通知に誘われてメッセージアプリを開いてみれば、送信者には〝猫娘〟と表示されていて、『
(あ。登録者名……)
さすがに恋人になったのにこのままではよろしくないと思った
そうして、もちろん、今最優先すべきはそこじゃない。
***
というのも、
(打った文章を読み返すのも無理でしたかっ!?)
メールを読んですぐは(骨片って何だろう?)と頭を悩ませた羽理だったけれど、それが自分の愛車のことかも知れないと思い至ってからすぐ、コッペンちゃんが恐竜の骨格標本みたいに骨になったところを想像してしまった。
カタカナにすべきコッペンが、誤変換で〝骨片〟になっているのが何ともシュールではないか。
まさかシャワーを浴びながら打ったわけではないと思うけれど、慌てた様子で画面をタップしている
ずっと、小難しい顔をして取っつきにくいと思っていた
それに――。
髪を下ろしていると幼く見えるから、いつもよりガードが甘くなる気がして。
初っ端の出会いが風呂上りだったこともあって、羽理の中では、
そう言えば、今日、
ランチに行った際、彼の数歩後ろを歩きながら感じた違和感に、(
「なぁに、羽理。百面相の練習?」
すかさずすぐ隣、帰り
羽理は「そ、そういうわけではっ」と誤魔化したのだけれど。
いつもならもっと突っ込んでくるはずの仁子が、今日はやけにアッサリと引き下がって、「……じゃ、羽理。申し訳ないけど私、今日は大事な用事があるから先に帰るわね? アンタもさっさと帰りなさいよ!?」とか言うから。
羽理はホッとしつつ、ひらひらと手を振って仁子が帰っていくのを「お疲れさま」と見送った。
さて、自分も荷物をまとめて帰ろうと、羽理が鞄を手にしたと同時。
「ねぇ
財務経理課長の
「……お誘い凄く嬉しいんですけど、今日はこの後予定があるんです。すみません」
「もしかして……デート?」
ほわんと聞かれた羽理はその春風のような雰囲気に流されて、「実は
さすがに上司と二人きりで化粧品を買いに行くだなんて、会社の人にバレるのは良くないだろう。
***
(あれ? 何だろ、今の間……)
人畜無害な上司を
思わず『お友達って、男の人?』と問い掛けそうになって……そもそもデートか否かと探りを入れてしまったこと自体やり過ぎだったし、これ以上突っ込んで聞くのはパワハラやセクハラだと警戒されかねないとグッとこらえた。
折角いつも羽理にべったりくっ付いて離れない
まさか昼だけでなく、夕方にまで羽理からフラれるとは思ってもみなかった。
今までの羽理ならば、長い期間かけて
(何かおかしい……)
ずっと羽理を……というより羽理だけを見てきた岳斗には分かる。
羽理の中で何かが変わり始めているのが。
(これは今までのやり方じゃ、マズイかも知れない)
何せ
そのお陰で他の男たちからの好意にも全く気付かなかったから、――裏工作はともかくとして――