どう考えたって「お疲れ様ぁ~」な、仕事後の
(
仁子のことだから、
それがなかったのだから、きっと二人とも自分のお好み焼きを焼くので一杯一杯だったんだろう。
(あっ、そうだ! ついでだし……
チョロルチョコのお礼にはちょっと高過ぎるかも知れないけれど、一応
先輩の方が後輩より奮発するのは変じゃないだろう。
それに――。
(となると、
あれこれ考えていたら、心がお留守になっていたらしい。
「
目の前でパチン!と
「ふ、フルネームで呼ばないで下さい!」
そうされると、「あらキュウリ!」と
自分がぼんやりしていたのを棚上げしてプンスカしたら、
「だ、だったら」……とかゴニョゴニョ言いながら……「う、羽理……さん?」と何故か照れ臭そうに下の名前で呼び掛けて来る。
「えっ!? な、何でいきなり下の名前になるんですかっ。そんなのされたら私も……たっ、
羽理としては『もぉ、部長ったら冗談が過ぎますよぅ?』と、彼を
「な、何なら……呼び捨てでも構わんぞ?」
とか、どういうことだろう?
「はいっ!?」
「だから……〝さん〟はなくても平気だ。というかむしろない方がいいな、うん。……お、俺もお前のこと、その……う、羽理って呼び捨てるからお前もそれで」
まるで羽理に口を挟ませたくないみたいに、しどろもどろになりつつも口早にまくし立てた
「あ、あの……ちょっと、
羽理がそんな
「あ、あのっ。部長……」
足の長さの差だろうか。
速足で歩く
「た、た、た、た、た、た……」
息苦しいし、何とか止まって欲しくて「
「お前は壊れたレコードか……!」
とうとう我慢しきれなくなったらしい
「だって……た、いよ……ぶちょぉ、が……」
「俺は誰にも
「もぉ! 上司の下の名前を呼び捨てするのがどれだけハードル高いと思ってるんですかっ。意地悪ですか! ドSですかっ!」
「なっ。お、俺は極めて温厚だぞ? なぁ、う、……り。いつものお前ならそんなの楽々越えられるはずだろ。――ほ、ほら、遠慮せず越えて来い!」
(どうしてこうなったの!)
羽理は「うーーー」と
だが、これと言って思いあたる節はなくて、早々に諦めた。
(ホント、部長は何をそんな、ムキになってるんでしょうね!?)
代わりの心の中。
盛大に
***
(
(
のほほんとしているように見えるけれど、あの若さで管理職になるくらいだ。一筋縄でいく男でないのは容易に推察できる。
(まぁ、それを言うと俺もか)
とはいえ、自分は優しくて話しかけやすいと評判の
(いや、俺だって別に部下に対してにこやかに接したくなかったわけじゃねぇぞ? ただ……)
羽理の手を引きながら化粧品売り場までやって来た
「そう言えばぶちょ、じゃなくて……えっと……あ、
立ち止まったことで、やっと呼吸が整ってきたらしい羽理から話しかけられて、慌てて彼女に意識を戻した。
(おい、
などと思いつつ、羽理の口から出た〝那須〟という名にあからさまに眉をしかめた
というのも、人事課にいる〝那須みのり〟は
「私もこうやって話せるようになるまでは、……たっ、たっ、……た、い……よぉ?……のこと、取っつきにくい雲上の部長様だと思っていたんですけど……」
と、やたら名前のところだけしどろもどろで前置きをしてから、羽理がすぐそばの