手の存在そのものを認め、その上で生き方を問うような妙な説得力があった。


 困惑したのは男だ。


 ──な、なんだこの若造は……


 男の胸のうちに今まで感じたことのない種類の感情と、それに対する強烈な困惑が渦巻いている。


 何か全身と全霊を以て仕えるべき相手から声をかけられたような、そんな感動。


 そしてそんな人物の前で恥ずべき事をしてしまったという羞恥。


 さらに、そのような感情をなぜ見ず知らずの若造に抱くのだという困惑。


「……あ、あ、本当に、つまらねえ真似をしちまって……すまねえ……本当に……俺としたことが……」


 男は深々と頭を下げると、何かから逃れるようにギルドを去っていった。


 周囲の冒険者たちは男の変貌にただただ呆然とするばかりである。


 シャルは「ふむ」と小さく頷くと、何事もなかったかのようにセフィラに向き直った。


「彼は話せばわかる良い人のようだ」


 そんな言葉にセフィラは苦笑する。


 ──シャールは列強と呼ばれる大国を継ぐべきだった御方。なんというか……れてしまったのでしょうね


 一連の騒動をカウンターの中から見守っていた栗色の髪の女性職員は、大きく目を見開いたまま、しばらくの間、声も出せずにいた。


 やがて我に返ると、内心で大きくため息をつく。


 ──あらら……あの“新米潰し”のバートラムさんを……


 バートラムという男はギルドの中堅冒険者であり、階位にふさわしい確かな実力を持つ。


 そんな彼だが、新しく登録に来る者たちに対してわざと高圧的な態度で絡み、その性根や覚悟を試すという役割をギルドから与えられていた。


 “半端な覚悟で死んでいく新米を減らす”のがバートラムの役割だ。


 強面相手に怯んでしっぽを巻くようでは冒険者は務まらない。


 ある程度子のギルドにいる者はみなバートラムの“役割”を知っている。


 だから周囲の冒険者は止めもせず見ていたのだった。


 受付嬢は目の前にいるこのシャルとセフィという二人の新人に、底知れない何かを感じていた。


 ──この二人、とんでもない大物だったりして


 彼女はこれから始まるであろう彼らの冒険者としての日々に期待する。


 シャールとセフィラ、いや、シャルとセフィの物語はまだ始まったばかりである。



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