――コーガス侯爵邸のホール。
「サインと申します」
「コサインです」
「タンジェントとお呼び下さい」
鎧姿の男二人とメイド姿の女一人が、レイミーに自己紹介して頭を下げた。この三人は俺が連れて来た、コーガス侯爵家に新たに仕える新しい従僕達だ。
彼らはこれからの事を考えて、コーガス侯爵家へと雇い入れている。発展させていくうえで、人手は確実に必要になるからだ。それに十二家に喧嘩を売ったってのもある。奴らが何らかの形で脅しを等を入れてくる可能性が考えられるため、そういった事を事前に防ぐ防波堤要員は必要不可欠だ。
当然の話だが、コーガス侯爵家の二人を任せる以上、彼らは超が付くレベルで信頼のおける人物となっている。今の俺がこの世で最も信頼する人物達。
そう……俺の分身だ。
これを超える最強の信頼関係はないだろう。何せ自分だからな。百年戦い抜いた勇者である俺を信じず、いったい何を信じるというのか?
「よろしくお願いしますね」
サインとコサインは、兵士としてレイミーとレイバンの警護を担当する。あと、力仕事全般も。
まあ屋敷には魔法で結界を張ってあるので、レイバンにまで護衛を付ける必要があるかと言われると微妙ではあるが……油断からやらかしてしまっては笑えないので念のためだ。
で、タンジェントはメイド。バーさんの補助をしながらレイミーの世話をし、万一の時は護衛に早変わりするって感じである。
それ以外にも、この場にはいないが買い出し担当のルートなんかもいいたりする。まあ今はまだ四人だが、これからどんどん人手(分身)を増やしていく予定だ。
因みに、一気に増やさないのは予算の都合上である。表向きの、ではあるが。無駄にばら撒けるほどの状況ではないからな。バンバン人員を増やす訳には、まだいかないのだ。
ま、後、この屋敷はそれほど大きくないからそもそも大量に人がいたらおかしいってのもある。
「タンジェントにはバーさんの補助について頂きますので、彼女への教育をよろしくお願いします」
「え、ああ分かったよ」
ふむ……
どうもバーさんの反応が宜しくない。うよりも、何かぼーっとして心ここにあらずと言った感じだ。まあそこそこいい歳だし、引っ越し関連で色々と疲れてしまったのかもしれないな。俺はそう判断し、バーさんの事は適当に流した。
だが、彼女の行動のおかしさは日を増すごとに増えていく。ひょっとしたら何かの病気かもと思いさりげなく魔法で確認するも、健康状態は良好だった。
一体どうしたというのだろうか?
若干彼女の事を気にかけつつも一週間が過ぎ。そして第二回目の、コーガス侯爵家による