「おはよう、
「えっ。どうした、どうした?」
まさか朝の挨拶でこんなにビックリされるとは思っていなかった仁子は、小さめのハンドバッグを自身の事務机引き出しに仕舞いながら、羽理の顔を覗き込んだ。
「あ、あのっ。実は……私……」
そうしてみたら、存外深刻そうな顔をして羽理がこちらを見詰めてきて。
仁子はごくりと生唾を飲み込んだ。
そう言えば、いつもならもう少し綺麗にゆるふわにセットされているはずの羽理の髪の毛。
それを束ねたシュシュが昨日と同じものなことに気が付いて、仁子は内心「ん?」と思った。
服こそ着替えてきているようだけれど、何か違和感がある。
羽理は華美なお洒落をする女性ではないけれど、髪飾りは結構沢山持っているみたいで……二日続けて同じヘアアクセサリーで出社してきたことはなかったように思ったからだ。
そう言えば、前にもこんなことがあった。あれは……。
「ねぇ羽理。もしかして……また裸男さんの家に泊まった?」
以前飲み会明けの日の羽理がこんなだったことを思い出した仁子は、本当に何の気なし。思いつくままにそう尋ねたのだけれど。
羽理は再度ビクッと肩を震わせると、「なっ、何で分かったのっ!?」と仁子の手をギュッと掴んできた。
「いや、だって……それ」
言って、握られていない方の手で自分の頭をチョンチョンと指さしてシュシュのことを
***
今、羽理のミルクティーベージュ色の髪の毛を左サイドでゆるっと束ねているのは、グレイのサテン地のシュシュで。とびとびに留め付けられたラインストーンがキラキラと光っている、シンプルだけどエレガントに見える大人可愛いデザインのものだった。
お気に入りだし使いやすいアイテムだから使用
だけど今朝は――。
***
何か重い……と、息苦しさに目覚めた
何故か
(ひっ、近いっ!)
超絶整っているくせに、まぶたを閉じているとどこかあどけなく見える
そうしてあろうことか、大木=
羽理は、大慌てで
思いのほか重量のある
どうやら羽理に寝苦しさを覚えさせたのは、自分を抱きしめていた
心の中でヒャワヒャワと悲鳴を上げながら現状打破に焦る余り、
「んー、……羽、理? ひょっとして……お前、ベッドから落ちたのか?」
律儀に「おはよう」と付け加えつつ、心配そうにベッドサイドから
と同時。ハッとした様子の
「わざわざ離れて横になった俺に『寒いですぅー』とか何とか言いながらくっ付いてきたのはお前の方だぞ!?」
「嘘ッ!」
「嘘じゃねぇわ、この酔っ払い娘め!」
(私ってばワイン、どのくらい飲んだの?)
と、
「ちなみに買って帰った白のフルボトル、半分以上空けたのはお前だからな?」
「ひっ!」
口に出してなんかいなかったはずなのに、何故か
「何を今更驚く必要がある。ホントお前、酒癖悪すぎだろ。しばらくは俺のいないところで酒飲むの禁止な? ところで……コーヒーは飲めそうか? ミルクたっぷりの甘くないの、用意したんだが」
「飲みます……」
何故か自分は悪くないと言いながらもどこかバツが悪そうな表情で、反省しまくりの羽理の前へ九割方ミルクな温かいカフェオレ――というよりコーヒーフレーバー牛乳?――を出してくれた
だって……。
「あ、あの……。
自分はお酒のおかげで平気だったけれど、きっと
同じ病いを
なのに。