羽理は少し考えて、
何だかよく分からない感情にかき乱される自分の不甲斐なさが嫌で嫌でたまらなくて……ブルーな気持ちのままノソノソと帰り
仁子からの優しい声掛けに、羽理は何故だか分からないけれど、鼻の奥がツンとしてジワリと涙がこみ上げてきてしまう。
もちろん、何かがあったのは課長と……ではない――。
真っ先にそう返すべきところを羽理が気付けずにスルーしてしまったのは、平常心ではなかったからだろう。
そればかりか――。
「約束……したのに……あっさり破られ、たの……。向こうから……言って、きた、くせに……」
小さな声で途切れ途切れに言ったら、仁子が「えっ? どういうこと?
「あ……」
さすがにそうじゃない、と続けようとした羽理だったのだけれど、ちょうどそこで岳斗が「
私語で上司からの呼び出しを無視させるわけにはいかなかったので、羽理は淡く微笑むと、仁子を岳斗の方へとうながした。
(仁子のことだもん。どうしても気になったらきっと、課長にだってランチのこと、確認しちゃうよね?)
仁子にとって、羽理との会話の当事者が
そう思いながら羽理が見詰める視線の先。
仁子が岳斗に
羽理は二人の背中を小さく
***
帰宅後何もやる気になれなくてふて寝していた
ぼんやりした頭のまま、ふと枕そばに置いていたスマートフォンを見ると、仁子からのメッセージがいくつか届いていた。
『調子はどんな? 何かいるものがあったらメッセしてね。届けるから』
と言う文言の後に、小首を傾げて心配そうにする可愛いタヌキイラストのスタンプがくっ付いていて。
それに続くようにして数分後のメッセージで『そういえば課長とのランチ、ちゃんと行けてたみたいだね。じゃあ、羽理との約束を破ったのは結局誰だったの? 何の約束を破られたの?』と打ち込まれていた。
それとは別に
留守番電話サービスに残された録音を聞いてみると、体調うかがいだったらしい。
羽理は小さく吐息を落とすと、
「
未だに何の連絡もないと言うことは、
「お風呂……入ろ……」
モヤモヤし過ぎて小説を書く気にもなれないとか。
羽理は気持ちを切り替えるべくサッとシャワーを浴びて早めに就寝してしまおうと考えた。
(そういえば
今飛ばされたら、パジャマとして持ち込んだものぐらいしか着るものがない。
そう気が付いたのだけれど、いつもよりずいぶん早い時間の入浴だし、一連の不思議現象に対する
そういえば――。