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第11話 女神の特典

 どこだろここ?

 俺は気が付くと神殿みたいな所にいた。

 そこでツカツカとヒールを履いたあの女神ザスキアがやってきた。

 スーツを着こなしており相変わらず女神らしくない。


「あらあらどうも!」


「どうもじゃねーよ!俺まさかまた死んだの?木に激突して?」

 最悪だわ!そんな死に方!


「いや、死んでないわよ?気を失ってるだけですね、はい」

 あ、良かった…死んでないのか。


「じゃあ何でこんなとこに?」


「それはまあ、ちょっとこちらのミスで転生特典を忘れておりましてね?ごめんなさいねぇ?」


「転生特典って何?」


「まぁほら…いわゆるファンタジー系だと勇者にはチート能力とか付くでしょ?恋愛系でも王子とかにはほら…実は何かあったりとかそういうやつですね、はい」


「ていうか転生した時俺、豚みたいに太ってたよ?半年で頑張って痩せたけど!どういうことよ!」


「あらあら…まぁそうでした?細かいことは気にせずレッツ転生ライフですよ!」


「国も敗戦国で貧乏だしさあ…!あんたミスしまくりじゃないの?」


「そりゃ元の王子の転生前のことでしょ?東のヘルマ帝国は私の担当ではありませんので、まぁ負けるでしょうね、まっ…恋愛ジャンルなんですからそんなの気にしなくても…」


「気にするわ!!自分の国が貧乏ってどういうことよ?いい暮らしできんじゃないの?」


「そこは出来てるでしょうに?王子なんですから。安全な王宮でぬくぬくゆるゆるラブラブ婚約者と剣術修行でしたかしら?」


「何で知ってんだ!」


「ブッシュバウム国は私の担当ですからして、はい!国の全ての人間は私に見えぬことはありません、はい!誰かの恋愛のイチャコラも全てお見通しです!はい!」

 げえっ!こいつっ!のぞき魔かよっ!


「失礼な!のぞき魔ではなく女神です、はい!」


「俺の考えてることを!?」

 すると女神は腕を組みニヤリとドヤ顔をして


「女神ですから、はい!」

 と言った。ムカつくな。


「そんなことより転生特典です!渡し忘れておりまして!残業確定です、はい!貴方に授けましょう!はいいいい!!」

 と俺の頭をガシリと掴み俺は白く輝いた!


「ちょっと!何の特殊能力だよ!?」


「奇跡の能力です、はい!」


「おおっ!?何か凄そう!内容は?」


「主に治癒ですね。ああ…でも今は擦り傷程度しか治せないかなと。レベル1ですからまだ貴方」


「何それ!!初めから備わってんじゃないの?レベル制なの?てかレベル上がったのどうやって調べんの!?」


「ああはいはい、とりあえずレベル上がったら貴方はここに来ます。まぁ気絶したり寝ている時ですね」


「なるほどな…。で、今のこの親指の怪我とかはどのくらいレベル上がると治せるわけ?つかレベルってどうやって上げんの?」


「まぁ主にその怪我ならレベル5程度でしょうね。そして肝心のレベル上げですが、はい!新月の日に湖に入って1時間くらい女神ザスキアに祈りを捧げなさい。そうですね、美しいとか賢いとか私を褒め称えなさい。そうすれば次の満月にはレベルが上がってます。まぁ大体15日間隔で、1レベル上がりますね!お祈り忘れた日とかは当然上がりませんから、はい!」


「はい?湖に入って祈るだとお?」


「そうですはい、湖の位置は婚約者にでもお聞きなさい!ていうかそろそろ帰らせてほしいわ。もう飲み会始まってるのでっ!私だけ遅刻です、はい!」


「いや知らねーけど!!」


「じゃっ!そういうことです!いいですか!月に向かって私のいい所とか吠えまくるだけですよ!んじゃ、頑張って!」

 と女神はだーっと神殿をかけて行った!

 何あれいいとこって…全然知らねーぞ!?

