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第16話 ハロウィンの戦いトリックオアトリート1

トリックオアトリート1 セクション1


「――もう許さん!奴らを踏み潰せえぇぇっ!!」


カミーラの怒号とともに、三体の巨大ゴーレムが咆哮を上げながら動き出した。夜の街に地響きが轟き、建物が震える。


「……今回は前みたいな戦闘機程度の攻撃じゃ、倒せないわよ!」


頭上から響く高笑いに、ありすは肩をすくめる。


「数が一体から三体に増えただけで、随分と自信たっぷりじゃない?」


「シューティングスター!」


「エリーゼ!」


掛け声と共に、ありすとカミラの足元に魔方陣が浮かび上がる。赤と青の輝きが走り、それぞれの箒が出現した。


ひらりと宙へ飛び乗った二人は、ゴーレムたちの巨大な腕を縫うように飛び交い、空を舞う。


「ゴーレムG3!お前の真の力を見せてやりなさいっ!レッツ・トライクロス!!」


カミーラの叫びに応じるように、三体のゴーレムが空中で編隊を組む。


「トライアングル……フォーメーションだと?」


目を丸くするカミラの前で、三体のゴーレムが驚異の変形を始めた。


一体は頭と両腕に、もう一体は胴体に、最後の一体は脚部に。それぞれがメカニカルな変形を遂げ、ガシンッと音を立てて合体する。


「グレートゴーレムG3、ここに見参!!」


キメポーズを取る超巨大ゴーレム。


「……ねえ、子供向けのTVアニメでも観たのかな、あれ」


「ありすちゃん、あんな人をまともに相手したくありません……」


「同感。さっさと片付けよっか」


ありすは箒でゴーレムの周囲をくるりと一周する。するとその瞬間、ゴーレムの周囲半径100メートルにわたる空間が淡く輝き、異質の気配に包まれた。


「……っ、これは……!」


「結界。あれでもう外には出られないよ、グレートさん」


「ふん、だが術者である貴様を殺せば、結界など消えるのではないか?」


「甘いなー。こっちは――」


ありすがウインクする。


「結界の外に出られる」


カミラとありすは結界の境界をすり抜けるように、ひらりとその外へ出てしまった。


中に取り残されたグレートゴーレムは、しばし呆然と空を睨みつけていた。




以下に、**「ハロウィンの戦い トリックオアトリート1 セクション2」**のラノベ化をお届けします:



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セクション2


『メテオストライク・ハロウィンバージョン』


「閉じ込めたのは良いけど、あの頑丈なゴーレム……どうするの?ずっとあのまま?」


カミラが空中でありすの隣に並び、箒の上で眉をひそめた。


「いくらなんでも永遠に結界を維持はできないよ。だから――攻撃するしかないよね」


「でも攻撃魔法は通じないんだよ? どうする気?」


「――もちろん、物理で。」


ずいぶん軽い口調で言うありすの背後、ゴォン、ガァンッ、と重低音が鳴り響いた。


巨大なグレートゴーレムG3が、空間の結界を拳で叩きつけているのだ。バチバチッと空間に亀裂が走り、紫の火花が散る。


「うそっ!?物理的攻撃で結界が壊れるの!?」


「オホホホホホホッ! さすが私のグレートゴーレムG3!お前は無敵よぉぉぉ!」


ゴーレムの頭上、仁王立ちになったカミーラが両手を広げて高笑いしていた。


だが――


「こっちも、そろそろ終わりにしよっか」


ありすが箒の上で静かに呟いた、その瞬間。


コツン


「ん?」


カミーラの額に、小さな何かが当たった。


「なに? 雨……?」


手のひらをかざすと、ぽとりと何かが落ちてきて、指先におさまった。


「……飴?」


しかしそれは序章に過ぎなかった。次の瞬間、飴、チョコ、ビスケット――色とりどりの菓子が、空から土砂降りのように降ってきたのだ。


「いったっ、ちょ、ちょっと!? 痛いっ、痛いってば! なにこれ!?」


カミーラは慌ててゴーレムに命じ、その手のひらで自分の頭をかばわせた。だがその手も――


バキッ!


