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第81話 本日2度目の美緒無双と新たな仲間

私がマギ山山頂の祠に転移したとき―――

まさにナナは命の火が消える寸前だった。


私はそれを認識すると同時に全てを覆すような膨大な聖なる魔力を練り上げ、カオスドラゴンに噛まれているナナごと究極の再生魔法、パーフェクトヒールを叩きつけた。


「っ!?ブバア?!!グギャアアアアアアアアアアアア――――――――」


ナナを吐き出し、苦しみ悶えるカオスドラゴン。

瞬時にその体が崩れ浄化されていく。

パーフェクトヒールは超級の聖魔法。

アンデッドはひとたまりもない。


「な、何じゃと?!!ひぎいっ!??ぐわああああああああああああ―――――」


同時に近くにいた術者であろう女性が断末魔の声を上げ、体を崩壊させていく。

どうやら彼女もアンデッドだったようだ。


解放され倒れ伏すナナ。

私は彼女を抱え上げた。


「だ、大丈夫?ナナ!!……しっかりしてっ!!」


彼女の体……すでに右足が消失していた。

私のパーフェクトヒールをレジストしている?


(どういうこと?彼女チートだけど…普通の人間のはず……っ!?契約?!…くっ)


彼女の手の甲に鈍い光が灯る。

契約の証だ。


(契約が邪魔をしている?…違う、拒絶の契約……なぜ?)


ナナは強すぎる。

ゆえに彼女は一つのカウンターが仕込まれていた。


彼女が守ると決めたもの。

それが害されたとき、彼女は自身に枷をかけられる。


その対象の安全が確保できない場合、外部からの魔法を受け付けなくなってしまう。

たとえそれが回復だとしても。


私はその設定を思い出しあたりを見回す。

もし対象となるものがここにあるのなら、彼女を救う事が出来る。

でも、もし……


その時、か細いドラゴンの無く声が響き渡った。


「キュ―――――イ」


傷だらけの彼女?まだ幼生体のエンシャントドラゴン。

岩陰からのそりと近づいてナナに寄り添うように体をこすりつける。


そしてその瞳からまるで虹を凝縮したような美しい涙が零れ落ち……

ナナの口に入っていった。


刹那光り輝くナナ。

呪印が消えうせ回復の光がナナの体を包み込む。


そしてゆっくりと目が開かれた。


「っ!?ナナ?大丈夫?」

「……美味しい♡」

「はい?」


恍惚の表情を浮かべるナナ。

そして彼女は再度気絶した。


すでに彼女の傷はすべて回復していた。


「………はは、は。……流石はチートの侯爵令嬢。……ううん、食への執念が産んだ奇跡よね」


私は彼女と、寄り添うエンシャントドラゴンとともに、気を失いつつも満足げに顔を緩ませるナナを見つめた。


同時に鳴り響く私の頭の中の電子音。


『ピコン……レベルが上がりました……美食の監督者、『チーフシェフ』の称号、獲得しました。……ステータスにそれぞれ500のボーナスポイントが付与されます……聖魔賢者カンストしました………』


あー。

うん。


きっとこの敵、ナナの獲物だったのね。


私……やらかしちゃいました?

現実逃避をし遠くを見る私。


取り敢えず私は彼女ナナと何故か彼女から離れようとしない幼生体のエンシャントドラゴンとともに皇女の部屋へと転移した。



※※※※※



ふわああ―――♡

夢なのかな……


すっごくおいしいもの食べた気がした……


ああ、私……死んだのかな……

でも……あの液体?


震えるくらい美味しかったなあ………


「………ナ?……ナナ?!……もう、大丈夫?しっかりして」

「………ん……あ、あれ?……わたし…」


気付けばやたら豪華な部屋に私は寝かされていた。


(カオスドラゴンに食べられそうになって、全身バッキバキに砕かれたはずだけど……)


痛くない?

ていうか体力も魔力も全快?


(……どういう事?)


「ナナ?はあ、良かった。……目が覚めたのね」


(……ふわー可愛い………って誰?)


私をのぞき込む黒髪で黒目の超絶に可愛い女性。

知らない女の子だ。


私は起き上がり彼女の瞳を見つめた。


「あの……もしかして…私を助けてくれたの?」

「うん。…もう体、大丈夫?」


っ!?


(この子?!…とんでもない……私より確実に強い!?)


思わず背中に嫌な汗が流れ落ちる。


「えっと……」


(どうしよう……状況が分からない)

(それに彼女の後ろにいる女の子……あのオーラ、きっと神だ)

(もしかして私また死んで転生とか?)


「キューイ♡」


突然私にすり寄ってくる幼生体のエンシャントドラゴン。

私の思考が霧散した。


(良かった…この子も助ける事が出来たんだ)


私はそのことで胸が熱くなっていった。



※※※※※



「ねえナナ?……それともエルファス?……もしくは……渚七海さん?」

「っ!?……ど、どうして私の本名?…あなたも?…転生者なの?」


エンシャントドラゴンの頭を撫でていた彼女。

私の問いかけにビクリと肩をはねさせた。


大分混乱しているさまに私は思わず苦笑いを浮かべてしまう。

取り敢えず無事のようで、ほっと息を吐きだした。


「混乱させてごめんなさい。私は地球からの転移者で『ゲームマスター』の称号を持つ守山美緒です。ナナさん、よろしくね」


「っ!?……あなたが伝説の……そっか。…転移者なんだね。……!?も、もしかして……私って何か使命あるのかなっ?!!」


転生しこの世で生を受けたナナ。

彼女はずっと腑に落ちない点があった。


確かに日本で拒食症という笑えない症状で命を落としていた。

そして願った。

お肉を食べたいと。


獲得したとんでもないチートスキル。

そのおかげでナナは最強に到達していた。


でもこの力。

きっと意味のあるものだと彼女はいつも思っていた。


もともと日本で暮らしていた、実はちょっと『腐り気味』だった女性だ。


もちろん彼氏はいたし普通に働いていた。

そもそも拒食症のきっかけは彼の一言だ。

「七海は肉付きが良いね」

今思い出しても腹が立つ。


何はともあれ彼女は結構妄想がはかどる女性だった。

ラノベから携帯小説まで読み漁っていたくらいだ。

素養は十分だ。


そういう展開を少なからず求めていた。


何よりこのまま過ごせば自分を愛していない男と政略結婚をさせられてしまう。

あの男は巨乳しか愛さない。

私の敵だ。


ナナは隙を見て家から飛び出す気満々だった。


それにこの子。

美しくつつましやかな胸部。


私の同志だ!!


目を輝かせ美緒を見つめるナナ。

なぜか心の声が伝わってきた美緒はため息をつく。


「えっと。……もし良ければなんだけどさ。……うちに来る?」

「うん。行くっ!!」


最強の冒険者ナナ。

なし崩し的に美緒達ギルドの一員になった瞬間だった。


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