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白い結婚の果てに
白い結婚の果てに
ゆる
異世界ファンタジー内政・領地経営
2025年05月14日
公開日
3.4万字
完結済
侯爵令嬢レティア・ルーンは、家の財政を立て直すために大国の公爵家に政略結婚する。しかし、その結婚は冷たく無情なものだった。夫ライオネルから愛情を拒絶され、孤独の中で過ごす日々――だが、レティアはただ泣き寝入りするような女性ではなかった。 ある日、公爵家の裏に隠された不正取引を知り、彼女はその真実を暴くことを決意する。計画を練り、協力者を募り、冷酷な夫とその一族に立ち向かうレティア。すべてを失い自由を手に入れた彼女が選ぶ未来とは? 冷たい結婚生活を経て、自らの意思で新しい人生を切り開く侯爵令嬢の物語。愛と自由を求めた女性の力強い成長と新たな始まりを描く、希望と決意に満ちた一冊です。

第1話 政略結婚の夜

 大広間に響くのは、貴族たちの笑い声と祝福の言葉だった。花嫁となったレティア・ルーンは微笑みを保ちながら、心の中でため息をついていた。輝くシャンデリアの下で、豪華なドレスに身を包んだ彼女は、隣に立つライオネル公爵の横顔をそっと盗み見た。金髪に青い瞳。公爵らしい威厳に満ちたその姿は、女性たちの憧れを一身に受けるにふさわしい。だが、レティアには彼の冷たい雰囲気が重く感じられた。


 彼は一度もこちらを見ず、形式的な会話を繰り返している。まるで、ただの義務をこなしているだけのように。


 レティアは笑顔を絶やさずに対応するが、心の中では不安と失望が渦巻いていた。この結婚は、家の財政難を救うための政略結婚。彼女の気持ちなど、誰も考慮していない。


 やがて宴が終わり、新婚夫婦の部屋へと導かれる時間が来た。使用人たちの視線が二人に向けられる中、レティアは静かに公爵の隣を歩く。だが、その背筋は張り詰めていた。



---


 豪華な装飾が施された寝室に入ると、ライオネルは無言で扉を閉め、重厚な椅子に腰を下ろした。レティアも言葉を選びつつ、彼の前に立つ。


「今日は本当にたくさんの方々から祝福をいただきましたね」


 ぎこちないながらも会話を試みるレティアに、ライオネルは軽く肩をすくめるだけだった。


「祝福だと?あの場にいた連中の何人が本気でそう思っているか、疑問だな。」


 その冷淡な言葉に、レティアの胸が痛んだ。だが、彼女は耐えるように微笑みを保った。


「そうかもしれませんが、私たちが夫婦になったことは変わりません。これから、お互いに協力し合い――」


 言葉の途中で、ライオネルは彼女の言葉を遮った。


「レティア・ルーン。」


 彼は初めて彼女の名前を呼んだが、その声は冷え切っていた。


「君に期待しないでくれ。この結婚は形式的なものだ。君に愛情を持つつもりもないし、夫婦としての絆を築く気もない。」


 その言葉にレティアの息が止まりそうになった。


「ですが――」


「君の家が救われるのなら、それで十分だろう。」


 ライオネルは立ち上がり、ベッドに目を向けることもなく部屋の隅へと歩いていった。そして冷たく言い放つ。


「私は別の部屋で休む。これからもそうするつもりだ。」


 彼が扉を閉めて去る音が響き、部屋には静寂が訪れた。



---


 レティアはその場に立ち尽くした。結婚初夜は、一生に一度の特別な夜のはずだった。しかし現実は、冷たい言葉と無関心だけが残されている。


 目の前の豪華な部屋が、どれだけ無機質で空虚に感じられるか。誰にも頼れず、誰も味方にならない孤独。


 レティアは深く息を吸い、涙が零れそうになるのを必死でこらえた。侯爵家の娘として育てられた自分に、弱音を吐く権利はない。


「私は…負けない。」


 小さく呟くその声は震えていたが、彼女の瞳には微かな決意の光が宿っていた。



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