砕けた。菓子が、凄まじい速度で落ちてきているのだ。


「ギャーッ!? なにこれ!? お菓子!? お菓子に殺されるうぅぅ!?」


カミーラの絶叫が響きわたる中、無数のスイーツが音速でゴーレムに降り注ぎ、巨体を容赦なく削っていく。バキバキと破壊音が鳴り、巨大なゴーレムがみるみるうちに崩れ落ちていく。


「ありすちゃん、これは……?」


箒で旋回しながら見ていたカミラが、唖然として尋ねた。


「メテオストライク。ハロウィン仕様だよ」


「え? メテオって、あの流星をぶつける強力魔法の……?」


「うん。今回はね、流星の代わりにお菓子を落としてるの」


「お、お菓子でゴーレムを壊すの?」


「音速で落ちてきたら、チョコだって凶器だよ? しかもハードビスケット入り。痛いよー?」


「っていうか、あとで拾って食べる気!?」


「もちろん。全部とは言わないけど……まだ食べられるやつはあるかも?」


「焼け焦げてないといいけど……」


降り止まないお菓子の雨の下で、世界一甘くて危険な戦いが幕を閉じようとしていた――。



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以下に「ハロウィンの戦い トリックオアトリート2 セクション2」を台詞の流れを自然に整えて、欠けていた部分も補完し、ラノベ風に書き直しました:



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トリックオアトリート2


『お菓子の山と約束』


ゴーレムを中心とした結界の内側は、お菓子の墓場と化していた。


ありすとカミラは空からその様子を見下ろしながら、箒の速度を緩めた。


「……あれが、メテオストライク・ハロウィンバージョンの威力ね……」


「お菓子でここまで破壊力あるとは……」


結界の中には、粉々になったゴーレムの残骸が埋もれ、その上をカラフルな飴やチョコ、ビスケットが山のように覆っていた。


「確認に行こうか」


ありすは真剣な顔でそう言うと、魔法のポケットから黄色いヘルメットを取り出し、カミラに手渡した。『安全第一』の文字がちょっとだけユーモラスだ。


「……?」


カミラがヘルメットを見つめていると、ありすは自分のヘルメットをすっとかぶりながら言う。


「魔法は止めたけど、落ちてくるお菓子がまだあるかもしれないから、念のためね」


「……なるほど。合理的ね」


カミラもヘルメットをかぶろうとしたが、ありすがくいっと手を伸ばして止める。


「違う違う。まず、猫耳外して」


「え?猫耳?」


「そのままじゃヘルメットがちゃんと乗らないでしょ」


言われた通り、カミラは猫耳カチューシャを外した。するとありすがヘルメットを装着して、その上から猫耳を再び取り付けた。


「うん、これで完璧!」


「……意味あるの?」


「ぐっど・じょぶ!」


親指を立ててにっこり笑うありすに、カミラは呆気にとられたまま箒に乗り込む。


二人は箒で結界内へと突入し、お菓子の山に着地した。あたりには甘い匂いが漂っている。


「この辺かしら……掘ってみよ」


ありすがスコップを2本取り出し、1本をカミラに手渡した。


カミラは言葉を失った。ナース服と猫耳を装備した少女二人が、安全ヘルメットをかぶってスコップでお菓子の山を掘る――その構図が、あまりにシュールだったからだ。


「……この光景、夢じゃないわよね……?」


「ん? なにか言った?」


「……いえ、なんでも」


ザク、ザクとスコップが音を立てる中、ありすがふと手を止めた。


「……ん?」


ありすの眉がひそむ。


「今……何か、固い感触がしたような……」


その瞬間、微かに聞こえた声。


「……いたい……」


ありすとカミラは顔を見合わせ、すぐにスコップを放り出すと、手でお菓子をかき分け始めた。


「うっ……」


現れたのは、ボロボロになったカミーラだった。


「生きてる!」


「……心配するな……じきに死ぬ……」


「そんなこと言わないで。助けるよ。もう悪いことしないって約束してくれたら、助けるにやぶさめじゃない」


ありすはカミーラをそっと抱き起こす。


「……やめておけ……悪人の約束なんて、信用できない……それに、“やぶさか”だ。“やぶさめ”じゃない……」


「細かいわね……」


カミラが身を寄せる。


「どうして……どうしてあんな下っ端貴族の言いなりになってたの?」


「そうだよ、あんなポンコツ男爵」


「私のコピーなら、私と同じ魔力があるはずでしょ? あんなやつに逆らえないはずがない」


「そうそう、あんなチンカ……」


「ありすちゃん! それ以上は言わなくていいから!」


あまりに下品になりそうで、カミラが慌てて止める。


カミーラはかすかに笑った。


「……コピーの私には、彼しかいなかったの。私を創ったあの人だけが、私の全て……それがたとえ、ポンコツでも……チン……でも」


「……重症だね」


「でも、カミーラ。あなたが“それでいい”って思えるなら、それもひとつの答えかもしれない」


「ただ……」


ありすがカミーラの肩に手を置いた。


「それでも、もう人を傷つけるのはやめようよ。今のあなたなら、別の道を選べるはずだよ」


カミーラは、少しの間、沈黙した。


そして――


「……考えてみる」


と、小さくつぶやいた。


空にはまだ、ゆっくりと飴玉が舞い落ちていた。まるで救いのように。



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