独特な浮遊感とともに箱が上昇を開始するや否や、
「何かさ、やけに親密な感じがしたけど……もしかして
本当に何の気なしといった調子で付け加えられた
(彼女って……。でもっ、
そればかりか、そんな不満までふつふつと込み上げてきて、羽理は自分の感情なのにまるで他人のものみたいにわけが分からなくて困惑する。
そうしてそんな自分の様子を、岳斗がどこか観察するような目で見詰めていることに羽理は全く気付けなかった。
***
結局
(
羽理は何だかそのことが気になって仕方がなくて、午後からの仕事では有り得ないミスを連発した。
データ入力をすれば、気を付けているつもりなのに何度も何度も入力欄がズレてしまう。
ならば気持ちを切り替えようと振替伝票に手を付ければ、借方と貸方の金額が釣り合わないなどと言う、目を疑うような間違いを犯してしまう。
そればかりか、自分の机の上だけならまだしも隣に座る
そうこうしている時だった。
机上に出したままにしていたスマートフォンに、裸男から『すまん、今日の呼び出しは中止にさせてくれ』とメッセージが入ったのは。
いつもなら机の中。それも鞄の中へ忍ばせている携帯を目の付くところに置いていたこと自体いつもの羽理らしくない。
公私混同は羽理が最も嫌うことだと言うのに。
自分の行動がおかし過ぎて、羽理はそれもイヤだったのだけれど。
ずっと、
羽理はモヤモヤした気持ちを抱えつつも、それに一言『分かりました』と打ち返した。
だが素っ気ない印象を与えるはずだった六文字は、
正直、そんな可愛らしいスタンプを送るような気分ではなかったので、すぐさま送信取り消しをしようと思ったのだけれど、送るなり既読になってしまってすごすごと諦めた羽理だ。
(……もっと素っ気なく「りょ」とか送ってやればよかった!)
約束を破るなんて最低ですよ!?と言う気持ちを返信に込めたかったのに。
結局、こんな
小さく吐息を落としながらそこまで考えて、羽理はハッとする。
唯一付き合ったことがある元カレにですら、そんな面倒くさいこと思ったりしなかったのに。
(私、
そう気が付いた途端、更に気持ちが沈んで……。こんなことではいけないと思うのに、モヤモヤが消せない自分に物凄く落ち込んだ。
***
溜め息を落としては仕事が一向に
「
少し離れた課長席に座る
別に熱があるとかそういうわけではなかったのだけれど、岳斗にも気付かれたように今の羽理は全く役に立たない。