そのために
「電話繋がんねぇし、怒ってんのかな?と思って内心すげぇ焦った。けど――」
本当はすぐにでも会社へ乗り込んで「
だが、早退した身でノコノコ社屋へ戻って、羽理を部長室に呼び出せるほど、
「あの。ごめんなさい。……実は私も今日は早退してて」
多分社外で待ち伏せされていても会うことは叶わなかったはずだ。
申し訳なさそうに自分を見上げてくる羽理を見て、
「体調悪いのかっ!?」
思わずポタポタと髪の毛から水滴を
羽理の身体が冷たく冷えているのが分かって自分のバカさ加減が心底嫌になった。
「あ、あの……別にそう言うわけでは」
羽理は体調不良こそ否定したけれど、このままでは羽理に風邪をひかせてしまう。
「とりあえず着替え持ってくるから身体拭いて待ってろ。話はお前の身支度が整ってからゆっくりしよう。――な?」
***
「
「いま脱衣所で身体拭いてる」
「何で女性ものの服があるんだろう?って思ってたら……あの子のだったかぁー」
そんな姉の足元。
キュウリの顔を見詰め返しながら、(う、ウリちゃん! 何でそっちサイドなんでちゅか!? パパの味方して下ちゃい!)と、
恐らく
実際、羽理に入れ込んでからというもの、
実は今から
(きっとウリちゃんにはパパのしようとしてる不義理が分かってるんでちゅね?)
アイコンタクト。
キュウリに心の中で「ごめんね」と謝ると、
***
「ねぇ、たいちゃん。そういえばさ、
弟に脱衣所を追い出されてからずっと、
(羽理ちゃんの登場の仕方、おかしかったよね?)
どう考えても扉を開けようとしたら向こうから開いて――。
なのに脱衣所にいたはずの彼女は、自分同様まるで風呂上がりみたいにびしょ濡れの裸だったのだ。
「……羽理ちゃん、何で脱衣所にいたのにあんなにびしょ濡れだったの? あの子、確かに小柄だけど
だが、足元の床は何事もなかったみたいにカラリと乾いていた。