 ミスするし…治癒の力って…攻撃系じゃないしよぉ…


 と考えてると俺は目を覚ました。

 んん?ここは…


「殿下!!」

 俺の手を握り、泣きそうな顔でクラウディアが目の前にいた。

 うぐっ!!


 どうやら自室のようだな。

 主治医のアルバン先生が


「おや…殿下…大丈夫ですかな?」


「アルバン先生…俺は…」


「木にぶつかって気絶したようですな。まぁ軽傷ですが…少しこぶになっておりますな…まぁクラウディア様は心配しておりましたよ。ふふ。それでは私はこれで」

 とアルバン先生は部屋から出て行く!

 クラウディアと二人きりじゃん!


「ジークヴァルト様…。私突然突き飛ばして申し訳ありません!この首切り落としても!!」


「いやなんで?ていうか…なんで突き飛ばされたんだっけ?」

 確か王族の能力聞こうとして…近寄って…


「あっ!!もしかして体臭やら口臭か!?俺臭かったから??ああ!そうだよな!ごめんよクラウディア!!すまない!!女の子にそんな臭い身体寄せられたら嫌だわな!気を付けるわ!!」

 と俺が言うと彼女はポカンとして…クスクス笑いだした。


「ジークヴァルト様っ!!面白い!!うふふふっやだわ!!体臭って!!それなら私だって…」


「ん?クラウディアからはいい匂いしかしないよ?」


「ま…まぁ…」

 ピタリと笑顔が止まり今度は照れた。可愛い。


「そうだ!解ったよ俺の能力!奇跡の力なんだろ?でもまだレベル1だってさ」

 クラウディアが変なことを聞いた。


「何故教えてもないのに知って?」


「あー…うん…まぁいいや。クラウディアには言うか。他の人には秘密だぞ?ええとまぁ要するにさっき気絶した時、夢で女神ザスキアに会ったの」

 と言うと彼女は驚愕した!!


「めめめ女神様に!?夢で?なっ!そんな!それでは殿下!貴方何十人かに一人の奇跡の力を持っていると言うのですか??」


「いやだからまだ持ってると言ってもかすり傷程度しか治せないらしいし…。あ、どうやって治すのか聞き忘れた!!畜生!飲み会とか行きやがったし!」


「は?」


「いや!あのっ!ええとだから…新月の日にザスキアに湖で1時間くらい祈りを捧げると次の満月にはレベルが一つ上がって、つまり治癒の力が強まるらしいね。そんでその湖はどこにあるかクラウディア知ってる?」


「………ええ…まぁ…。私の先祖も女神ザスキア様からこの髪の力をいただいたとのことでしたので…。湖で祈るというかうちの先祖の場合は湖で髪を洗っていたようですけど…。今は別にやっておりませんわ」


「へえ…そうなの…」


「でも殿下…。あの湖は森の中にあるのですがその…魔物が沢山出ますわ…。私が護衛につけば楽勝ですけど。1時間もお祈りするのですから。その間私がお守りしないといけませんわね…」

 えええっ!クラウディアが護衛に?


「うちの騎士団でも連れてくよ。クラウディアが闘うことなんかないよ」


「いえ、殿下…私は闘えますわ!是非護衛を!」


「いいってば!君は闘わなくても!」


「まぁ!まだ私の力を信じられませんの?私は殿下を突き飛ばしてしまいました!そのお詫びをと申してますの!」


「でも女の子に闘わせるとか!」


「でででですから!私は殿下よりも強いんですの!!」


「くっ!この頑固者め!まだ俺レベル1なんだぞ!?大怪我したら治してやれない!」


「私が簡単に大怪我するわけないでしょう?バカにしてるのですか?」


「してないよ!ああっもう勝手にしろよ!」


「勝手にしますわ!!」

 何でまた喧嘩になったのか解らん…。

 全くこの女!ちょっと強いと思って図に乗ってるけど!

 少しの油断でやられちゃう展開とかあるんだぞ!?

 クラウディアが大怪我したら…レベル1の俺はどうすりゃいいんだよ!

 ああっ俺も強くなって守りたいのに…。悔しいが最弱王子だよ!

 鍛錬に祈りに勉強にまだやることは多い!

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