(さて……)
そんな感じ――。意を決して
(まだ未読とか。……マジか)
昼休みはとっくに過ぎて、そろそろ午後の就業開始時刻だというのに。
返信はおろか、朝送ったメッセージすら未読のままになっている事実に、心底ガッカリした
だが、意気消沈して画面を閉じようとした矢先、くだんのメッセージがパッと既読になって――。
そのことに、
幸い駐車場には
***
肩に付くか付かないかの長さに切りそろえられたオリーブグレージュ色の前下がりボブは、左側だけ耳にかけられていて、耳たぶを飾るシンプルなチェーンピアスがキラキラと光を跳ね返している。
白の
キャメル色のピンヒールを卒なく履きこなして背筋をピンと伸ばしているからか、実際よりも幾分背が高そうに見えて。
(目鼻立ちのキリッとした、綺麗なお姉様だぁー)
凛とした空気をまとうその人は、三十代半ばくらいかな?と目星をつけた羽理だ。
仕事がバリバリ出来そうな彼女の雰囲気に、自然と憧れの吐息がこぼれた。
***
「だから……分かんない人ねぇ。
美人さんだなぁ~と思いはしたものの、自分とは接点もなさそうだし……とそのまま通り過ぎようとした
受付嬢へ向けて発せられたセリフのなかに、不意に
(え? ……部長の名前を聞いただけで不整脈?)
今まではそんなことなかったのに、何だか胸がざわついて落ち着かない。
「
どうやら無意識に立ち止まっていたらしく、横を歩いていた
羽理は慌てて「あ、すみませんっ」と岳斗に追いついたのだけれど。
「バカッ。お前何やってんだよ!」
乗り込んだエレベーターの扉が閉まる直前、隙間から、
羽理は扉が閉まり切るまでの数秒間、そんな二人から目が離せなかった。
「へぇ~。あの気の強そうな綺麗な人、
立ち尽くしたまま、身動きが取れなくなっていた羽理の横からスッと手が伸びてきて、操作パネルの【4】をポンッと押しながら、岳斗がどこか感心したようにポツンとつぶやいた。