新しい朝が訪れる頃、レティアは窓の外を見つめていた。東の空がわずかに明るくなり始める中で、彼女はこの数年間の出来事を思い返していた。公爵家での冷たい結婚生活、過去の傷、そしてそこから抜け出して掴んだ自由。全てを振り返ると、彼女は改めて自分の歩んできた道を誇らしく感じていた。
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その日の朝、レティアは市場を訪れるため早めに屋敷を出た。まだ人通りが少ない街道を進む馬車の中で、彼女は静かに自分のこれからを考えていた。
「私は、もう誰かの言いなりにはならない。自分で選び、自分の意思で生きる。それが私の新しい人生。」
そう心に誓うと、胸の奥から静かな自信が湧いてきた。
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市場に着いたレティアは、いつものように出店を見回りながら、商人たちと親しげに会話を交わしていた。彼女が訪れると、どの店主も笑顔で彼女を迎えた。その中には、いつものように陶器を並べるセドリックの姿もあった。
「おはようございます、レティアさん。」
彼は穏やかな笑顔で挨拶すると、小さな陶器の器を手渡した。
「昨日焼き上がったばかりのものです。あなたにぜひ使っていただきたくて。」
器を手に取ったレティアは、その美しい仕上がりに思わず見惚れた。
「とても素敵ね。ありがとう、セドリックさん。」
その言葉に、彼は少し恥ずかしそうに笑ったが、その目には純粋な喜びが浮かんでいた。
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市場を見回り終えた後、レティアはふとセドリックと並んで街を歩くことになった。二人の間に特別な話題はなくても、穏やかな沈黙が心地よかった。
「レティアさん、あなたは本当に素晴らしい人だ。」
突然彼が口を開き、そう言った。
「僕には、あなたのように何かを成し遂げる力はないけれど、それでもあなたが頑張っている姿を見ると、僕も前を向いていられる気がするんです。」
その言葉に、レティアは立ち止まり、彼の顔をじっと見つめた。
「セドリックさん、私にとってあなたの言葉はとても力になります。過去の私は、誰かに支えられることの大切さを忘れていました。でも今は…あなたのおかげで、それを少しずつ思い出しているの。」
その言葉に、セドリックは静かに頷いた。そして、お互いの視線が交わる中で、二人は微笑み合った。
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その夜、レティアは自室で手紙を書いていた。彼女が宛てた相手は、自分を支えてくれた父、マーカス侯爵、そして協力してくれた人々だった。
「あなたたちのおかげで、私はここまで来ることができました。」
そう書き記しながら、レティアは感謝の気持ちを一つ一つ言葉にしていった。この手紙を書くことで、過去の全てに区切りをつけ、新しい未来へと進む決意を固めていた。
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翌朝、レティアは屋敷の庭に出て、日の出を見つめていた。空が明るくなり始める中で、彼女の心にも新たな光が差し込んでいた。
「これからは、自分の人生を私の手で作り上げる。それが私の選んだ道。」
レティアはそう心に決めると、深呼吸をしてその場を後にした。
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新しい一日が始まる中で、彼女の胸には確かな決意と希望が宿っていた。公爵家での冷たい結婚生活を経て、彼女は自らの力で運命を切り開いた。そして今、新たな未来へと向かうための準備が整っていた。
「私が選んだ人生は、私自身のもの。誰にも支配されない、私だけの道を歩んでいく。」
その瞳には、明るい未来を見据える強い光が宿っていた。レティアの新しい物語は、ここから始まるのだった。