「今日の授業はここまででとしましょう」
俺は授業の終了を告げる。
なんの? 魔法の授業だ。そして俺の教えを受けているのはレイバンである。
彼は魔法に興味があった様だからな。そこに気付いた俺は上手く
え? 引き籠りは直ったのかって?
――もちろんそのままである。
だからここはレイバンの部屋だ。魔法の実技なんかは、結界を張って被害を出さない様にして行っている。
「随分上達されましたね。いずれは私以上の魔法使いになられる事でしょう」
「嘘くさいな」
俺の言葉に、レイバンが
「嘘は申しておりませんよ。才能があるのは事実です。もちろん、簡単な事ではありませんが。自分でいうのもなんですが、私は優秀ですから」
レイバンに才能があるというのは別に嘘ではない。
まあ俺以上って部分は嘘ではあるが……
だが努力を続けていけば、今見せている程度――転移魔法を扱えるレベル――の魔法の腕にならきっと到達可能だろう。そしてそれぐらいなら、相当才能がある方だと言っていい。
「ふーん……それより、聖女タケコって人はタケルよりも凄いんだよね?ばあやの体調を治した人だし」
レイバンが聖女タケコについて聞いて来た。体調不良で退職予定だったバーさんは聖女の治療を受けた事で回復し、そのまま仕事を続ける事になったという体である。そのため彼から見れば、俺ですら無理だった問題を解決した凄い人物に映っている訳だ。
「気になりますか?」
「別に……ちょっと聞いただけだよ」
レイバンが他者に興味を持つのは良い事である。外部への関心が大きくなればなる程、引きこもりという殻を破る原動力となるからだ。
「神聖魔法は特別ですから、単純に通常の魔法と比べられるものではありません。ですが……彼女は強力な魔王の呪いを解呪しております。その桁違いの業績を考えると、確実に私以上の使い手と言えるでしょう。おそらくですが、聖女タケコ様は世界に並ぶ者の居ない程の魔法の使い手ではないかと」
世界に並ぶ者が居ないというのは勿論嘘である。俺やエーツーがいるしな。因みにシンラは魔力量はかなりの物だが、魔法自体はそこまで得意じゃなかったりする。
「そんな方がコーガス侯爵領を守護してくれているのですから、本当に有難い事です」
「……」
僕には関係ないという顔をしているが、興味津々なのは筒抜けである。
「僭越ながら、よろしければ私の方から聖女様に魔法の手ほどきをお願いしてみましょうか?」
「!?」
「もちろん、屋敷の引っ越し後になりますが。聖女様にここまで足を運んでいただく訳にもまいりませんので」
驚くレイバンの反応に、俺はしめしめと内心ほくそ笑んだ。最近は以前よりもずっと心を開いてくれてきているので、懐柔できる日も近いはず。
そう、レイバンの夜明けは近い。
たぶん。